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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.桃兎 ( ピント ) 団 Ⅱ
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第043縫.きぐるみ羽織る代償

 翌日、ワタシとニックは3人娘達が一晩点滴を投与する為に入院していた救護施設を訪れました。中へ入る前に、アカリは手のひらでキュッとキュイアームの袖部分を(つま)みます。



【お姉ちゃん、どうしたのー? 袖なんかギュッと掴んじゃってー?】



「えぇ、これはね……“萌え袖”です♡ これから行く所は、女の子ばかりじゃないですか? だから、女の子感を前面に出した方が和んだガールズトークがしやすいって思ったんですよ」



【それってちょっと、あざと……】ンげふッ!



 考えてた事、思わず顔に出てしまってますよ! ワタシはニックをグーでごいんっと叩きます。



……コンコンっ!


「こんにちは、ご気分はいかがですかぁ?」



 ワタシとニックは、ノックをして女の子達がいる病室にお邪魔しました。


 ちょうどこの病室にはベッドと備え付けの小テーブルがが2×2で4つ置いてあり、3人の女の子達が1人に1つずつベッドの縁に腰掛けてるみたいです。


 奥のベッドがイヌとネコ、手前のベッドがヒツジのきぐるみの子でしょうか?



『おはようございます……』×3



 しかし皆さん、どこか顔が暗いんです。一晩、点滴を打ったので体力的には回復しているハズなんですけど……まるで、生気が感じられないんです。


「あっ、ワタシの事を覚えていてくれたんですね!

とても嬉しいです♪」


 ワタシは無理に、明るく振る舞います。




【その時ニックは①】─────



 まるでお通夜みたいなテンションだと気付いたニック、その場を和まそうと一生懸命ヘン顔で笑わせようと奮闘します。


 その奮闘ぶりにダダ滑り感を察した、ヒツジのきぐるみさん。無表情ながらもニックを不憫に思ったのか、おちょこに水を持って来てくれました。


「クェッ!」


 そんな空気を全然読めてないニック、とてもご満悦です。



───────────────




「では皆さん、果物の皮……剥いて差し上げましょうか?」


「すみません、有難うございます……その代わり、アタシ達の肩とか腰にぶつからないように気を付けて下さいね」


 彼女達は、弱々しくお辞儀をしてくれました。


 すると、そっと小テーブルに置いたフルーツバスケットをニックがモノ欲しそうな目でジト……と見ていたので、ワタシが「めっ!」ってするとニックは大人しく引き下がります。




【その時ニックは②】─────



 何やらネコのきぐるみさんの横で、ニックはやたら撫で回されてるみたいです。


 ネコのきぐるみさん、ニックに気があるのかな? それとも、ただネコとしての捕食本能?


 そして……それに負けじとネコのきぐるみさんの横でスキップでグルグル回りながら、陽気に歌ってたんです!


「クェ~~!クェっ!クェっ!」


 あっけらかんとしたニックの、陽気な声が木霊します。



───────────────




 そうこうしながら、それとなくワタシは3人娘に探りを入れます。でも、彼女達の症状は思った以上に深刻だったんです。


 まず腰や肩、人それぞれ撫でる箇所は違うのですが、腰砕けになってます。これでは冒険者としての活動はおろか、日常生活もままならなくなります。


 また腰砕けになる程の感情の起伏を、許容量を超えて叩き付けられてます。これでは過度の快感で、喜怒哀楽の感情表現が破壊されてしまいます。



 これこそ、きぐるみを羽織る事で能力を得られる代わりに背負う代償、十字架……その事実と、改めて対面します。



 ワタシは自分の無力さを痛感しました。


 ワタシだって、半神半人(デミゴッデス)では無く普通の人間だったらこの娘達と同じ末路を辿ってたんです。だからこそ、この娘達に何もしてあげられる事が出来ない自分が悔しいんです!




【その時ニックは③】─────



 ちょうど自分の目の前をコロンコロン……と転がるボールに目が奪われてしまい、夢中でボールを追いかけてしまいます。


 あっちにトトト……こっちにトトト……


 気が付いたら、イヌのきぐるみさんの周りで一心不乱にボール遊びをして楽しんでたんです!


 あ、今まで無表情だと思われてた3人の娘さん達もボールの行方を目で追ってます! そして、遊んだ後は3人の娘さん達を巻き込む様にムリヤリ嘴でハイタッチ……


「クェクェ~!」


 娘さん達が相手してくれた事に、ニックは大喜びです。



───────────────




 そんなニックの数々の苦労が段々と実って来たのか、無表情だった感情が少しだけですが優しい顔に。でも、それはどうやらニックの頑張りだけでは無い様です。


 よくよく観察してみると、3人ともボールを目で追いかけている中でイヌのきぐるみさんは何かを手で握ってます。たぶん無意識なんでしょうが、一体何を握ってるんでしょうか?


 ワタシ、目を凝らして“視て”みると……何と、自分のシャンパンゴールドの神気の帯だったんです! でも、ワタシの帯って『視えない霊体が可視化出来る』効果しか無かったハズです。


 試しに、もっとよく視てみると……ワタシの帯のシャンパン色が放出してる量……前より多くなってません?



「絶望って、何色ですか? その色さえ分かれば、きっと絶望なんて足元から希望に変わって行きますよ」



 多くなってるというのも有りますが、ワタシが神気の帯を意識した事でシャンパン色の放出が前よりも激しくなってるんです!









 今までワタシは、ココロの内部から神気の『放出口』を大きくしようと幾度と無く努力を繰り返して来ました。


 でも、ほんのちょっぴりなワタシの神気では抉じ開けるには限界が有ります。なのでワタシの神気に人間の霊気を混ぜて試行錯誤してたんです。


 それでも、今まで一度も抉じ開けに成功した事は有りませんでした。それが今、放出口のタカが外れて、いや、全開になってしまったんです!


 そう、まるで神気を“外から足された”みたいに。




【特別に、ワタシのを差し上げます。ちゃんと受け取りに行って来て下さいね、あと7()()()




 そこでワタシがハッ!と思い当たったのが、この言葉だったんです。


「確かそんな様な事、言ってましたよね……あのウサギさん」



 そう、これこそあの時エロウサギ……神翼ミニウサギから口移し( キス )で貰った新たなワタシの力なんです。それと同時に、ワタシは未知の能力スキルに目覚める事になるんです!

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