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百物語

作者: 須堂さくら

実話を元にした話です。


百物語をしようと集まった少女たち。一人の少女に順番が回り、彼女は元警察官の伯父さんが体験したことについて話し始めた。

えっと、私の伯父さんから聞いた話をするね。実話だし、あんまり怖くないかも。ごめん。


伯父さんは警察官だったんだけど、人が亡くなっている現場に行ったりすることもあるから、不思議だなっていう現象に遭うことも時々あったんだって。これはそんなのの一つで怖くもあり、哀しくもありだったって伯父さんが語ってくれた話。



その頃伯父さんは交番に勤めてて、そこに、人が殺されてるって電話があったんだって。えぇと、仮に、Aさんってするけど、Aさんの家で、Aさんが殺されてるって、そういう通報だったらしい。

それで交番に二人でいた伯父さんと同僚の人は、Aさんのおうちに行った。通報者は通報だけして立ち去ってしまったのか、そこには誰もいなかった。

もしかしたらいたずらだった可能性もあったんだけど、状況を確認しないことには帰れないから、伯父さんたちはAさんのおうちの呼び鈴を鳴らしたんだって。

Aさんが出てきたら、それでいい。こんないたずらがあったから、念のため気を付けていてくださいって伝えたらいいだろうって。


でも、呼び鈴に、返事はなかった。

留守なのかもしれない。そう思いながら家の周りを少し調べたら、不審だ、と言えないこともない足跡が見つかった。それでもう一度呼び鈴を鳴らして声をかけてみて、それから家の戸に手をかけてみた。そしたら、そのまま開いたんだって。

通報があったのは夕方の時間帯で、黄昏時っていうのかな、街灯がつくには早いけど、昼間の明るさはなくなっているような時間。そんな中、カラカラ音を立てながら引き戸が開いた。しんと静まり返った家の中は薄暗かった外よりさらに暗くて、その中に伯父さんたちはAさんの名前を呼びながら入っていった。そしたら。


廊下の電気が、パッ。て、ついたんだって。

センサー式の明かりなんてほとんどないような時代だったから、Aさんのおうちの電気ももちろんセンサー式なんかじゃなかった。だから、伯父さんたちは、びっくりするのと同時に、やっぱり何かが起きていて、Aさんに呼ばれているのかもしれないと思ったんだって。

それで家に上がって、廊下に出たら、今度は階段の電気がついた。だから階段を上って、二階に上がったらまた一つ明かりのついた部屋があったからそこに向かって、そして、どうやら殺されている。と分かるような状態でAさんが倒れているのを見つけたんだってさ。

Aさんとは顔見知りだったから、ここにいるよって教えてくれたのかもしれないな。って、伯父さんは言ってた。

そこで終われば、多分綺麗に終わった話だったかもしれないんだけど。うん。ちょっとだけ続きがあるんだ。


応援を呼んで現場を引き渡して、それでとりあえず伯父さんたちの仕事は終わりになるはずだった。だったんだけど、通報者の話になったときに、奇妙なことに気が付いた。どっちも電話を受けてなかったんだ。伯父さんも同僚の人も、相手が電話を受けて、Aさんが殺されてる。って通報があったって自分に告げたと思い込んでた。だからどっちも通報者が誰なのか、男か女かすら分からない。

交番には二人しかいなかったはずで、それじゃあ、通報を受けたのは誰だったのか。通報があったと声をかけたのは誰だったのか。それは結局分からずじまいだった。ただ、思い出してみれば何かおかしかったような気もするけど、その時はお互いに相手じゃないとは思わなかった。そんな風だったんだってさ。

終わりがうやむやになっちゃってごめんね。実話だからさ、ちゃんとしたオチとかはないんだよね。


ところでさ、私さっきからずっと考えてたんだけど。

今日百物語をしようって言いだしたのって、誰だった?

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