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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.桃兎 ( ピント ) 団 Ⅰ
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第030縫.『ピント団』構想!

 キュルムの町の長老さんから衝撃のひと言を聞かされ、ワタシ……明らかに凹んでます。



【あー、テステス……】



 すると今まで堅く口を閉ざしていたニックが、高いトーンの声で長老さんの脳内に軽快なジャブを繰り出します。



【あのー、このままではあまりにもお姉ちゃんが不憫でねー。なので母上のキョウコ様、そしてお姉ちゃんと2代に渡ってお供をさせて貰ってるボクから言わせて貰いまーす!】



 き、君なのか?と思わずニックと目が合う長老さん。『譲渡の儀式』を経てニックと魂が繋がってるワタシにも、ニックの脳内会話は伝わってます。


 一応調べてみました、『かぐら座』の弾き子の皆さんでテレパシースキルを持つ人は居ませんね。安心です、脳内会話し放題です。


 ニックは声のトーンを低くしてシリアスに、長老さんにこう言って退けたんです。



【ハッキリ言って、潜在能力で比べたらお姉ちゃんの方が断然上だよー?】



「それは……この子の方がキョウコ様より能力値が高い、と云う事ですかな? それとも、キョウコ様には無い能力をこの子が有しているとでも?」



 何て言うか……アナタ達、良い歳してどれだけ“キョウコ様( ワタシの母 )LOVE”なんですか……



【正直言うとボクもお姉ちゃんとは出会ったばかりなのー。能力の程もまだ掴みかねてるのー。だけど、ひとつだけ分かってる事がありまーす】



 脳内会話が伝わらない以上、弾き子の皆さんからはただニックが長老さんに(じゃ)れついてる様にしか見えません。



【お姉ちゃんは、『天界』の扉を開ける事が“出来る”お方なんでーす。長老さんならこの意味、分かりますよねー?】



「なるほど、確かにそれは大きな声では言えませんわな。その言葉の意味の重大さ……よく身に染みて分かっているつもりじゃ」


「何せ、ワシも“()()()”に立ち会っておる1人なんじゃからのぉ……」


 長老さんの言う“あの場”とは、一体何なのでしょう? 弾き子の皆さんも、先程からひとりでブツブツ呟く長老さんを不思議な顔して眺めてます。


 長老さん、決して耄碌した訳では無いですからね? でも……話に割り入るなら今です。透かさずワタシはこのタイミングで、長老さんに声を掛けます。


「では、長老さん……ココをしばらく活動の拠点にさせて頂いて宜しいでしょうか?」


「済まない、今は寝床と1日2回の食事しか用意出来ないんじゃ。今の段階で、町の外から来た客人に出来る最大のもてなしなんじゃよ……」


 ワタシ、首を傾げて聞きました。


「えっ? 今の段階で……とは、どういう意味なんですか?」


「実はの、最近ワープホールに緩みが生じておる様なんじゃ。そのお陰で“次元の歪み”が広がってしまって、モンスター達が前よりも大量に発生してしまっておるんじゃよ」


 どうやら、次元の歪みが出来てしまったのはそのワープホールという孔が原因らしいですね。


「その孔は、30年ほど前に起きたとある闘いが原因の一端であると言われておる。それが『キュルミー大戦』と呼ばれるものじゃよ」


 そう云えば、母も言ってましたね……


「バトルで負かしたモンスターと主従関係を結ぶ事を“テイム”と言うんじゃが、テイムしたモンスターを駆使して闘いを挑む者達の事を『獣着師(キュルミー)』と言うんじゃよ」


 それが、この戦いの由来なんですね。


「特に秀でた能力を持つキュルミーは『白い巫女』と呼ばれ、今迄も数100年から数1000年に1人地上界に降臨するんじゃが……30年ほど前に降臨なさった新しい『白い巫女』がキョウコ様だったんじゃ」


「『白い巫女』様はこの大戦を勝利に導き、英雄と称される様になった。それからワシらは彼女を崇拝する様になり、この町を作ったんじゃ」


 ワタシの母の話をする時の長老さんの顔、とても嬉しそうですね! 自分の事の様に嬉しくなってしまいます。


「それで、そなたにお願いがあるんじゃ。もしキョウコ様が本当にそなたの母君なら、キョウコ様に再会出来たらワシらに顔を見せに来てくれんかの?」


「えぇ、そういう事でしたら喜んで!」


 ワタシは、ニコッと微笑んで言いました。


「じゃが、あまり長くは待ってられんかも知れんぞい?」


 えっ、どうしてなんですか?


「なぜなら最近、この大戦の時に出来た空間のヒビが新たなワープホールになり新たなモンスターを生み出しておるんじゃ!」


 ワタシも、ワープホールにペッ!と吐き出されましたwww


「その為に、商人達の行商路が潰されたり商隊が襲われたりしてワシらの生活に深刻な影響を与えておるんじゃ」


「だから、『白い巫女』様の意志を継ぎし者達が手と手を取り合う事にした。それが5大陸を股に駆ける巨大商業ギルド、『桃兎(ピント)団』構想なんじゃよ!」


「“ピント団”って……何なんですか?」


「ピント団、というのはじゃな……中心メンバーは、キュルミーが着るきぐるみの“能力”こそ平和を導く力、と信じて疑わん者達じゃ」


「だから、『白い巫女』様の着ていたきぐるみ、すなわちそなたが今着ておる“キュイぐるみ”を皆神聖視しておるんじゃ」


「だからきぐるみの中でもウサギが最高位に位置付けられており、この土地の言葉でピント様って呼ばれておるんじゃ」


 はぁ……だからさっきワタシが着てるキュイぐるみを見て、皆さん異様なテンションになっていたんですね。


「そなたもあの中央広場の掲示板に貼ってあるモノを見たじゃろ? あの『ピンクの兎のステッカー』こそ、ピント団の象徴なのじゃ」


 あ、そのステッカーはさっき長老さんが持っていたラム酒のビンにも描かれていましたね……











「あまり待てないと云うのは、周りの町村にもピント団構想を広め薦めておるんじゃがの。どうやらこの構想に、異を唱える者達が存在する様なんじゃ」


 ピント団に対抗し、構想に異を唱える人達は自らを『緑兎(ミント)団』と名乗ってるそうで。


「主に盗賊団が中心らしいんじゃが、そいつらに利権絡みで損してる者達まで複雑に絡み付き……あちこち紛争を起こしておるらしいんじゃよ」


「個人的なスキルだけで集団的な戦闘力を持たないワシらは、ジリジリと後退を余儀無くされておるのが現状なんじゃ」



 長老さんの話では、盗賊団などの敵対勢力に押され気味で困窮極まっているらしいですね。


 何とかしてあげられないでしょうか……?

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