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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第1章.母 Ⅲ
16/44

第016縫.『天界』へ行く方法

 ワタシが“女神“さまですって? いきなりそんな事を言われても、実感が持てないんですけど。


 たった今、キュ~ってノビてたニックが目を覚ましたみたいです! ムクッと起き上がって、キョロキョロ周りを見回しています。状況が把握出来て無いんですね……



【アレ……ココはー?】



「大変だったわね、ニック。さっき、お父さんがアナタの体躯(からだ)に組み込んだ通信魔法陣を使って……天界からコンタクトを図って来たのよ!」


 母のひと言に、ニックが目を大きくしています! しかも、ちょっと……涙目?



【えーっ、シュージン様ってボクの身体にそんな細工をしてたのー!? あの人、ボク達“テイムちゃん”に対する認識、絶対に間違えてるよー!】




ピーピー!ピピッピー!



 ニックは笛を吹き『“テイムちゃん”待遇改善!』と描かれた小さなプラカードを嘴で挟みながら、プンプン!とシュプレヒコールを挙げてます。


 ちょっとちょっと、そんなプラカード……どこに()()()()()()んですか?











「ねぇお母さん、さっきお父さんから聞いた話を整理するとこの2つはあくまで、このきぐるみを羽織った時の“キュルミー”としての能力なんですよね?」



────────────────


・倒したモンスターを仲間にする事が出来るスキル『テイム』

・未来の時間にジャンプする事が出来るスキル『ジャンプ』


────────────────



「じゃあ、ワタシの“女神”としての能力は何があるのか知ってますか?」


 母は、困った顔をして答えます。


「ゴメンね、朱璃……“キュルミー”としての能力しか私には分からないのよ。いかんせん、今までに本物の『女神』自体、1度も見た事無かったからね」


 そして母は過去を振り返り、ふるふると首を横に振って言葉を繋げます。


「いいえ、女神だけじゃないわ。女神や大天使、魔神みたいな『3大神族』と呼ばれる者達は……向こうの地上界でも伝説上の、空想の存在として崇め奉られているのよ!」


 地球で云う“神仏信仰”と同じ感覚で良いんですかね? 母は頬にある長い送り毛を人差し指にクルクル巻き付かせ、ひゅるるっと解きます。


「『大天使』の能力だったら、『天界』にいた時にお父さんが“テレポート”みたいにいくつか実際に披露してくれたから、一部なら知ってるんだけどね」



とてとてとて……ふん!ふん!

   テクテクテク……フン!フン!



 ニックは、まだ嘴で挟んだプラカードを左右に弧を描いて振ってます。鼻息も、やや荒いです! でも訴えるべき相手は遥か遠い天界の先だから、無駄なんですってば……


「お父さんも初めの時はまだ未熟で、『大天使』の力を使う際に()()()()制約を受けてたってその時に教えてくれたからね!」


 ……ま、しょうがないです。


 同じ“半人半神”だった父のアドバイスですから。誰かに教えて貰ってラクしたら駄目って事ですね、たぶん。知りたければ自分の足で、耳で、目で直接確かめなさいと……


 以後、父のこの教えがワタシの異世界における行動原理となって行きます。


「ねえお母さん、ニックさん……どうすればワタシ、お父さんがいる『天界』って所に行けるんですか?」



ヒーヒー……ふぅふぅ……



【それはね、ボクが説明してあげるよー!】



 ニックはようやく諦めたのか、大きくため息をつきます。それでも、ワタシが異世界で成さねばならない事について説明をしてくれました。











コロロ……

   コロロコロコロ……



 家の周りから聞こえて来るこの鳴き声は、アマガエルにそっくりな「シュレーゲルアオガエル」ですね。澄んだ、キレイな合唱を聞かせてくれます。



【お姉ちゃん、ボク達が地上界と呼ぶ異世界には5つの大陸があってね。その5つの大陸それぞれに7つの種族の頂点に君臨する『7世界の王』と呼ばれた者達が存在するんだー】



────────────────


『妖精王』『天使王』『古龍王』『獣猛王』

『仁人王』『花樹王』『死鬼王』


────────────────



 ニックは母と顔を見合わせながら、分かり易い様に言葉を噛み砕いて説明を続けます。



【お姉ちゃん、もしキョウコ様と手段が同じだったらー。この異世界で『7世界の王』を全員探し出して、全ての王から“力の譲渡”を受けなければならないのー】



 ニックは翼をバサバサ羽ばたかせながら、慌てて言葉を補足します。



【でも、素直に“力の譲渡”に応じる王ばかりじゃ無いよー。中には、力ずくで屈服させて“力の譲渡”に応じさせなくちゃイケない王だってー。どの王から順番に廻るか、運の要素もだいじー】




 ちなみに今のワタシは“半人半神”の状態でも『女神』の力がまだまだ弱いので、キュイぐるみを着て『キュルミー』の力に頼らざるを得ません。


 そう、キュイぐるみを脱ぐと弱っちい生身の人間とほぼ変わらないんです。


 でも“力の譲渡”を繰り返して少しずつ女神の力を取り戻せば、母の代わりに娘を守護する()()だったこのキュイぐるみのまだ見ぬ『本当の力』を徐々に引き出せる様になるハズです!











 ここで、母が話に割って入ります。



「たぶん、朱璃のこれから先の旅は私の通った道をトレースする事になると思うのよ。私の時は、確か……『7世界の王』全員に会いに行って、『天界の扉』を開ける為の“7本の鍵“を貰って回ってたわね」


 へぇ、母もかつて『7世界の王』に会いに行った事があるんですね……



「朱璃が一体どんな道を辿る事になるのか、私も一緒に見届けさせてもらうわよ!」



 ワタシは、『7世界の王』全員に会いに行って……一体、何を集める事になるのでしょうか?

【う・ん・ち・く♡】──────



《5大名家と7世界の王》


 この異世界、地上界には5つの大陸が有り、それぞれの大陸を統べている


『アルカディア家』『トンポイ家』『スメルクト家』

『マガンティ家』『デルジア家』


と云う「5大名家」と呼ばれる、大陸の名を冠する事を赦された家柄が存在します。


 また、この地上界には7つの種族が生活環境に適した棲み分けを行っており、


『妖精王』『天使王』『古龍王』『獣猛王』

『仁人王』『花樹王』『死鬼王』


という、7つの種族の頂点に君臨する「7世界の王」と呼ばれる者達が存在します。


 この“縦の糸”と“横の糸”が双方に張られる際の絶妙なテンションで、地上界は危うい均衡を保っていたんです……地上界に、「白い巫女」が降臨するまでは。



────────────────

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