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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.緑兎 ( ミント ) 団 攻防
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第039縫.フィリルとの初遭遇

 黒服の男達とリーダーさんが突撃してから、遅れる事暫くして。階段からゆっくり降りて来た女の人が、リーダーさんを(ねぎら)ってます。


「シルク、ターゲット全員捕縛お疲れさま! いつも感謝してるわ♪」


 上着は白いパリッとしたシャツの上に黒のベストを羽織り、下は黒のスラックスというアンサンブルを着こなしてます。


 そしてこの女の人にだけ、左肩に【M.S.C.】の文字がワッペンに刺繍されています。


 ワタシは、その女の人の立ち振舞いを見ました。いわゆる「礼服」というものでしょうか……お化粧もバッチリで、遠目から見ても凛とした立ち姿が香るお姉さん、って感じました。


 そして女の人は長老さんを始め、みんなに深々とお辞儀をしてこう名乗ったんです。


「私は『|ミントセキュリティサービス《  M.S.C.  》』……緑兎(ミント)団グループの警備部門を統括するチーフマネージャー、フィリル=グレイシアと申します」


 そのお姉さんがワタシと目が合った瞬間にニコリと垣間見せたのは……春の陽射しの様な、暖かく優しい微笑みだったんです。


「たぶん、末長いお付き合いになるかも知れませんね。以後、お見知り置きを」



 これが、後に“終生の友”となるフィリルとの初めての出会いだったんです!











 フィリルが自己紹介を済ませた後、先程から気になっていたんでしょう……突然、くるっとワタシの背中に回り込んだんです!


 そこでニックとフィリル、初めて目が合います。その途端……



『あ~~~っ!!!』×2



「久しぶりね、おニクちゃん! “スナッサ峠”の神経沼で、キョウコ様とおニクちゃんに助けて貰って以来ですね」


【『おニクちゃん』はやめてー! フェンリルウルフの血が入ってるだけに、ジョーダンに聞こえなーい!】



イヤーっ!イヤーっ!



 ニックは、フィリルの周りでバタバタと羽根を全力で振り乱して右往左往。ワタシは、そんなフィリルとニックとのやり取りを唖然として見てます。


「ニックさん、フィリルさんと知り合いだったんですか……? 道理で、さっきからずっとワタシの背中に隠れてたんですね……!」


 フィリルは、そんな逃げ惑うニックにニコッと微笑みました。


「大丈夫ですよ、おニクちゃん! 私、フェンリルウルフの血もうすーくしか受け継いでいませんから『捕って喰ったり』なんて出来ませんよ!」


 そして、フィリルは長老さんに深く敬礼する事で感謝の意を示してこう言いました。


「キュルムの町の長老ジョセフ様、こうして無事にターゲットの確保について協力頂き、誠に有難うございました」


 この場にフィリル達が来た理由、漸く納得出来ました。既に内定済みだったんですね。


「ところで、ミント団とは荒くれ者の集団と聞いてたんじゃがの? 寧ろ、洗練されておるわい」


「ジョセフ様、ミント団が荒くれ者の集団だったのは、私がチーフマネージャーになる前迄ですわ。粗暴の悪い者達は私達、ミントセキュリティサービスがミント団から全て叩き出しました」


 どうやらフィリルは嘗てのミント団の悪しき慣習に大鉈を振るって、大改革を断行したみたいなんです!


「叩き出すのは、グランプスが最後です。これで桃兎(ピント)団に負けない位、健全なグループになりますよ」


 では……とフィリルは長老さんに一礼します。


「この者達に関しては……キュルムの町に被害が出る前から、他の町村から同様の処罰依頼が来ておりました。昔の栄華が忘れられ無かったんでしょう、それ故の現当主の暴挙……憐れなものです」


「ジョセフ様、いくつもの領域を跨ぐ為、5大陸を股に駆ける私達『ミントセキュリティサービス』が代理で処罰を与えたいのですが……」


 フィリルはそう言って、長老さんにお伺いを立てます。ちゃんと筋を通す人ですね。


「もちろん、被害に会われた町村が全て等しく満足頂ける結果になる様に最大限の努力を致します。宜しいでしょうか?」


 長老さんは一礼をしてどうぞ、どうぞ、とリボンを付けるかの如く、フィリルに丁重にお願いしたのでした。











 長老さんとの話し合いも終わり、『グランプス』の一味はリーダーのシルクさんを始めミントセキュリティサービスの男達に連行されて行きました。


「ありがとう、恩に着ます。貴方が話の分かる方で大変助かります」


 代表者同士の対談って、要はどこで話に折り合いをつけるかっていう『相手の腹の探り合い』ですから……いつも以上に神経がすり減って、大変なんでしょうね。


 コレを毎日続けている様なモノですから、長老さんもフィリルさんも、ホントご苦労さまです。



「さてと、堅苦しい事務的な会話はここまでにしましょうか……」



 フィリルが深く俯きながらその言葉を発し、ストレートを後ろでポニーテールに縛ります。そしてフィリルがふうっとひと息ついた、その途端……


 ニッコリ笑った彼女の目が一本筋になり、ふにゃんと緩んだ口元はちっちゃい犬歯がキュートな“にゃんスマイル”になったんです!



……!!!



 そう、この動作こそもう1つのモード『にゃんモード』へ切り変わるスイッチ。“にゃんスマイル”を見た瞬間、ワタシは思わず息を呑んでしまいます! 



 見た目が違う、佇まいが違う、その身に纏う空気感まで何から何まで全てが違うんです。二重人格、と云うものなんでしょうか?



 それなのにも関わらず、あの時したみたいに自分の魂を投げ出す様にしてフィリルの魂に触れてみると……()()()()()()()()も同じひとつの魂で在る事が分かるんです。



「へぇ~、貴女が私の敬愛する英雄キョウコ様の娘さんだねぇ~。確かに面影ある……っていうか、瓜二つじゃ~ん!」


 さっきまでのフィリルとのあまりの変わり様に、ワタシは思わず胸がドキッとしてパチクリ目を丸くしてしまいました。



 か……可愛いです……



 さっき見た凛とした立ち姿と比べると、あまりにギャップ有り過ぎで……さすがのワタシも、萌えちゃいますよ!


 ニックは、フェンリルウルフの外見を知っているだけにフィリルの“にゃんスマイル”を見て思わずククッと笑ってしまいます。



【いくら人間らしい優しい顔つきでもー、こんな所でフェンリルウルフの“素”が出るんですよねー】



 恐らく本人は、気付いてないんでしょうけど。



「んっ、このニオイ!忘れもしないわぁ~!……コレって、キョウコ様がお召しになった伝説のきぐるみじゃないのぉ~!」


 フィリルは、もふもふ尻尾をフリフリしてます。そんなフィリルの様子を見てワタシはうわぁ、と感心してしまいました。



 フィリルさん、ニオイで分かっちゃうんですね! って言うか、1度ふにゃんってなるとココまで変わっちゃうんですか、このヒト……



「ねぇ、ひとつ私のお願いを聞いて欲しいんだけどぉ~。私を……アカリさんの仲間に入れて貰えないかしらぁ~?」











 うん、フィリルなら正に『渡りに舟』です! でも……ミントセキュリティサービスの“チーフマネージャー”の肩書きは、どうするんですか?


「でも、今は待っててぇ~! ミントセキュリティサービスに掛け合って、アカリさんに全面的に協力させるからぁ~! モチロン、その時のパイプ役は私ねっ!」


 確かに、フィリルと一緒なら……これから先、ミントセキュリティサービスに護られながら冒険が格段に進めやすくなりますね……


でも……

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