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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第1章.母 Ⅲ
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第018縫.次元の歪みを探せ!

 母はワタシとニックの方に振り向き、こう言いました。


「朱璃、ニック、ちょっとそこで待っててくれない?」


 そう言って、母は家の裏に回ります。そして、母の姿が見えなくなった途端……



……ボッ!



 ワタシは何かモジモジと膝を摺り合わせ、顔どころか耳朶まで真っ赤です。


「よくよく冷静になって考えたら……このまま街に繰り出すん……ですか?」


 暫く時間が経って、ワタシはようやく冷静さを取り戻したんです。


 そして異世界に想いを馳せていた意識がいざ現実世界に引き戻された時、改めて自分の着てる衣装の“異常性”に気付いたんです。


 確かに普段着てる服と比べて、デコルテ部分を始めとして背中、おみ足と露出部分が結構ありますからね♪ セクシー路線、まっしぐら?


「このきぐるみの格好、もし高校の友達に見られたら……かなり恥ずかしい……です……」



【うわっ、お姉ちゃん……コスプレ苦手そー】



 まぁ、15才のうら若き乙女ですから当然の反応ですよね。でもニック、『コスプレ』って言葉……何処で囓った知識なんですか?



……プップップー!



 突然、ワタシ達の後ろでクラクションが鳴りました。


「朱璃、コレに乗って行くわよ!」


 母が、家の裏から赤い軽自動車を走らせて来たんです。


 ワタシは、軽自動車の後ろの座席にスッと乗り込みます。母はすぐさま、ワタシが何時も使ってる毛布を投げ入れます。


「さすがにその姿のままでは恥ずかしいでしょ?」



 さすが我が母、( マイ・マザー )ワタシの今の気持ちを理解していらっしゃいます!


 そう云えば、ワタシの生理が始まった中学校の頃から、その時だけはこうやって母に軽自動車で学校まで連れてって貰った事を思い出しますね……


 その時も後ろの座席に乗って、こうやって毛布を被りながら……











 母は車を動かす前に、フロントガラス越しに地図を見るニックと最終確認します。



「ニック、さっき言った“次元の歪み”の場所ってココで良かったのよね?」


 そう言って、母は地図上のある一点をビシぃッ!と指差します。



【そうそう、ボクがポトッて落ちた孔は傍に“大きな一本松”があったんだよー】



 テレパシーだから、例えニックだけ車外に居ようと車の窓を閉め切って居ようと問題有りません。



 それにしても、大きな…… 一本松ですか……



【そして“巨大な岩”もねー】



 一本松と巨大な岩って、まさか……!



 そう、母が左手人差し指で指差してる場所こそ……ワタシが自転車登校している高校の、裏山だったんです!


「ニックは普通の人には視えないから、そのまま飛んじゃってイイわよ!」



【らじゃー!】



 そして、ニックは先導する様に車の前方をすぃーと飛びます。そのまま、軽自動車はブロロロロ……と出発したんです。











 同じく、きぐるみの上からいつもの毛布を被って口から上だけ頭を出し、ボ……とするワタシ。


「朱璃、どうやら着いたみたいよ!」


 母の声がして、キキッとブレーキの音がします。



【ココだよー!】



 車のドアを開けると、パタパタ……という音と共にニックの声が聞こえます。母とワタシは軽自動車を降り、ニックと3人で裏山へ入って行きました。


 ただひたすら、頂上へと続く山道を登って行きます。普段から陽当たりが悪く、あまり人も立ち入りません。


 ココなら恥ずかしさを感じずに済むので、ワタシもズンズン歩いて行けます。


 そして暫く歩いた後、頂上に着きました。確かに巨大な岩が中央に鎮座してます。岩の前には、不気味な石碑が1つ……


「あれ? 朱璃、この岩って石碑も一緒に祀って在ったっけ?」


「もうジョークばかり咬まして無いで下さい、お母さん……この石碑からは、さっきから悪い気しか感じられませんよ!」



【何かヤな感じー!】



 ワタシは試しに巨大な岩に向かい、歩みを進めてみました。真っ直ぐ歩き、石碑の横を通り過ぎた正にその時……



ギンッ……!



 何と石碑の目が紅く光り、ギロッとワタシを睨み付けたんです!


「やっぱり……ですっ!」


「うわっ、石碑が独りでに……動き出したのっ?」



【あれっ、ガーゴイルー!】



「ええっ、ニック、アレがガーゴイルなのぉ? それが本当なら、かなりのバケモンよっ!」


「何ですか、お母さんっ、そのガーゴイルって?」


 ワタシは母に聞きます。母もかつて、地上界で相対した事が有るみたいです。


「簡単に言っちゃうと、打撃も魔法も効かない石の怪物よ! さっき言った『7世界の王』の中の“死鬼王”が産み出したって聞いた事があるの!」


「でも、おかしいわ! 確か、ガーゴイルは石、すなわち無機物から造られてるから目は澄んだ蒼色のハズなのよ! なのに、目の前のガーゴイルは目が紅色って……」


 そう言いながら、母は目の前の石碑に何らかの違和感を覚えたみたいです。


「朱璃……もっと悪いお知らせがあるわ! たぶんこのガーゴイル……誰かに操られてるわよ!」


 うんっ、そこまではワタシも想定してました。


「余程ワタシ達に、異世界に来て貰いたくないんじゃないですか? お母さん、向こうで何か恨まれる様な事、やりませんでした?」


「そんな事、やる訳無いじゃないの!」



【キョウコ様は『白い巫女』、スゴいんだよー!】











 ニックさん……原因はたぶん()()かも。


 『白い巫女』に異世界に帰って来て貰いたくないって、思ってる連中が仕組んだんですかね……



「今のニックさんのひと言で……何故ガーゴイル程のモンスターまで使って本気で襲われなくちゃならないか、その理由が何となく分かっちゃいました」


 お母さん……向こうの異世界の“黒幕”連中に、どれだけ本気で嫌われてるんですか?



 ウーン……って首、捻らないでー!

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