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作者: 柴犬
掲載日:2023/07/14



 おや?



 ふと気がつくと僕は見慣れた居酒屋で寝落ちしていた。

 酒を飲んだ特有の酩酊感がする。


 ああ。


 思い出した。


 会社の飲み会で一気飲みしたんだっけ。

 付き合いでの飲み会。

 殆ど毎日じゃん。

 うちの会社忙しい癖に飲み会多くね?

 その帰り道。

 飲み足りず何処かの居酒屋に入った思ったら此処か。

 懐かしい。

 何年ぶりだ?

 あれ?

 でも酒飲みすぎて入院して無かったか?

 あ~~気のせいか。



「おう」

「ちわっす」


 親父さんに会釈する。


「はしご酒で、そうそう寝落ちって、飲み過ぎも大概だぞ」

「いやいや~~これぐらいは普通ですよ」

「無理すんなよ。俺も人のことは言えんが」

「はい」


 あれ?


「どうした?」

「いえ」


 確かこの店の親父……結構な年齢じゃね?

 確か今年で……七十代……。

 とてもそうは見えないな。

 そういえば親父さん童顔だったっけ。


「何だ? ジロジロと ?」

「いえ」


 視線を下に向けチビチビと焼酎を飲む。


「る~~」


 暫くして店のドアを見ると客が入って来た。

 見知った顔に驚く。


「よう」

「おう」


 マジか。

 懐かしい。

 

「久しぶりだな」

「元気にしてたか?」


 こいつは飲み友達だ。

 本当に久しぶりだ。


「それはこっちの台詞だよ」

「悪いな。店主の親父に退院するまで来るなって、出禁食らっててさ」

「ふうん?」


 僕は居酒屋の親父に目を向ける。

 頷く親父。

 この居酒屋で知り合い、僕たちは互いに意気投合し、酒友人に成ったのだ。


 こいつの仕事は何だったかな?

 ああ。

 飲食店を経営してたか。


 だから自由な時間が深夜しかないってボヤいていたな。

 それで仕事が終わってから飲み歩いてたらしい。

 こいつによると、飲食業の仕事をしてる奴の楽しみは大まかに分けて二種類らしい。

 

 その定番が酒。

 若しくは釣りだ。


 それでコイツは酒派。

 それが縁で知り会ったという訳だ。

 面白いものだ。

 人の縁というものは。



「僕達『自分達の会』の再会に乾杯っ!」

「付き合うぜ」


 それから二人で飲み始めた。


 ガンガンと。

 ガンガンと。


 というか親父さん?

 何であんたも飲み始める。

 店はどうした?

 まあ~~良いが。



 ガンガンと。

 ガンガンと。



 一時間ほどだろうか?

 

 飲み始めて。

 

 客はもう僕達しか居ない。

 他の連中は何時の間にか居なかった。


 これぐらいで帰るか。

 そう思っった時だ。


 ふと気になったので友人に尋ねた。



「なあ」

「何だ?」


 僕の言葉に焼酎を飲んでる友人は視線を向ける。


「何で入院してたの?」

「肝硬変で」


「え?」


 肝硬変で入院?

 親父さんと同じじゃん。

 あれ?

 でも親父さん……。

 あれ?

 どうした?

 というか肝硬変で入院するか?

 いや……。

 確かアル中を治すためには、専門病院に入院し管理治療が必要と聞いたことがある。


「だけどさ~~入院中にに我慢出来なくて、隠れて酒を飲んでたんだよ」

「おい」



 ため息を付く。


「分かる」


 親父さんもやったのかい。


「それでな」

「あ~~」


 ため息が出る。

 何やってんだか。



「最後は肝臓癌に進行した」

「俺も」

「は?」


 呆れた。

 本気で。


「うん?」


 いやまて。

 マテ。

 マテ。

 何と言った?


「そのまま治療の甲斐もなくポックリ」

「そうだな」

「え?」


 何言ってるんだ?




 眼の前に居るだろう。

 二人共。


 そう言いたかった。

 



 そう。




「俺達みたいには成るなよ」

「そうだな」


 親父さんと友人。

 二人の顔には生気が感じられない。

 正確に言えば土気色をしていた。

 

 どす黒く。


 吐き気を催すような腐った血の色。

 どす黒い血管。


 その顔色を見てコップを掴む手におもわず力が入る。

 その恐怖に悲鳴を上げそうになる。


 目眩がした。


 最後の瞬間見た物を僕は生涯忘れないだろう。

 腐ってグズグズになった二人の死体を。

 吐き気を催す要すような腐臭。

 だが目だけは。

 めだけは。

 生前の優しい目だった。

 そのまま僕は気を失った。

 



 気がつくと僕は知らない公園のベンチで目を覚ました。

 

「は?」


 夢?


 あ~~それはそうか。

 

 親父さん五年前に癌で死んだっけ。

 肝臓癌。

 友人も。

 

「夢オチかよ……うん?」


 何を手に持っているんだ?

 そう思いながら手に持ってるモノに視線を移す。


「え?」



 コップだ。

 


 アルコール臭のするコップ。

 先程まで夢の中で飲んでいたコップ。

 それを握りこんでいたのだ。

 



 僕は。


 僕はコップを投げ捨て、奇声と悲鳴を上げながら、この場所から遁走した。

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― 新着の感想 ―
ありがとう、店主、そして友人。 気をつけますm(_ _)m
怖いけれど、そうなる前に気付けた主人公はしあわせでしたね……(´・ω・`) ふたりが助けに来てくれたのかしら。 何事もほどほどが一番ですね。 柴犬さん、ありがとうございました。
酒祭りから参りました。 描写はホラーなのに、温かな気持ちにもなれる不思議なホラーですね。 主人公、飲み過ぎに放つ気を付けるようになると良いですね。
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