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ロジャーが病気にならなかった世界線のストーリー

この物語は、「もしも」の世界を描いた作品です。

尾田栄一郎先生の傑作「ONE PIECE」において、海賊王ゴール・D・ロジャーは不治の病に罹り、自ら処刑台に向かうことを選びました。彼の最期の言葉「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをそこに置いてきた」は、グランドラインを目指す無数の海賊たちの背中を押し、「大海賊時代」の幕を開けました。

しかし、もしロジャーがあの病に罹らなかったとしたら?もし彼が自らの意志で生き続け、世界の真実を自ら広める道を選んだとしたら?そして何より、彼が息子のエースを自ら育て上げることができたとしたら?

これは、そんな「別の可能性」を描いた物語です。キャラクターや世界観、基本設定は原作に準拠していますが、ロジャーの死という一点が変わることで、世界の歴史がどう変わっていくかを想像してみました。

もう一つの可能性、もう一つの「D」の物語をお楽しみください。

第一章:続く冒険

偉大なる航路の最果て、伝説の島ラフテルに到達したゴール・D・ロジャーの顔には、満足感と共に新たな決意が浮かんでいた。彼は「ひとつなぎの大秘宝ワンピース」を手に入れ、世界の真実を知った。しかし、彼の目に映る世界はまだ完成していなかった。

「これで終わりじゃねぇ」ロジャーは宝の前に立ち、仲間たちに振り向いた。「おれたちの冒険は、まだ始まったばかりだ」

レイリーは眉をひそめた。「船長、これ以上何があるんだ?我々はすでに世界の果てまで来た」

ロジャーは大きく笑った。「相棒、この世界には800年前から隠されてきた真実がある。世界政府が恐れ、封印してきた歴史だ。『D』の一族の使命は、単にこの島に辿り着くことじゃない。真実を世界に広め、歪められた歴史を正すことだ」

彼はポケットから取り出した赤い石、ポーネグリフの欠片を掲げた。「これはまだ解読されていない。世界にはまだ多くの謎が残されている」

「ということは...」バギーが呟いた。

「ああ、我々はこれからも航海を続ける」ロジャーは力強く宣言した。「オハラの学者たちと接触し、古代兵器についてもっと調べる必要がある。そして、『D』の一族の真の歴史を明らかにするんだ」

シャンクスは静かに前に出た。「船長、世界政府が黙っていないことは分かっていますよね?」

「もちろんだ」ロジャーの笑顔は途切れなかった。「奴らがおれたちを追いかけてくるのは望むところだ。世界を変える時が来たんだ」

翌日、オロ・ジャクソン号はラフテルを後にした。海軍の追跡をかわしながら、彼らは次なる目的地、知識の宝庫オハラへと向かった。



第二章:知識の探求

オハラの図書館の奥深くで、ロジャー海賊団は学者たちと密かに会合を持った。クローバー教授は老齢ながらも鋭い目でロジャーを見つめていた。

「あなたがラフテルに行ったのは本当なのですか?」教授の声は震えていた。

「ああ、そして我々は『空白の100年』の真実を知った」ロジャーは静かに答えた。

この言葉に、集まった学者たちの間にざわめきが広がった。数十年にわたる研究、政府の弾圧をくぐり抜けてきた彼らにとって、ロジャーの言葉は衝撃的だった。

「では...古代王国は?」ロビンの母親であるオルビアが前に出て尋ねた。

ロジャーは深く息を吸い、学者たちに真実を語り始めた。世界政府の前身である二十の王国の連合体が、高度な文明を持つ古代王国を滅ぼしたこと。古代兵器プルトン、ポセイドン、ウラヌスの存在。そして「D」の一族が古代王国の生き残りであることを。

「世界政府は何世紀にもわたって真実を隠してきた」ロジャーは厳しい表情で言った。「彼らは歴史を書き換え、異論を唱える者を抹殺してきた。しかし、その連鎖を断ち切る時が来たんだ」

