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◇間章:敗北if(アイアンゴーレム第二形態)

見返したら若干物足りなく感じたのでそのうち加筆するかも

 アイアンゴーレムとの戦いの最中、ゴーレムがなにやら今までにない動作をしているのが見えた。駆動音のようなものがゴーレムから鳴り出しているようにも聞こえる。


「……嫌な予感。といっても防御手段なんて持ってないし、遠巻きに様子を見るしかないかな……っ!?」


 突然の爆発音。ゴーレムの外装、砕けた石片が散弾のように飛んでくる。シヅキは咄嗟に屈みこみ、両腕で顔を庇い身を守る。

 腕で遮られた暗闇の中、頭部に感じた衝撃を最後にシヅキは意識を失った。



    ◇◇◇


 「いづっ……う、ぁ?」


 右腿に鋭い痛みを感じ、シヅキの意識は覚醒した。

 眼前には黒い人形(ひとがた)。覆いかぶさるようにしてシヅキの手足を押さえつけている。

 そして、痛みの大元である右足は地面の石畳ごと剣で貫かれ、地に縫い付けられていた。


「なっ……痛っ、くそ、なんだこいつ! 離して!!」


 咄嗟に人形(ひとがた)に攻撃を加えようとするシヅキ。だが、抑え込まれた四肢はほとんど動かず、剣に串刺しにされた右足に感じる痛みを増幅させるだけに終わった。

 だが、シヅキの抵抗にもならない身動ぎに対する人形(ひとがた)の反応は劇的だった。回転鋸の取り付けられた異形の左腕を持ち上げ、火花を立てながら回転するそれを、シヅキの左腕、肩の近くへそっと導く。


「ひっ……! や、やめっ────」


 シヅキの嘆願も空しく、そのまま左腕に回転鋸が接触する。錆びた刃で乱雑に肉が裂かれ、血と筋繊維が飛散した。


「がっ───あ゛あ゛ぁ! あ゛っ! あぁぁ゛あ゛!!」


 本来もっと硬質なものを切断するためにある金属の刃を押し付けられ、柔らかく滑らかな少女の腕は容易に切り刻まれていく。純白の骨が露出し、すぐさま血で汚される。

 シヅキがどれだけ叫ぼうと刃が止まることはなく、肉を裂き、骨を削り、無慈悲に切り込み続ける。


「ぁ゛──が、ぁ…………」


 絶え間ない痛苦に息を吸うことすらできず、酸素が尽きて悲鳴が途切れる。

 そして、シヅキの腕が落ち、回転鋸が石畳を切り裂く甲高い音が鳴る。シヅキの左腕をすべて断ち切り、地面にまで刃が達したらしい。


「はっ……! はっ……! はひっ…………! あ、あぁ……わたっわたしの腕! うでがっ……!!」


 人形(ひとがた)に抑え込まれたまま、シヅキは顔を歪めぽろぽろと涙を零す。じくじくとした痛みと喪失感。恐怖に心を砕かれ、抵抗すら忘れて嗚咽を漏らしている。

 そして──残った右腕に宛がわれる回転鋸。息を入れる間もなく、再び切断が開始された。


「あ゛あ゛ぁ!! や゛ぇ゛っ! や゛っ! ぎっ……い゛ぃ゛ぃぃい!!」


 回転鋸は先ほどとなんら変わりのない、しかし慣れなど起こり得ない絶望的な痛苦をシヅキに与える。強すぎる刺激に気絶することすら許されず、すべての痛みを否応なしに体感させられる。

 結局、抵抗のひとつすら許されず、右腕までもがあっけなく切り落とされた。


「うあ、あっ……あぁぁ……。も、やだ……! やだぁ……。だっだれっ、だれか、助けてぇ……っ!」


 シヅキは完全に心を折られ、幼子のように助けを求める。だが、その懇願が人形(ひとがた)に通じるはずもない。回転鋸が、無慈悲にも次の攻撃先、シヅキの股の間へと突きつけられた。


「う……ひっく……ぐすっ…………」


 しかしシヅキは泣きはらしていて、人形(ひとがた)の新たな動きに気付いていない。回転鋸が音を立て、一切の容赦もなく三度の切断を開始する。


「ひ──ぃ゛ぎゃあ゛あ゛ぁぁ゛あ゛あぁ゛!!」


 生殖器官が破断し、腸が別たれ、胃がずたずたに切断される。下腹部に感じる灼熱、今までに経験のない、常軌を逸した痛みと金属が身体を食い破る異物感。

 現実の人間ならとうに死を迎えているはずの傷を負い、それでもシヅキの意識は途絶えていない。高いHPがもたらす死への耐性、それによって、身体の半ばまでを縦に裂かれ、刃が心臓に達しようとする段階に至ってなお生き続けている。死ぬことができていない。


「お、ぶ……ごぼっ…………ご、ぉ……」


 体の中を蹂躙され、攪拌され、意思とは無関係に血と吐瀉物を口から噴き出し、僅かに痙攣を繰り返すだけのモノに成り果てて。それでも鼓動を続ける心臓に、遂に金属の刃が手を掛ける。

 そして──今まで蹂躙してきた臓器となにひとつ変わりなく、あっけなくその鼓動を断ち切った。


「ぉ゛っ…………ぅ゛……」


 心臓を食い破られ、急激にHPが減少する。そして、遂にシヅキのHPが底を尽きた。

 機械的なリスポーン処理が行われ、両腕が断たれ股下から胸部までをずたずたに引き裂かれた無惨な肢体が、光に包まれ消えていった。


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