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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.桃兎 ( ピント ) 団 Ⅱ
42/44

第042縫.フィリルは何処に?

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【あらすじ】


 モフモフ症候群を捩じ伏せ、無事にキュルムの町に帰って来れたアカリ。


 フィリルと一緒に冒険をしたいな…… でもお互いの立場が有り、再び離れ放れに。天は、運命は再び2人を引き合わせてくれるのでしょうか?



【舞台】 地上界 ( スメルクト大陸 )


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挿絵(By みてみん)

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【夕陽を背にして、はいピース!】

画: Roy 様

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 ワタシとニックと長老さんは、背筋を伸ばしたフィリルの凛とした後ろ姿が階段の上に消えて行くまで見送りました。


 振り返ると、ミストシャワーの水玉がまだキュイぐるみに貼り付いてた様です。立ち上がると、キュイぐるみを伝ってワタシの素肌を滑ります。


 そりゃあワタシは女子高生です、若い素肌は張りが違いますよ。腕の表面で滑る水玉を指で軽くプン!と払いつつ、ワタシは周りを見回しました。


「おい、アレと違うかの?」


 長老さんにちょんちょんと突かれ、ワタシとニックが長老さんの指差す方向を見てみると……


 擦りガラスの仕切りの向こうのソファーで先程まで絶賛モフモフ中だった3人のキュルミー少女達を、気を失って伏せてる状態で発見したんです。


 ユサユサと起こした少女達のうち2人は立てますが、1人はまだ腰が抜けている様です。



 ワタシは半分人間では無いから、モフモフから生還出来ましたけど。モフモフに堕ちた、この子達はもう……



 長老さんとワタシは、二度と闘えなくなった3人のキュルミー少女達の元へと歩み寄りました。ニックは心配そうに隙間から覗き込みます。


「遅くなって、すまんかったの。そなた達3人は()()、絶対に見捨てはせんぞい!」


『ちょ、長老さまぁ……!』×3



 今は、長老さんと少女達の世界です。ワタシは一歩引いて、存在を空気にした方が良いですね……



 ワタシは何も言わず、涙を流す3人の少女達を背中から肩をそっと優しく抱きすくめます。


 少女達3人の気分が落ち着いた所で、長老さんとワタシとニック、そして少女達は北の漁村を後にしました。


 そして、再び深い霧の中をワタシの頭痛ナビを頼りに歩き続けてキュルムの町に戻ります。


「ここから先は、私が少女達を救護施設へ送り届けましょう」


 この後、従者さんが少女達を町の救護施設へと送り届けてくれたそうです。あの子達、大丈夫だと良いんですけど。


 例え、キュルミーとして仲間達と闘えなくなったとしても……生きてさえ居れば、恋をしたり……女の子としてやりたい事、いっぱい出来ますから。



 でも、ワタシは……人間として、もう……



 ワタシもそう……地上界に降臨したばかりの今の段階では思ってました。でも、まさか後に……この旅の彼方、魔法大陸マガンティでワタシ自身恋に落ちる事になろうだなんて……












「長老さん、この後相談したい事があるんですけど……」


「この道端では周りの人の目もあるし、落ち着いて話も出来なかろう。ワシの家へおいで」


 こうしてワタシは、町中でひと際大きく存在感を放つ長老の家へと招待されたんです。魔除けを意味する紫色の屋根に、狛犬に似た水色のシーサーの置き物がまるで鬼瓦の様に置いて在ります。


「長老さん、アレは一体何ですか?」


 ワタシは、屋根を指差して聞きます。


「あれは“風獣かざかみ”と言っての、風で霧を払いこの町を守ってくれる守り神なんじゃよ。良く追い風を背に受ける事を、『風上に立つ』って言うじゃろ? アレの語源なんじゃよ」


 確かに、キュルムの町はいつも深い霧に包まれます。この町はいわゆる“風”という自然現象を崇拝する、「ネイティブ(自然崇拝)」の町でも在るんでしょう。



 みんなで、長老の家の中に入ります。長老さんとワタシがテーブルの周りに敷いてあるゴザに座ると、使用人のお姉さんが冷たい飲み物を持って来てくれました。


「長老さま、粗茶をお持ちしました。お客様もどうぞ……」


 ワタシはコップの飲み物をコク……と飲み干し、ニックにニコとアイコンタクトします。そして、コップを下から上に振って中に入った氷だけをニックに放り投げると……


 綺麗な放物線を描いて、見事にニックの口へジャストイン!



ポリポリ……ポリポリ……



 ニックは美味しそうに氷を頬張り、噛み砕いて食べてます。ワタシはスウ……ッとひとつ深呼吸をした後、意を決して長老さんに尋ねました。


「長老さん、『ミントセキュリティサービス』って一体どういう組織なのか、ご存知無いですか? 長老さんの分かる範囲で良いです、教えて下さい!」


 ふむ、と長老さんはしばらく考えて思い出した事を口にしました。


「確か、ミントセキュリティサービスっていうのは『ミント団』グループという大きな傘下の中で主に“要人警護”を主な業務とする一大警備保障組織なんだそうじゃ」


 要人警護って……もしかすると、今ワタシが探してる『7世界の王』達もミントセキュリティサービスに護られてるんでしょうか?


「えっ、“要人警護”って国のトップとか超エライ人を護るのが仕事なんでしょう? 何でそんな人達が『窃盗団の殲滅』なんて事をしてたんですか?」


 う~ん、と長老さんは首を捻りますが、答えに辿り着きませんでした。


「それは……分からんのう。何か理由があったのかも知れん。それこそ、今度フィリルとやらに会った時に聞いてみたらどうなんじゃ?」



 取り合えず、今現在で分かっている事は『ミントセキュリティサービスは要人警護の業務を請け負う組織でフィリルが最高責任者である』事だけです。


 ミントセキュリティサービスの拠点が何処にあるのか、どこに行けばフィリルに会えるのかが依然不明なんです。


「八方塞がりって感じですよ……」











 悄気ショゲてるワタシを見て、見かねた長老さんが救いの手を差し伸べてくれたんです!


 長老さん、優しいです♡


「ならば、そなたは明日時間が空いてるかの? 今日救護施設へ送った3人は、そのまま明日まで点滴入院をするそうなんじゃ。ワシの代わりに、見舞いに行ってやって欲しいんじゃよ」


 ニックも、全面的に後押ししてくれます!


「お姉ちゃん、気分転換にちょうどいーよー!」


「分かりました、ニックと2人で行って来ます」



 翌日、見舞いの場でまさかあんな事が起ころうなんて……!

 人間から、女神になる事を目指すアカリ。だから、活躍の場を日本から異世界に移した今……もう人間としての自分は恋なんて出来ないって思い込んでるんです。


 この思い込みが実は、遥か先……第6章【仁人王編】に対する、長♡長♡長距離恋愛レベルの伏線なんです。いえ、現在第6章を執筆してるんですけど、その最中に思い付きました♪

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