クローバー教授は重々しく頷いた。「私たちは何十年もこの研究に命を懸けてきました。しかし、世界政府は私たちの研究を『危険』と見なしています。あなたが考えていることは...革命ですよ」

「革命か」ロジャーは言葉を反芻した。「そうかもしれない。しかし、これは真実のための戦いだ」

彼らの会話は深夜まで続いた。オハラの学者たちはロジャーに彼らの研究成果を渡し、彼もまた自分が見たものについて詳細に語った。この日の交流が、後の世界を変える大きな転機となることを、その場にいた誰もが感じていた。

しかし、彼らの会合は密かに監視されていた。CP9のエージェントがこの情報を五老星に報告すると、世界政府は即座に動き出した。



第三章:世界政府の反応

マリージョアの神聖な地、五老星は緊急会議を開いていた。

「ゴール・D・ロジャーがラフテルに到達し、オハラの学者と接触した」一人の五老星が厳しい表情で言った。「彼は危険すぎる。今すぐ排除しなければならない」

「単なる海賊ではなく、『D』の意志を継ぐ者だ」別の五老星が付け加えた。「歴史は繰り返すことはない。800年前の悪夢は二度と許さない」

彼らは卓上の電伝虫を通して、センゴクを呼び出した。

「ロジャー海賊団の殲滅に全力を尽くせ」命令は簡潔だった。「彼らの知識が広まる前に」

センゴクは厳しい表情で応じた。「了解しました。最高戦力を投入します」

会議室を出た五老星は、静かに立つイム様の前に跪いた。

「ロジャーの件は処理します。彼が世界に混乱をもたらすことはありません」

イム様は無言のまま、古い写真を見つめていた。そこには若き日のロジャーと、彼の隣に立つポートガス・D・ルージュの姿があった。

数日後、史上最大規模の掃討作戦が始まった。センゴク、ガープ、そして若きクザンとサカズキを含む海軍の精鋭部隊がオロ・ジャクソン号の追跡に乗り出した。しかし、ロジャーとその仲間たちは既にオハラを離れ、次なる目的地へと向かっていた。

「くそっ、また逃げられたか」サカズキは怒りを露わにした。

ガープは黙って海を見つめていた。かつてのライバルであるロジャーが何を企んでいるのか、彼にはおぼろげながらわかっていた。そして、それが世界を根底から揺るがすことになるとも。



