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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.桃兎 ( ピント ) 団 Ⅰ
29/44

第029縫.お母さんと勘違い?

 ワタシは『アマテラスのお話』を通してお姉さんから、この異世界についての実に興味深い伝承話を聞く事が出来ました。



────────────────


・「地上界」と「天界」、そしてもうひとつの世界と3つの世界が存在してる事

・アマテラスと云う初代女神さまが「天界」を創った事


────────────────



 また、そんな伝承話を何故お姉さんが知っていたのか……その答えも、ワタシは何となく想像が付いてしまいました。


 たぶん予想では、あの話の『7人の弾き子達』の末裔のひとりこそ……このリーダーのお姉さんなんだと思うんです。それを裏付けるだけのカリスマも。


 でも旅の出会いと別れは一期一会、何時の日かお姉さんは真相をワタシに話してくれるでしょうか? いえ、たぶん無理でしょう。


 この楽器の澄んだ音色みたいに……空に舞ったら溶けて消えるだけですから。











 ならば楽器の音色をじっくりココロに刻み付けようと静かに耳を傾けたワタシがふと我に返り、周りを見回すと……座楽団を囲む様に、いつの間にかキュルムの町の人達が集まってます。



ワイワイワイ……ガヤガヤガヤ……



 右手前ではお互いの肩を組み、男性同士で酒を呑み交わしてます。


 音楽にはココロの扉を開く魅力が有り、酒には男の友情を育む魔力が含まれてるので……だから、男性は腹を割って自ら本心を曝け出す事が出来ます。



ペチャクチャ……キャイキャイ……



 左奥では大きく輪を囲み、女性同士で話に華を咲かせてます。


 女性は男性と比べて右脳と左脳の橋渡しをする脳梁がブッ太くて、両方の脳をフル活用して“思考”をブン回す事が出来るので……だから、女性は一日中でも会話する事が出来ると聞いた事が有ります。


 キュルムの町のお姉さん達も、かぐら座の“弾き子”の皆さんも、とにかく喋るのが大好きな様です。



おっとっと……♪おっとっと……♪



 向こうでは、酒を呑んで酔っ払った連中がニックと一緒にお馬鹿なダンスを踊ってるみたい。こちらは、酔うと体躯(カラダ)を動かさずには居られないタイプの皆さんですね。


 どいつもこいつもみんな、晴れやかなイイ顔をしているではありませんか!


 一度打ち解ける事さえ出来れば、後はこんなものですよ。でも何故か、みんな“きぐるみ”は着たままなんですけど……











 ワタシ達とかぐら座の皆さんがキュルムの町の人々に歓迎され溶け込む光景を微笑ましく見ていたこの町の長老が、酒を持ってゆらりとこちらにやって来ました。この町で作られたラム酒の様です。


「先程はどうもすみませんでしたわい、よくこの町に来る事が出来ましたなぁ!」


 あ……この酒ボトルにも、あの掲示板で見たものと同じデザインのステッカーが貼ってありますね。


「迷い込む者が年に数人居るから、その度追い返しておるんじゃが……旅のお方の様に、()()()この町を目指して来る者は初めてだったんじゃ。いや、2度目だったかのぉ……」


 だから、みんな怖れて家の中から出て来なかったんですね……


「いえ、ワタシ達も深い霧に迷い込んでしまい……気付いたらこの町に着いてたんです」


 この町にやって来れたのは、突然起きた頭痛に導かれたから……何て事は、この際内緒にして置きましょう。たぶん、誰も信じてくれないでしょうし。


「あの、長老さん。ひとつ聞きたい事があるのですが、何故この町の人達はみんな“きぐるみ”を着てるんですか?」


「あぁ……それはな、この町に『きぐるみ信仰』、『獣着師(キュルミー)信仰』が根強く残っているからなのじゃ」


「“キュルミー達の町”という意味も込め、この町を『キュルムの町』と名乗ってる程なのじゃよ……」


 だから、『キュルム』の町って名を付けたんですね。











「この町は一度、後に『白い巫女』と呼ばれ英雄と讃えられた()()()()により壊滅の危機から救って頂いているのじゃよ。その時の、あのお方の……」


 と長老さんはそこまで喋ってようやく、ワタシもガウンの下にきぐるみを着てる事に気付いたみたいです。


「ちょっ、旅のお方、ご無礼をお許しくだされ。その純白のウサギのきぐるみ、もしや……」


「あっ、このきぐるみですか……? コレは、『キュイぐるみ』って言って……」


 ワタシは、借りていた座楽団『かぐら座』のガウンをファサッと脱ぎました。


 思わず、長老は手に持ったラム酒の酒ボトルをゴトンと落としてしまいます。町の人達の視線も、みんな一斉に『キュイぐるみ』にくぎ付けです!


「ま、まさか……そんな……見間違うハズもない……ついに帰って来られたのじゃ……その『純白のウサギのきぐるみ』を見た時にはもう……」


 長老の言葉に合わせて、町の人達が一斉に声を合わせたんです!



「お帰りなさいませっっ、キョウコ様っっ!!!」



 ……えっ!? ワタシの姿を見て、母だと思ってるんですか? まぁ、血の繋がった娘ですし。


 確かに今、母から譲ってもらった純白のウサギのきぐるみを着ては居ますけど……まさか、この町の人達みんな


【このきぐるみを着てる人=母】


って認識なんですか? 母は母、ワタシはワタシですからっ! 残念っ!


 そこは思春期の年頃の女の子、難しいのです。



「皆さん、盛大なカン違いをしちゃってませんか? 皆さんがさっきから仰ってるキョウコはワタシの母で、ワタシは娘のアカリと言いますっ!」


 すると……しばらくの沈黙の後、町の人達が一斉に声を揃えます。そして手のひらを返す様な、見事なまでのガッカリ感が後に残ります。



「えぇぇ~~~っっ!!!」



 ……はーいっ、そこ! そんな露骨にガッカリしなーいっ! あんまり露骨過ぎると、ワタシも傷付いちゃいますよぉ。

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