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きぐるみ羽織る、間だけ……  作者: 上村朱璃
第1章.母 Ⅰ
1/44

第001縫.迷子がやって来た!

────────────────


【あらすじ】


 事の始まりは、S市にふらり迷子が舞い込んだ事から始まって。


 S市には中央を占める巨大な台地が有り、そこの一角に有る掘っ立て小屋に母と娘が慎ましくも平和に暮らしていて。



【舞台】 日本


────────────────

挿絵(By みてみん)

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【仲睦まじい、友達みたいな母娘】

画:うさ尾 様

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 或る日、違う別の世界から迷子が舞い込んで来ました。





 場所は日本の海沿いにある某県、S市。その遥か上空……自ら眩い光を発して身を翻しながら何かひとつ、夜空を飛んでいる発光体が有ります!



シュルンッ……!!!

   シュ……シュゴゴゴ……ッ!!!



 流れ星の様に上空の高い所を飛び、大気の摩擦の為なのか風切り音がスゴいです! そして、ゆっくりと大きく旋回しながら螺旋を描いてます!



 ワタシは発光体を、高校の校舎3階窓から見上げます。夕空を旋回する発光体の下に見えてるのは、S市のど真ん中をほぼ占拠する巨大な競り立つ台地。


 立地的にとても目立ってるので、上空旋回中のどの角度から見てもこの巨大な台地が目に飛び込んで来るんです。











 発光体の光と光の合間から右上の方向に、翼らしきものが出て来ます! まるで、燃え盛る紅い炎を身に纏ってるみたいに見えるんです!



ブァサッ……!!!

   バシュッ……ブシューッ!!!



 この燃える翼が、大気の中の結晶分を超高温で蒸発させながら旋回してるんです! きっと、地上からは流れ星に見えてるに違い有りません!



 S市の基幹道路として一番車の往き来が多い県道を中心に、たくさんの様々な家がそれを取り巻く様に並ぶという町の夜景が広がって。そして、それを挟んですぐ側に海を望んでる地形になってます。



「あかりっ、バイバーイ♪」


 ワタシは高校の帰り道、二又路で友達と別れた後……()()が描く軌道を眼で必死に追い掛けます。











 だんだん、発光体が旋回する時の高度が低くなって来ます! 低くなって来たから分かるのですが、この発光体はさほど大きく無さそうです!



シュパァッ……!!!

   キラ……キラキラキラ……!!!



 発光体の光と光の合間から左下の方向に、尾翼が出てます! 燃え盛る紅い炎から伸びる桃色の垂れ桜……とても幻想的です!



 今居る場所から右を向いて海に目を移すと、沖まで広がる漆黒の海が広がります。イカ釣り漁船が発する集魚灯の赤い光が、チカッチカッと所々に見えてます。



タンタンタン……タンタンタン……



 そして今度は左を向くと、その県道から少し逸れて山肌に沿って台地へと続くなだらかな上り坂が在ります。横目には段々畑が見え、所どころ車のヘッドライトの光が反射してます。



 発光体は黄色に紅色に桃色に、様々な色を身に纏いながら……一陣の風の様に、町の中を疾走して行きます!



シュルンッ……!!!

   スルン……シュシュシュ……!!!



 ここですっ……車のヘッドライトの群れに混じって。ワタシ、上村朱璃は放課後の部活動が終わり、自転車を押して家路に向かってるんです!


 ワタシの目の前には、眼下に沖の向こうまで漆黒の海が広がってます。



 町の中を疾走してた発光体は、最後にワタシと正面からカチ合います!


 炎の様に燃える翼、桃色に垂れ下がる尾翼に続いて、光と光の間から見える嘴で()()の構えをっ……!!!


 ……ヤバいっ! 咄嗟(とっさ)にワタシは両耳を手で塞ぎ、目を瞑ります! 自転車は、ガシャンと横倒しになります!


