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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.緑兎 ( ミント ) 団 攻防
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第036縫.冒険は終わりなの?

 拐われた3人の女の子を、民家の外に連れ出そうとしたワタシは……目の前の光景を見て思わず、先程異世界シャチ、アダロから剥ぎ取った毛皮をごそっと落としてしまいました。


「オマエら、ココを誰の縄張りだと思っているんだぁ!!!」


 怒声の方を振り向くと、何とさっき浜辺で()()()()してたあの盗賊団『グランプス』の3人組が事務所に帰って来たんです!


「しかし、事務所の中でよくもまぁこんなに暴れてくれたなぁ。小娘なのに、大したモンだ。しかし、コレで形勢は逆転だな。なぁに、キッチリ落とし前を付けてもらうだけさ!」


 でも、ワタシは少しも慌てる素振りを見せる事無く。3人組に気付かれない様に少しずつ動きます。


 そう、自分と階段の間に3人組がサンドイッチになる様に……此処の場所が、一番吉。この部屋の“ある場所”を使えば、まだ勝機はありますから!


 そして、3人組に向かいニコと笑って言いました。


「ひとつ聞かせて下さい。盗賊団『グランプス』って、町娘を拉致して町に脅しをかける……そんな、性根の腐ったヤツらばかりだったんですか?」



【現当主になってから『グランプス』は変わった】



 確かに、ニックはそう言ってましたけど……その通りですね、品格を貶めてます。全然、盗賊団の頂点に君臨する「雄」っぽく有りませんから!



 ワタシは行動するタイミングを見計らいつつ、もう一度長老さんの指示したプラン通りに進んでるかどうかチェックし直します。


 今回、長老さんから指示を受けてた「人質救出プラン」は、こんな感じです。



【人質救出プラン】──────


1.敵対勢力の口から言質を取る、すなわち己の悪事を認めさせます。

2.拐われた人質を救出し、敵対勢力の残存兵力を削りながら退却します。

3.敵対勢力から得た言質を“大義”に変えて、長老さんが他『ピント団』グループ組織から友軍を募ります。

ただ長老さんはグループの代表であるってだけで、どのメンバー組織も序列は同列で上下関係は存在しないのでこの形を取るんだそうです。

4.長老さん達が「正義」となり、その名の元に集う友軍は大挙して『グランプス』に報復を開始します。


───────────────



 このプランが上手く行けば、いくら屈強な『グランプス』でもひとたまりもないハズなんです。



 キッチリ「報復」までするのが、『ピント団』流なんですね! この盗賊団の主要メンバーは、恐らく5人だと思います。先に2人倒しましたから、あとワタシが相手をするのはこの3人だけですね……



 だから、油断してたんです。2人組を倒したんだから、3人が相手でもどうにかなるでしょ、なんて…… 



「そうか、ウチの下っ端が人質を拐っちまったのかぁ。済まねぇな、手荒な事をしちまった事……謝らせてくれ」


 3人組は、まるで空手の押忍みたいな姿勢で両手を下ろして軽くお辞儀します。この騒動は、どうやら部下2人組の単独犯行だったみたいですね!


「こちらの地上界でも『仁義を通す』って考え方、あるんですかねぇ……?」


 完全に優位に立っているとカン違いしたのか、のほほーんとするワタシ。でも、それが甘い考えだったなんて……人生、そうも上手く行くハズが有りませんでした!


 すると、押忍の姿勢でお辞儀する顔の奥から血走った眼と下卑た笑いが覗きます……!


「なーんて、謝る訳ねーだろ、小娘がぁ! オレ達のシマを荒らす『ピント団』グループへの、報復措置なんだよォ!」


「それによ、もっと手っ取り早くこの小娘の口を封じちまえば……全て無かった事になるじゃねぇか!」



 今の吐き出した言葉で、言質を取る事が出来ました。イヤ、ワタシの口を封じる以前に……すでに思いっきりバレてるんですけど、長老さん達に!


 ワタシはダッ!と駆け出し、3人の脇下の間を潜って階段までダッシュで走リました。



 目指すは、階段前の“出入口”! あそこを利用して1対1になる様な状況を創り出す事が出来れば、まだ勝機はあります!


 でも、その目論見も3人組には全てお見通しだった様です。今まで潜り抜けて来た修羅場の数、経験値の差が圧倒的に違います。


 潜る瞬間、傭兵の訓練された動きで上から思い切りのしかかられて後ろ手に腕を捻り上げ寝転ばされてしまったんです!



ぐふっ……!


「クッ、先の2人組とは動きが違う……?」



 1対3ではさすがに多勢に無勢、ワタシはクッと唇を噛んで睨み付けます。それはそうです、先の2人組はワタシが女の子だから、と完全にタカを括って油断してくれてたんですから。


 今度の相手は3人組で、しかも最初から傭兵スキルを出し惜しみしないヤバいヤツらが相手なんです。


 最近この地上界に来たばかりで戦闘経験値が限りなく無いに等しい女の子が、しかもひとりだけの単独行動では……必然的に、こうなりますよね。


 もし、先の2人組が女の子と油断せずに最初から挑み掛かられたら……今のワタシでは、恐らく先の2人組にすら勝てないでしょう。



 こんな事態を招いてしまったのは先の2人組を倒す事が出来た、と舞い上がってしまったワタシの責任なんです!



 あまりの浅はかな考えに、ワタシはココロの中で悔し涙を流しました。











「カクゴしな、小娘。アイツらと同じ様に、きぐるみの上からモフモフしちまえば……腰砕けになって、全てお(しめ)えよ!」


 そう言って、3人組の1人は肩越しにビッと親指で3人の女の子を指します。未来を閉ざされてしまった、3人の女の子。



 そんな事されたら最後……二度と困難に立ち向かえなくなっちゃう! ワタシの旅って……こんなにも呆気なく終わりを迎えるの……?



『じゃあな。グッバイ、人生 ☆』



 ワタシは腕を捻り上げられ寝そべった状態のまま、そのひと言で目の前が真っ暗になってガタガタ震え出してしまったんです!

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