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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第2章.桃兎 ( ピント ) 団 Ⅰ
27/44

第027縫.キュルムの町に潜入

────────────────


【あらすじ】


 地上界へと降臨したアカリが初めて立ち寄った町……キュルムの町。


 この町での出会いが、アカリの女神としての矜持、女神としての生き方の方向性を決める事に……



【舞台】 地上界 ( スメルクト大陸 )


────────────────

挿絵(By みてみん)

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【女神だってKAWAII、大好き♡】

画:ゆき花 様

────────────────





【お姉ちゃん、思っきりノゾキがバレてるぅー!】


「ニックさん、()()()()ですよ」


【???】



 現在、ワタシとニックと『かぐら座』の“弾き子”の皆さん、合計6人の大所帯は森を抜けて平原の緩い上り坂を進みます。


「さぁ、お日さまが顔を出している内に距離を稼いじゃいましょう!」


 緩い坂道の上り坂と下り坂は遥か向こうでひとつに再び交わります。予定では、まだ明るい内に行ける所まで一気に行っちゃうつもりでした。


 でも、全てがスムーズに行く程そんなに考えは甘く無かった様です。何故なら、歩き続けるに従ってだんだんと霧が立ち込めて来たからです。


「折角()()()()()()て、行動を開始しましたのに……」



……ズキッ!



 霧が立ち込めて来た時、ワタシは少し頭痛でくらくらっとします。でも、倒れる程では無いです。






「あ、あそこにも人影が。あれって……」


 そう……下り坂であのクセがスゴい一団、『ターキーズ』も突然の霧で一寸先も見えず右往左往してたんです。


 それに加えてこちら、坂道の上からは辛うじて向こうが見下ろせますが……どうやら向こう、坂道の下はワタシ達の事を全く認識出来てない様です。


 その理由はここが下に降りる程霧が溜まる地形の所為で、一寸先ですらもう既に真っ白で何も見えないから。ホワイトアウトという現象です。



ゴゴンゴゴン……

   ゴゴンゴゴン……



 さらに頭の上遥か上空から、何かが激しくぶつかる音が響きます。一体、この場所では何が起こってるんでしょうか?



「ん~っ、『ターキーズ』!!!」


シャキィィィンッ……!



 でも、例えホワイトアウトだろうとこの人達の『通常業務』と今日のお仕事の依頼確認は欠かせません。声だけ聞こえて来ます、ブレないですね~。



【絶対に『筋肉は裏切らない!』って言ってそーなタイプだよねー♡】



 ワタシは人差し指を立てて、シーッとみんなに沈黙を守らせます。


「今日の仕事は『白い巫女』の捜索、分かってるなっ! 裏方班の連絡では“濃霧の向こうにその姿を見た”って報告だ!」


 決して裏方班は、ボンクラではありませんよ? 寧ろ情報分析能力に関して、光るモノすら感じます。だって『白い巫女()』ではありませんが今、娘のワタシ達が濃霧の中を彷徨ってるんですから。


「濃霧が頻繁に立ち込めるエリアと言えばココだ、この辺を徹底的に探索するぞ!」


 なのに何で……レッドから毎回毎回、あんなに説教を喰らってるんでしょうか?


「レッド、突然の霧でホワイトアウトしちゃったよぉ♪ この霧じゃあ、捜索対象者の姿なんて完全に分からないんじゃないのかい?」


 グリーンは両手を上に掲げ、完全にお手上げポーズです。しかし彼の場合、本気で困ってる訳では有りません。


 早く打開策を考えろ、と暗に催促してるんです。


「レッド、前回の『メフィスト』の件でも今回の探索の件でもそうなんだが……何か最近、後手後手に廻らされてるんじゃ無ぇか? 沸湯(にえゆ)を飲まされてる感が強いぜ、全く」


 ブルーは、“目に見えない何か”の思惑に振り回されておかんむりです。でも歯ぎしりする程悔しい、という感情でも有りません。


 その証拠に、この濃霧の中でも探索を止めるつもりは無さそうです。何だかんだ言っても、ちゃんと信頼関係出来てるじゃないですか……裏方班と。


 しかし色んな意味で、ニアミスしてますね。惜しいですね……ターキーズ。でも、何であの一団は『白い巫女』を探してるんでしょうか……?











 その後暫く、ワタシ達は引き続き濃霧の中を彷徨います。お姉さん達にも、遥か上空からのぶつかり音は聞こえてます。


「濃霧のせいか、ちょっと寒いですね……」


「じゃ、座楽団『かぐら座』のガウン有るから羽織らせてあげるよ……」


 リーダーのお姉さんは、ワタシにガウンを貸してくれました。これで寒さは凌げそうです。


「一体、どちらに向かい歩けば良いのでしょう」


 リーダーのお姉さんも、困り顔です。すると……


「たぶん、あっちの方向かも」


 ワタシは、ある方向に指を向けます。


「あの方向に向かって歩くと、頭痛が楽になりますから……次はこっち……何か、誰かに呼ばれてる様な気がしますね……」


 ワタシの“頭痛ナビ”通りに進む事、かれこれ数時間。すると、遠くにボヤ……と町らしき輪郭が見えて来ました。


「あっ、町が見えて来ました!」


「えっ……? 私達も座楽団として色んな町を渡り歩いて来ましたけど、こんな所に町なんて見た事も聞いた事も無いですわ!」


 暫く歩くと、無事に町の入口に着いたんです。


「本当に、幻じゃなくて町だったんですね。来れちゃいましたよ」


「クェ……」



【お姉ちゃん、本当に入って大丈夫なのー?】



 ニック、すごく心配そうです。


「ワタシは頭痛のお導きを……信じます。取り合えず中に入ってみましょうよ」


 この子のお陰で、この町に来れたんだから……この子が大丈夫と言うのなら。みんな目を合わせ、コクンと頷き合って町の中に入る事にしたんです。











 町の中は、整然としてます。そして真ん中に大通りが2本、十字に走ります。2本の大通りが十字に交わった中央は、丸い円形の広場になってます。


 広場の真ん中には掲示板が設けられており、そこにはピンクの兎ステッカーが貼られてます。それだけでは無く、一緒にヤシの木も植えられてます。


 そして、ヤシの木には何かの樹木を輪切りにした木の板が打ち付けられており、表面の年輪には何か文字が彫られてる様です。


「ふーん……どうやら『キュルム』って彫られてる様ね……どうやらココ、キュルムの町らしいよ」


 リーダーのお姉さんが教えてくれました。ワタシは今現在この地上界の言葉は分かるのですが、まだ文字が読めないんです。


 この2本の大通りに平行に、まるで定規で線を引いたみたいに等間隔で家が配置されてます。周りを見廻して、リーダーのお姉さんが言いました。


「どうやら、人っこひとりいないみたいですわ」


 アカリは、フルフルと首を横に振ります。


「……いえ、そんな事は無いと思いますよ。だって、人の姿が見えないだけでさっきから人の視線はそこかしこから感じてますから……たぶん、家の中からワタシ達の事を覗いてるんだと思うんです」


「クェ~ッ!」



【冴えてるよ、お姉ちゃんっ!】



 どうやらニックも、その考えには同意見の様です。でも、なぜ人々は顔を出してくれないんでしょう? やっぱり、この町は他所者(よそもの)に厳しいんでしょうか……?

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