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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
閑章2.母の過去【京子視点】
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第012縫.大戦の後、天界では

 私は今一度、娘の決意の程を再確認するかの様に……目と目をしっかり合わせ、ゆったりな口調で同じ質問を今度は口に出して繰り返したの。


「お父さんの『その後』……どうしても聞いてみたい、朱璃?」


 娘は迷いの無い瞳で、しっかりと私の目を見つめて答えたわ。


「どうしても知りたいんです、お母さん! だって、ちゃんとワタシにもお父さんがいるって分かったから! それに……」


 でも、娘はその後に続く言葉を……何故かふるふると首を横に振り、口を(つぐ)んでしまったの。



「その後に続く言葉、言うかどうかはお母さんのお話の()()()()を聞いてから決めたいんです」



 私は左に座る娘をキュッと小脇に抱き締め、右手で優しく頭ポンポンしてこう言ったのよ。


「ちゃんと伝わったわ、朱璃の決意。じゃあその後、お父さんがどうなったか教えてあげるね」



うぃ~っ…… www ……



 あ、ニックったら酔い寝したまま仰向けになり、脚を曲げたり伸ばしたり尺取り虫の要領で前に進んでるわね!



ドタッ……!



 あーぁ、縁側から地面に頭から落っこちたのよ、ニックったら? でも、これでようやく静かになったみたいね。


 そして、私は満月を見上げてまた語り始めたの。まるで、満月の更に向こうの空にあの人()が居るかの様に……






────────────────




 ここはどこにあるか誰も知らない、『天界』と呼ばれる場所……


 あの時、この地で“黒の巫女”を討ち滅ぼして『キュルミー大戦』は終焉を迎えた、ハズだったのよ。それなのに、どうして……











 ライトグリーンの雲、レモンイエローの雲、ピンクパープルの雲……色んなカラフルな雲が四方八方の空を行き交って。



キ……ン……



 でも、風なるものは存在しない様ね。何故なら、この神界に生きる大天使、女神、魔神から構成される3大神族が持つ“神力”を纏う気、神気が漂って無いから。


 それはすなわち、3大神族のパワーが著しく減退してる事を意味するの。神気が漂って無ければ“神気の対流”、すなわち風も吹かないのでそれを浮力源として神翼で空を飛ぶ事が出来ないわ……本当に“何も”よ?


 ただ、はるか上空に『次元の渦』と呼ばれる黒雲が在るのみね。




 もちろん、月なんて存在しないわ。




 大地は所どころ縦長に穴が空いており、そこから“歪極の雲河”が見えるわ。言い伝えによれば、この遥か深き雲河の奥底に『天界の扉』と云うものがあるそうよ。


 今や天変地異により黒く染まってしまったこの大地には「純白の神殿」、「蒼天の神殿」、「漆黒の神殿」という3つの巨大神殿が天高く聳え立ってるの。


 主に「純白の神殿」と「蒼天の神殿」の周りに、空中をフラフラと懸命に飛ぼうとして墜落を繰り返す……巨大な神翼を背負う沢山の影が見えるわ。



 一方、「漆黒の神殿」はシーンとしてるの。神殿の入口には封印の呪符が貼られ、立ち入り禁止となってる様ね。何を封印してるのかしら?











 巨大神殿のひとつ、「純白の神殿」の建物の影に隠れてる人影が2つ。ひとつは羽根の生えてないウサギ姿の女性、もうひとつは4枚の羽根を背負った頭に輪が乗ってる青髪の青年。



 私とシュージンよ。



「ねぇ、あなた。何故こうなってしまったの……? 私、こういう事する為に『白い巫女』になった訳じゃないのに……こんな展開になっちゃうなんて」



【悪いな、キョウコ……この次元の渦は『黒い巫女』の暴走を止めて魔力の供給を喰い止めれば何とかなるって思ってたんだがな。すでに、オレ達の予想の範疇を……】



 私はフルフルと首を振り、弱々しく笑ったの。このままじゃ、一体どちらが病人なんだか分からない位ね。この時、それくらい2人とも満身創痍だったのよ。


「それ以上は喋っちゃダメよ、傷に障るわよ……治癒魔法かけてあげるからあなたの神力も頂戴ね……でも、もうこの手段しか方法は無かったの?」


 私の肩には能力『テイム』で従魔にした火の精霊を宿すフェアリーバードのニックが停まっており、その鳥にはピンクの体躯に燃える様に赤い羽根、そして脚にはカギ爪みたいなものが見えるの。


 嘴はワシみたいに尖端がちょこっとひん曲がり、尻尾は“赤い垂れ桜”みたいに幅広に綺麗な放物線を描いてるの。見た目をひと言でいうと、『炎の様に真っ赤に燃えるゴクラクチョウ』だと分かり易いかなっ?


 私の様な『獣着師(キュルミー)』の人達は、火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊の何れかを宿すモンスターを“テイム形態”のまま自分の従魔にする事が出来るの。


 でも従魔に出来る、宿す精霊の系統は1種類のみよ。その代わり、精霊を宿しておらず“テイム形態”にしかならないモンスターなら……何匹でもテイム出来るわ。


 そして、キュルミーの人達が魔法を使う時は自分のテイムモンスターに自分の魔力を分け与え、自分の代わりに魔法を発動して貰うのが習わしなの。











「お願い、シュージンの傷を癒してあげて」


 ニックは、私から貰った魔力で治癒魔法を発動させたの。



【シュージン、この紅い羽根に触れてー】



 ニックのスキル“癒しの羽根”で、神力を回復して貰うシュージン。ねぇ、シュージン……これから何をしようと云うの?

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