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第25話 「決断」を満喫しようと思います


「まずはじめにだが、エレナは試験に無事合格した。おめでとう」


(まじか!エレナすごいぞ)


 しかしアバウトは同時に思った。

(うわー、上げてから落とすタイプのやつだ)


 褒めていい気にさせておいてから、バッドなニュースで落とすテク。


「彼女は指揮官の1人フィレを戦闘不能にした。それが出来たのは今回、彼女だけだった」

(エレナ...いったい何があったんだ?何も覚えてない...)


「さて、本題に戻そうか」


 やはりアバウトの思った通りの展開になりそうだ。


「貴様、よくもまあ元魔王であることを隠して試験に参加しおったな」

「はいどうもすみませんでした!」

 アバウトは土下座をして激しく謝罪をした。


「我らの目を欺けると思ったか...まあそれはいい」

 失格の宣言すら覚悟していたが、どうやらそれはないようだ。


「今までの経緯を話せ」


 レアデルに命じられ、アバウトはこれまで何が起こったかを簡潔に話した。魔王をやめ、気付けば戦場にいたと思ったら眠ってしまい、ノワールにいたこと。それからは元魔王であることを隠しながら、1カ月間修業を積んできたこと。


 アバウトが話を終えると、レアデルが「なるほど、よくわかった」と言い、一呼吸おいてから再び口を開いた。


「単刀直入に聞こう。昨日のアエスの襲撃に貴様は絡んでいるのか」


 アバウトは心臓が飛び出るかと思った。

「観光客だけでなく、有望な守護者も犠牲になったと聞いている。どうなんだ、アバウト」

「元部下がやりました...リリスっていいます」

「なに?」

「17歳で暗めの色の髪で冷たい青い目をしています得意な魔法は変異魔力を使った攻撃魔法で性格は相手が格下だとわかった瞬間に見下すタイプで好きな男性の好みは———」

「あぁわかったわかった!もういいから、アバウトもういいから静かにして!はあ。犯人は元部下で、お前は関わってないのだな?ならいい」


「あ、はい...むしろぼくも狙われた側で...」

「あ、そうなのか。お前が無事だったのは何よりだ」

「ありがとうございます...!」

「それともう一つ聞きたいのだが、さっきの試験で何があったか覚えているのか?」


 聞かれたくないことを聞かれてしまった。

 リリィの魔力を身体に浴びたあと、まったく記憶にない。


「一瞬ではあるのだが、私でも感じたことのない最大の魔力量の反応があった。この時代のなにとも比較できないほどの、ありえない量の魔力だった。何か身に覚えはないか?」

「...ないです」

 実際にアバウトは全く身に覚えがなく、なぜ気を失ったのかもわからなかった。


 少しレアデルは考えるようなしぐさを取り、やがて口を開いた。

「わかった。ご苦労だった。最後にお前の試験結果を伝える」


 アバウトはつばを飲み込む。1か月の集中強化訓練は果たして実を結ぶのか。



「アバウト。お前の入隊を認める」


 不合格の覚悟を決めていたアバウトは驚いた。


「参加者たちを縛るのに使われていたのが霊力と魔力を融合したものであることに気付いたのは、実に見事だった。元魔王だからこそあれだけ早く見抜けたのだろう。我らはそこを高く評価している」


 レアデルだけでなく、指揮官全体としての評価だった。それにしても、やはり指揮官は格が違うようだ。直接目で見なくても霊力や魔力の検知ができ、試験中のあらゆる情報を把握しているのである。


「レアデルさんよー、さっきアバウトの人柄も褒めてなかったかー?」

「おいリオネル!それは別に言わなくていいんだ!」

「褒めて伸びる人もいますよ、レアデルさん」

「グランパスまで...はあ、わかった。アバウト、お前の人を引き付ける性格は守護者にとってとても大事なものだ。それらを総合的に評価した結果だ」

「あっれー?さっきと言ってたこと違うみたいだけどー?元魔王ってかっこいい!すごい!みたいな」

「だ、黙れリオネル!そんなことは一言も言っていない!それでだな、アバウト。君の入隊先の希望はあるか?まあ、エノを選んでくれるなら歓迎するがな」



 アバウトはちらりとフィレを見た。フィレもアバウトを見つめていて、ぴったりと目が合った。


「嬉しいお言葉ありがとうございます。ですが、オレはノワールへ入隊します。守護者になるきっかけを与えてくれたのが、ノワールの守護者の方だったので」

「そ、そうか。わかった。君の潜在能力を考えればエノでも十分通用すると思うのだが...わかった...わかった...」


 あまりわかっていない様子である。よほどアバウトをエノに欲しいのだろう。

 しかし最後には、「気が変わったら、いつでも言ってくれよ」と承諾した。

「それじゃフィレ、彼を外まで送ってあげてくれ」

「承知しました」


 フィレはその場で立ち上がり、ドアの前で「失礼します」と言い頭を下げた。


 アバウトも慌てて

「あ、皆さんありがとうございました。これからよろしくお願いします」

と一礼し、フィレのあとをついて行った。




 ルミナス城の広く豪華な廊下。

 コツコツと歩く音だけが響いていた空間に、やがてフィレの声が響いた。


「覚えてるかな、私のこと...」


バトラブをお読みいただきありがとうございます!

さて、本作第1章「守護者入隊試験編」は明日で終了する予定です。


ここまでお付き合いいただき、感謝でいっぱいです。

楽しめていただけたのなら幸いです。


明日8月16日の予定です。

・第1章最終話

・本作をより楽しんでいただくための満喫小噺


以降は第2章を引き続き投稿いたします。

今後とも定食をよろしくお願いいたします( `・∀・´)ノ

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