第四章:革命の種

東の海、風車の村からそう遠くない海上で、ロジャーの船は別の船と密かに会合していた。革命軍の指導者、モンキー・D・ドラゴンがデッキに立っていた。

「久しぶりだな、ドラゴン」ロジャーは昔からの知り合いに挨拶した。

「ロジャー」ドラゴンは無表情のまま応えた。「ラフテルで何を見た?」

ロジャーの表情が真剣になった。「おまえの直感は正しかった。世界政府は800年前から真実を隠してきた。『D』の一族は...」

彼らの会話は数時間続いた。ロジャーはラフテルで見たこと、オハラの学者から学んだことをすべてドラゴンに話した。そして、彼が考える未来の計画も。

「世界を変えるには、人々に真実を知らせる必要がある」ロジャーは言った。「しかし、それだけではない。古代兵器を見つけ、世界政府の力に対抗する必要がある」

ドラゴンは黙って聞いていた。「私はずっと世界政府の腐敗と戦ってきた。しかし、君の話す『空白の100年』の真実は、私の想像を超えている」

「共に戦おう」ロジャーは手を差し伸べた。「おれたちは同じ『D』の血を引く者同士だ。世界を変える時が来たんだ」

ドラゴンは一瞬躊躇したが、やがて強く握手を交わした。「私の革命軍も動き出す。世界各地で蜂起を起こし、世界政府の注意を分散させよう」

「それだけじゃない」ロジャーは言った。「白ひげ、金獅子のシキ、そしてビッグ・マムにも接触する。彼らの力も必要だ」

ドラゴンの目が少し広がった。「四皇を巻き込むつもりか?」

「ああ」ロジャーはニヤリと笑った。「おれが海賊王になったのは、単に最果てに辿り着いたからじゃない。この海を変えるためだ」

彼らは作戦の詳細を練り、各々の役割を決めた。ロジャーは古代兵器の探索と四皇との交渉を、ドラゴンは世界各地での革命の火付け役を担うことになった。

「もう一つ」会合の終わりに、ロジャーは真剣な表情でドラゴンに言った。「おれには子供ができる。ポートガス・D・ルージュとの間にな」

ドラゴンは驚いた様子で見つめた。

「世界政府は必ずおれの血筋を狙ってくる。もしおれに何かあったら...」

「心配するな」ドラゴンは静かに答えた。「必ず守る。そして、私にも息子がいる。ルフィという名前だ。いつか彼らが、我々の意志を継ぐことになるだろう」

二人は固く握手を交わし、それぞれの船に戻った。海の上で交わされた約束は、やがて世界を揺るがす大きなうねりとなっていくのだった。



第五章:四皇との会合

新世界の海域、モブディック号の上で、白ひげことエドワード・ニューゲートはロジャーを迎えていた。

「グララララ!まさか会いに来るとはな、ロジャー」白ひげの笑い声が響いた。

「久しぶりだな、白ひげ」ロジャーは親しげに挨拶した。「お前の力が必要なんだ」

白ひげの表情が変わった。「何の話だ?」

ロジャーは真剣な表情で、彼がラフテルで見たこと、世界政府の真の姿、そして「D」の一族の使命について語った。白ひげは黙って聞き、時折深いため息をついた。

「お前は世界を敵に回そうというのか」白ひげは最後にそう言った。

「世界を変えようというんだ」ロジャーは反論した。「このままでは、世界政府の圧政は続く。魚人島の差別も、天竜人の横暴も、すべては『空白の100年』に根ざしている」

白ひげは長い沈黙の後、ゆっくりと立ち上がった。「わしの家族を危険に晒すつもりはない。しかし...」彼はロジャーの目をじっと見つめた。「お前の言う世界の真実が本当なら、黙ってはいられんな」

「つまり?」

「わしの縄張りは守る。そして、必要なら...世界政府と戦う」白ひげは槍を持ち上げた。「だが覚えておけ。これはお前のためじゃない。わしの家族と、真の正義のためだ」

次にロジャーはビッグ・マムことシャーロット・リンリンを訪ねた。交渉は困難を極めたが、彼女もまた世界政府の権力に不満を持っていた。

「アラアラ、ロジャー。あんたの言う通りなら、私の国ホールケーキアイランドにも影響が及ぶわね」彼女は巨大なケーキを食べながら言った。

「世界が変われば、お前の夢も叶えやすくなるはずだ」ロジャーは巧みに交渉した。

バラバラの大海賊シキとの交渉は難航したが、彼の世界政府への恨みが味方につける決め手となった。

「フフフ...ロジャー、お前と再び手を組むとはな」シキは浮遊する島の上から言った。「だが忘れるな。これが終わったら、お前とはケリをつける」

こうして、四皇たちはそれぞれの思惑を持ちながらも、ロジャーの大計画に関わることになった。彼らは表向きは敵対関係を維持しながらも、密かに情報を共有し、世界政府の動きを牽制していくことに合意した。