 しかし、慣性の法則ですぐには止まれる訳も無く……



「く、く~ぇ~~……」



……???



 発光体はドップラー効果で遠ざかって行く弱々しい悲鳴だけを残して、ワタシの目の前をそのまま素通りし……そのまま、フッと消えてしまいました。


 ワタシは思わず、某お笑い番組ばりにすてーん!とベタな程前のめりにスベりそうになったんです。


「何なんですか、今のは一体……?」











ガシャンっ……

   ギコ……ギコ……



 ワタシが再び自転車を起こしてその坂を上りきると、眼前には台地が広がってます。そして台地の上には点在してる集落と、左手に電車の駅が見えます。


 ワタシは一旦足を止め、そのまま目線を上に向けました。すると、澄んだ夜空に天の川が映えます。


「えーとぉ……、あれが織姫さまで……あれが彦星さま……」


 人指し指を上に向けて琴座のベガ(乙姫星)、鷲座のアルタイル(  彦星  )、白鳥座のデネブとゆっくり順番になぞります。『夏の大3角形』の出来上がりです! ワタシは、満足げにニコッと微笑みました。



 あっ……向こうから一両編成の路面電車、昭和を彷彿とさせる「チンチン電車」が駅に入って行くのが見えました。


 しかし、この辺りで夜景と言えばこの電車から漏れる光のみ。この台地の上の集落には街灯はおろか、コンビニエンスストアなどの商業施設すら点在してません。その為、夜は真っ暗闇と化すんです。


「この道……街灯が無くて真っ暗闇です」


 ワタシはいつもここに差し掛かると、身の危険を感じて押してた自転車に跨り足早に漕いで家路を急ぐんです。この集落は林業で生計を立ててる様で、集落を見渡すと丸太小屋が目立ちます。


 ワタシは、そんな集落の外れにある……とある1件の掘っ立て小屋に入ります。この掘っ立て小屋に、母と2人でひっそりと暮らしてるんです。


「ふぅ、あらかた縫い終わったわ。後は、仕上げにこの中に“魂”を籠めるだけね……」


 母はそう言って、小型のアタッシュケースの中に縫い終わった『それ』を詰め込みます。


 そして、目を閉じ“何か”を念じて厳重にロックをかけたんです。その両手からは、何やら青白くて淡い光が漏れ出ており……











 どうやら、普通のアタッシュケースでは無さそうですね。“魂”を籠めるとか、何か物騒なワードも飛び出しましたし……



 このアタッシュケースには、どんな重要なモノが入ってるんでしょうか?

【う・ん・ち・く♡】─────



《S市について》


 S市は日本某県に在り、海沿いにある都市です。


 S市の基幹道路として、一番車の往き来が多い県道を中心に沢山の様々な家がそれを取り巻く様に並ぶ町の全景が広がります。そして県道は左に眺めが広がる海に沿い、並んで走ります。



 県道は途中で二股に分かれており、一方はそのまま海沿いに、そしてもう一方は台地を登ります。


 丁度その付け根には、S市の『教育特化地域』が広がります。この地域にある学校は、市立の中学校である「海皇中学」と隣接してすぐ裏に市立高校である、現在朱璃が通う「海皇高校」。


 教育に特化する為の“テストケース”として建てられた、所謂『中高一貫校』の進学校らしいです。この海皇高校から、東大生を輩出しているとかいないとか……



 後に、スピンオフ作品『もんすたぁチルドレン』にて判明するのですが……このS市には海沿いにハート型の湖ピンクラグーンが存在し、恋のパワースポットとして有名なんです。


 そのピンクラグーンの名前は、「心桃湖」……つまり、S市の正式名称は『心桃市』なんです♡



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― 新着の感想 ―
[一言] 景色が目に浮かびそうな作風です。それに語り口は何か絵本を読んでいそうな気分にしてくれる作品ですね。どんな冒険が待っているのか、続きも楽しみに読ませていただきます。
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