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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
閑章2.母の過去【京子視点】
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第011縫.天界へ続く険しき道

 遂に、私とシュージンは「未来の地上界」にて感動の再会を果たす事が出来たの!


 でもその時、既にシュージンの姿は神々しい4枚の羽根を生やした『大天使』そのものだったの。そう、すでに“覚醒”し切ってたのよ!


 それでも彼の顔は、夢にも忘れるハズが無いわ! だって、私が一目惚れした人間の頃の「秀人」そのままなんだもの。その笑顔も、その面影すらも……


 中でも私を一番ビックリさせたのは、その「瞳」だったわ!











 あの日以来私は、“シュージンを『網膜剥離』にしたのは自分なんだ”って……勘違いな想いを抱いたまま、ずっと刻が停まってて。



 シュージンが“視力”を無くしたのは『網膜剥離』のせいじゃないのに。シュージンの『大天使』の血の所為なのに。



 シュージンに懺悔(ざんげ)したいという想いだけで、ずっと行方を探し続けていたのよね。しかも……「現在の地上界」ばかり。




……ガーン。



 後にシュージンから、その時の私は実に清々しい程“残念な”女の子っぷりだったって聞いたわ。


 ただ、再び私と再会した時。シュージンの瞳はもう『人間』としての“視力”を完全に失ってたけど……その代わり、『大天使』としての“神眼”で()る事が出来る様になってたわ。


「ちょっと違う形だけど……再びちゃんと見える様に……シュージン!」


 私の目には、思わずス……ッとひと筋の涙が。その事だけが、ずっと心残りだったのね。でも、無くしたのは視力だけじゃ無かったのよ。











 その後も色々と話を聞く内に、シュージンも目的が自分と一緒である事を知ったわ。それは、共に残りの7人の王達を探して世界の終焉を齎す『黒い巫女』を追いかける事!


 私とシュージンは今後の行動を共にする覚悟を決め、お互いニッコリと微笑み合ったの。


 私とシュージンは今後、「未来の地上界」へ闘いの場を移す事にしたの。『キュルミー大戦』と云う、大きな戦乱の始まりよ!




 私の様にきぐるみを身に纏い、仲間にしたテイムモンスターを駆使して闘うジョブを『獣着師(キュルミー)』って呼ぶの。


 『黒い巫女』を倒す為に『白い巫女』がキュルミー達と手を取り合い立ち上がったので、この戦乱をそう呼ぶ様になったのよ。




 シュージンと『白い巫女』に“覚醒”した私は、最終的に『黒い巫女』を逃げも隠れも出来ない場所へ追い込む事に成功したわ。


 ただし、その場所は大天使族、女神族、魔神族など限られた3大神族しか踏み入れる事が赦されない『天界』だったの!


 シュージンは『大天使』なので、そこへ行けるけど……このままでは私は『人間』なので、『天界』に入る事は出来無いわ。



【どうしようか、キョウコ……】



 脳内に直接響くテレパシー、それは人間の声を失ったシュージンが……大天使になって、新たに会得した意思伝達方法なの。



「やっと、ここまで来れたのに……シュージン、どうしたら良いの?」



 結局、この“ひとつ”しか『天界』に入る手段は残されて無かったわ。そう、たったひとつ……『シュージンと私がひとつに結ばれる事』だけだったのよ。


 そして、私のお腹の中に宿った“愛の結晶”こそ、(のち)の朱璃……お腹に身籠った“神子”の力を借りれば、私も『天界』へ入る事が出来るからね。



 崇高なる受肉儀式、妊娠が可能な()()にのみ赦された、正に神聖な……禁断の「奥の手」なの。











 そうして3ヶ月後、私が神子を身籠った事を確認してから7人の王達の力を借りて『天界』へ侵入し、『黒い巫女』と最後の激戦を繰り広げたのよね。


 激戦の最中、私が闘っている間もずっとニックに必死でお腹の中の“神子”を守り抜いて貰いながら……


 そして遂に、激戦の末『黒き巫女』を討ち滅ぼす事が出来たのよ!



────────────────






 そう、キュルミーってね……きぐるみを介して、共に闘う仲間達を()()()()の。異世界に行っても、貴女はひとりぼっちじゃ無いのよ、朱璃……











 フフッ、娘は聡明な子よね。話の本質に、もう気付いたみたいよ! たったこれだけ話を聞いただけで、娘の口から叫び声が出て来たもの。


「わ、ワタシのお父さん……? お父さんはワタシが物心つく前に“天に召された”ってお母さん言ってましたよね……? それなのに、今頃お父さんが生きてるのよって言われても……」


 分かるわ、そう叫ぶ娘の背中に……今まで決して満たされる事の無かった、父への恋慕を。ニックも感じたでしょ?



【つまりコレってー、ファザコンってヤツひゃなー?】



 ニックはそうツッコミを入れながら、さっきからずっとコップに注いだ冷たい水をチュパチュパ。



 まぁ、『天界』に居るから“天に召された”って言い方してもあながち間違いじゃないのよねぇ……



【うぃ~、この世はオトンで回っれぇ~! ケケケケケッ、ひっく♪】



 ……えっ、ニックが酔っ払っちゃったの? 私は慌ててコップを持ち上げ、臭いを嗅いでみたの。


「まぁ、大変っ! これ、水じゃなくて“お酢”だったわ!」


 これには、娘も思わず驚愕の表情! 何と、ニックに酢を飲ませると、酔っ払うみたいね!


「そーゆー間違いって、普通しますかねぇ、お母さん……」



zzz……zzz……



 コテンと横になりスピぃ……と寝始めたニックを横目に、娘は改めて私に思いの丈をぶつけたの。











「それで、その後……お父さんはどうなったんですか? お父さんは……生きてるんですか?」



 やっぱり娘も、お父さんの“その後”はどうしても気になるわよね……でも、それを聞いたらココロが悲鳴を上げそうな位辛くなっちゃうかも。



「引き返せなくなるかも知れないけど良いの、朱璃……?」

【う・ん・ち・く♡】──────



《父に『恋慕』する理由》


 確かに、普通の娘さんなら父親に恋愛感情を持つなんて考えられません。でも、朱璃の家はちょっと特殊なんです。



・生まれつき朱璃の傍には父親が居らず、母子家庭で育った。

・父親が大天使という地球とは異なる世界の存在で有り、人間では無い。



 たぶん、コレだけだったらまだ父親に恋愛感情は持たないと思います。しかし、最後のひとつで状況が一気に変わります!



・朱璃自身も実は女神という地球では無い世界の存在だ、という事を知ってしまった。



 この3つ目で、朱璃は普通の人間なら決してあり得ない父親の境遇を自分に置き換える事が出来てしまうんです!


 そして、そんな父親の境遇を自分に置き換えてしまった時……朱璃のココロに宿ったのは父親への憧れから、よりによって『恋愛感情』へ。


 普通の家庭で普通に暮らしている際には、決して抱く事の無い感情を表現したのが『恋慕』だったと理解して下さいませ。



────────────────

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