ロジャーの計画はゆっくりと形になりつつあった。しかし、彼はまだ最も重要な任務を抱えていた—自分の子供の誕生と、その安全の確保である。



第六章:新たな命

バテリラ島の小さな家で、ポートガス・D・ルージュは大きくなった腹を撫でていた。外では海軍の捜索が続いていたが、この島はまだ安全だった。

ドアが静かに開き、ロジャーが入ってきた。「無事だったか、ルージュ」

「ええ」彼女は微笑んだ。「あなたの子供は元気よ。まるで海の中で泳いでいるみたい」

ロジャーは彼女の腹に手を当て、そこに宿る命の鼓動を感じた。「すまない、こんな時に一緒にいてやれなくて」

「大丈夫よ」ルージュは彼の頬に触れた。「私たちは強い。あなたは自分がすべきことをしているのよ」

ロジャーは深く息を吸った。「世界政府はおれを追っている。そして、おれの血を引く者もだ」

「知ってるわ」ルージュの目は強い決意を宿していた。「でも恐れないわ。この子はあなたと私の子。海賊王と海賊の妻の子よ」

「エース」ロジャーは突然言った。「男の子なら、その名を付けたい。強く、自由に生きる男になるように」

ルージュは微笑んだ。「素敵な名前ね。女の子だったら?」

「アン」ロジャーは即答した。「自由を意味する名前だ」

彼らは夜通し語り合った。明日はロジャーが再び海に出る日。世界政府との対決が近づいていた。

「必ず戻ってくる」別れ際、ロジャーは約束した。「そして、三人で自由に生きよう」

翌日、ロジャーは島を離れた。彼の決意は固かった—世界を変え、生まれてくる子供が自由に生きられる世界を作るために。

数ヶ月後、ルージュは息子を産んだ。海軍の追跡から逃れるため、彼女は驚異的な意志の力で出産を20ヶ月も遅らせていた。赤ん坊は元気に泣き声を上げ、その肺いっぱいに自由の空気を吸い込んだ。

「エース...ポートガス・D・エース」ルージュは弱々しい声で言った。出産の労苦で彼女の体は限界に達していた。

息子を抱きしめた彼女は、最後の力を振り絞って微笑んだ。「あなたのお父さんは...海賊王...自由な男よ...」

そして彼女は息を引き取った。その時、部屋のドアが開き、ロジャーが駆け込んできた。彼は妻の亡骸と、泣き続ける赤ん坊を目にして膝から崩れ落ちた。

「ルージュ...」彼の声は震えていた。わずかな時間差で、彼は妻の最期に間に合わなかったのだ。

ロジャーは静かに息子を抱き上げた。小さな命は力強く、父親の腕の中でもなお元気に泣き続けていた。

「エース...」ロジャーは涙を流しながら言った。「お前には自由に生きてほしい。おれが必ず守る」

その日から、海賊王の船には小さな乗組員が加わった。エースの存在は秘密にされたが、ロジャー海賊団の仲間たちは皆、この子を自分たちの宝として大切に育てることを誓った。



第七章:世界の動乱

ロジャーとドラゴンの計画は、徐々に世界に変化をもたらし始めていた。各地で革命の火が燃え上がり、世界政府の支配に疑問を投げかける声が大きくなっていた。

アラバスタ王国では、ネフェルタリ・コブラ王が世界政府からの独立を宣言。ドレスローザではリク王家が再び権力を握り、世界政府との同盟を見直した。水の都ウォーターセブンでは、造船業者たちがCP9の監視を拒否する事件が起きていた。

「事態は我々の予想を超えて進んでいる」五老星の一人が懸念を示した。「ロジャーの影響力は想像以上だ」

「あの男は単なる海賊ではない」別の五老星が言った。「彼は歴史の中の『D』そのものだ」

彼らは最終手段に出ることを決めた—バスターコール。オハラへの攻撃命令が下された。

オハラでは学者たちが必死に研究資料を避難させていた。彼らはロジャーからの警告を受けていたのだ。

「すべての本を船に!」クローバー教授は叫んだ。「歴史の真実を守るんだ!」

海軍の艦隊が島に迫る中、オルビアは小さな娘ロビンに本を持たせた。「行きなさい、ロビン。生きて。そして、学びなさい」

ロビンが避難船に乗り込む瞬間、空からオロ・ジャクソン号が現れた。

「全員乗れ!」レイリーが叫んだ。「ここはもう危険だ!」

バスターコールの炎がオハラを飲み込む中、ロジャー海賊団は多くの学者たちと貴重な書物を救出することに成功した。しかし、クローバー教授を含む何人かの学者たちは、最後まで島に残ることを選んだ。

「真実は必ず明らかになる」教授の最後の言葉は、炎に包まれながらも力強かった。

オハラの悲劇は世界中に衝撃を与えた。世界政府は「危険な研究」を理由に攻撃を正当化しようとしたが、ロジャーはこれを機に真実を広める行動に出た。

彼はすべての主要な新聞社に、オハラで何が起きたのか、そして「空白の100年」の真実について語った。多くのジャーナリストはこれを報じることを恐れたが、勇気ある者たちは記事を書いた。

世界は徐々に目覚め始めていた。



第八章:エースの成長

オロ・ジャクソン号の船上で、5歳になったエースは甲板を駆け回っていた。彼の周りには常にレイリーかスコッパーが付き添い、時には若いシャンクスとバギーが遊び相手になった。

「もっと速く走れるぞ!」エースは笑いながらシャンクスに挑戦した。

「この小僧、毎日強くなるな」シャンクスは汗を拭いながらバギーに言った。

「当たり前だ、船長の息子だぞ」バギーは誇らしげに答えた。

エースは父の存在を誇りに思っていた。ロジャーは多忙な中でも、息子との時間を大切にした。彼は息子に航海術を教え、星の読み方、天候の予測法、そして時には剣術の基本も教えた。

「お父さん、僕も海賊王になれる?」ある晩、エースはロジャーに尋ねた。

ロジャーは息子の頭をなでた。「お前は何にでもなれる。海賊王でも、革命家でも、はたまた漁師でもいい。大切なのは、自分の心に従って生きることだ」

「でも世界政府は僕たちを悪者だって言ってるよ」エースは不安そうに言った。

「悪者か英雄か、それは見る側の問題だ」ロジャーは真剣な表情で答えた。「おれたちが目指しているのは、誰もが自由に生きられる世界だ。お前にもそんな世界で生きてほしい」

エースは父の言葉を胸に刻んだ。彼は徐々に「D」の一族としての自分の役割を理解し始めていた。

時にはドラゴンとその幼い息子ルフィも彼らの船を訪れた。二人の少年は初めは警戒し合ったが、すぐに打ち解けて共に遊ぶようになった。

「あいつ、いい子だな」エースがルフィについて父に語ると、ロジャーは微笑んだ。

「ああ、あの子もまた『D』の意志を継ぐ者だ。いつかお前たちが世界を変えるかもしれないな」

エースの成長は、ロジャーに新たな決意をもたらした。彼は息子のために、より安全な世界を作らねばならなかった。そして時は迫っていた—世界政府との最終決戦の時が。



第九章:力の集結

マリージョアのはるか下、世界各地から集まった船が集結していた。ロジャー海賊団、白ひげ海賊団、そしてドラゴン率いる革命軍。さらにビッグ・マムと金獅子のシキも、それぞれの思惑を持ちながら参加していた。

「作戦の確認をする」ロジャーは集まった指導者たちに言った。「我々の目的は天竜人と五老星の支配体制を終わらせること。そして、『空白の100年』の真実を世界に知らせることだ」

「部下たちはすでに配置についています」ドラゴンは静かに報告した。「レヴェリーに集まっている各国の王たちにも、我々の意図を伝えました」

「わしの部隊は海軍本部の足止めを担当する」白ひげが付け加えた。

シキは不敵に笑った。「おれの空飛ぶ島が上空から支援する」

ビッグ・マムは巨大な剣を持ち上げた。「赤の港は私が担当するわ」

その時、レイリーが急いで入ってきた。「船長、海軍本部が総力を挙げて向かってきている。センゴク、ガープ、そして三大将全員だ」

「予想通りだ」ロジャーは微笑んだ。「彼らも我々の動きを察知していた」

白ひげは立ち上がった。「では、始めるか」

各艦隊はそれぞれの役割を持って動き出した。ロジャーとドラゴンは少数精鋭の部隊とともに、秘密の通路からマリージョアへと向かった。

海では激しい戦闘が始まっていた。白ひげVSセンゴク、シャンクスVSボルサリーノ、レイリーVSサカズキ。海を揺るがす衝撃波が広がり、天候さえも変わり始めた。

マリージョアでは、ロジャーとドラゴンが五老星との対決に臨んでいた。

「よくぞここまで来た、ゴール・D・ロジャー」五老星の一人が言った。「だが、ここで終わりだ」

五老星は予想を超える強さだった。彼らは古代の秘密の武器を操り、ロジャーとドラゴンを苦戦させた。

「奴らは単なる政治家ではない」ドラゴンは息を切らしながら言った。「『空白の100年』から生き続けてきた者たちだ」

戦いは長時間に及んだ。マリージョアの城は崩れ始め、世界中がこの戦いに注目していた。

そして決定的な瞬間が訪れた。ロジャーは最後の力を振り絞り、古代兵器の一つ「ウラヌス」の鍵を手に入れていたのだ。彼はそれを発動させ、マリージョアの地盤そのものを揺るがした。

「これで終わりだ」ロジャーは倒れた五老星に告げた。「800年続いた虚偽の歴史は、今日で終わる」

その時、古の部屋からイム様が姿を現した。真の世界政府の支配者との最後の戦いが始まった。



第十章:新しい夜明け

マリージョアでの激戦から3日後、世界は大きく変わり始めていた。五老星は倒され、イム様の存在は世界に知られることになった。天竜人の特権は剥奪され、各国は新たな世界秩序の構築に向けて動き出していた。

レヴェリーでは、アラバスタのコブラ王を中心に、新たな世界会議が開催された。そこでは魚人島やワノ国など、これまで差別や孤立を強いられてきた国々も対等な立場で参加していた。

「我々は新たな時代を迎えようとしている」コブラ王は宣言した。「過去の過ちを認め、真の平和と自由の世界を作るのだ」

ロジャーはこの会議に参加せず、遠くから見守っていた。彼の役割は終わりつつあった。

「これからどうする気だ?」レイリーが尋ねた。

「まだやることがある」ロジャーは微笑んだ。「エースを育て、彼に自由な世界を見せたい」

そして彼はそうした。次の10年間、ロジャーは息子とともに世界中を旅した。彼らはアラバスタの砂漠を横断し、空島を訪れ、シャボンディ諸島で人魚と踊り、ワノ国で武士の技を学んだ。

エースは父とともに成長し、強く優しい青年になった。15歳の誕生日に、彼は自分の船を持ち、自分の海賊団を結成することを宣言した。

「お前は自分の道を行くつもりか」ロジャーは少し寂しそうに尋ねた。

「ああ」エースは自信に満ちた声で答えた。「お父さんの教えてくれたことを忘れないよ。自分の心に従って、自由に生きる」

「誇らしいぞ、息子よ」ロジャーは彼を抱きしめた。

エースが旅立った後、ロジャーは少し体調を崩し始めた。年齢のせいか、あるいは長年の激しい戦いの代償か、彼の体は徐々に弱っていった。

「最後にもう一度行きたい場所がある」ある日、彼はレイリーに言った。

オロ・ジャクソン号は最後の航海に出た。目的地はもちろん、ラフテル。全てが始まった場所だった。



終章:伝説の終わり、そして始まり

ラフテルの神秘的な海岸に、オロ・ジャクソン号が静かに停泊していた。船上では、ロジャーが仲間たちに囲まれていた。彼の体は弱っていたが、目はかつてのように輝いていた。

「みんな、長い間ありがとう」ロジャーは微笑んだ。「おれたちは素晴らしい航海をした」

レイリーの目に涙が浮かんでいた。「まだ終わりじゃないぞ、船長」

「ああ、終わりじゃない」ロジャーは穏やかに同意した。「しかし、おれの旅はここまでだ」

彼は皆に別れを告げ、一人島の奥へと歩いていった。そこには「D」の一族が残した最後の秘密、歴史の本当の結末があった。

ロジャーは大きな石碑の前に座り、海を見つめた。彼の人生は波瀾万丈だった。海賊として冒険し、王として戦い、そして父として生きた。彼は後悔はなかった。

遠くの海では、若きエースの船が航海を続けていた。そして東の海では、麦わら帽子をかぶった少年ルフィが、いつか海に出る日を夢見ていた。「D」の意志は、次の世代へと確実に受け継がれていたのだ。

ロジャーはゆっくりと目を閉じた。彼の最後の言葉は、海に向かって静かに囁かれた。

「おれの財宝か?それはもう皆が手にしている。この世界の自由と真実だ。そして、次はお前たちの番だ...」

ゴール・D・ロジャーの死は静かだった。処刑台の上ではなく、彼が最も愛した海の側で、彼は微笑みながら永遠の眠りについた。しかし、彼の残した物語と「D」の意志は、これからも世界中の人々の心の中で生き続けることだろう。

その後、世界は大きく変わった。国々の間の壁は少しずつ取り払われ、人々は古い歴史を学び、新しい未来を描き始めた。海賊たちも単なる略奪者ではなく、自由を求める冒険者として見られるようになった。

エースは父の意志を継ぎ、世界中を旅しながら人々を助け、ルフィもまた自分だけの冒険を始めた。二人は時に出会い、時に別れながらも、同じ「D」の意志を胸に秘め、それぞれの道を歩んでいった。

そしてある日、二人が再び出会った時、エースはルフィに言った。

「父さんはいつも言っていたよ。『真の宝物は、自分の心に従って生きること』だって。おれたちはそれを実現している」

ルフィは大きく笑った。「ああ!それこそが...ひとつなぎの大秘宝だ!」

不治の病に罹ることなく、自らの意志で生き抜いたゴール・D・ロジャーの物語は、こうして次の世代へと受け継がれていった。それは処刑台での劇的な死ではなく、静かな海の上での平穏な別れだったが、彼の残した「D」の意志と自由への渇望は、より大きく、より強く、世界中の人々の心に刻まれたのだった。

~終~

オリジナルの「ONE PIECE」において、ロジャーの処刑は物語の原動力となる重要な出来事でした。彼の劇的な死は、ルフィをはじめとする次世代の海賊たちに強い影響を与え、大海賊時代という物語の舞台を作り上げました。

しかしこの「もしも」の物語では、ロジャーが生き続けることで、世界の変革がより直接的に、そして早い段階で起こることになりました。エースが父親の愛を知り、ルフィとは違った形で成長する姿。ドラゴンとロジャーが協力し、世界政府と対峙する姿。これらは原作では見ることのできなかった可能性の一つです。

とはいえ、この物語とオリジナルストーリーの間には共通点もあります。それは「D」の意志が次世代へと受け継がれていくという流れです。ロジャーが処刑されようと、彼が平穏に最期を迎えようと、彼の意志や理想は必ず誰かに引き継がれていくのです。

ロジャーの病と処刑は、原作において彼のキャラクターに悲劇性と高潔さを与え、物語に強烈なインパクトを残しました。一方で彼が生き続けた世界線では、父として、指導者として、革命家としての側面がより強調される結果となりました。

どちらの結末も、それぞれの形で美しく、意味のあるものだと思います。ただ一つ確かなことは、どんな世界線であっても、ゴール・D・ロジャーは「自由」を愛し、海を愛し、そして何より、自分の生き方を誰にも曲げなかった男だということです。

この小さな「もしも」の物語が、皆さんの「ONE PIECE」をより一層楽しむきっかけになれば幸いです。

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