表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/63

理由

 武器に加護を与える為、私はいつもの部屋に入った。そこにはたくさんの武器とユーグ様がいた。


「きのうは叔父がすまないことをした」


 私が朝の挨拶をするより前に、ユーグ様はそう言って頭を下げる。私は二、三度瞬きをした。


「もしかして、モルガン様が来られたことですか」

「急に押しかけて驚いただろう。僕がうっかり口を滑らしてしまったんだ」

「ユーグ様はどこで婚約のことを?」

「ラウルに聞いた」


 そう言えば、王太子のラウル様とユーグ様は幼馴染だった。私はラウル様とほとんど話したことがない。でもユーグ様がよく話題に出すから、何となくの人となりを知っている。勤勉で、思慮深く、厳しさも持っていて、多分時々ユーグ様に振り回されている。


「あの叔父はきっと、大きな声で婚約のことを言ったんじゃないか」


 私は、勢いよくドアを開けて大声を上げるモルガン様を思い出した。自然と苦笑いしてしまう。


「やっぱり」

「でも、別に隠してはいませんから。建国祭で発表しますし、神殿の人たちは何となく気付いています」


 私はテーブルの前まで行き、パチンと手を鳴らす。


「さあ、お仕事を始めましょう。剣を並べてくださいますか。私はどんどん加護を与えます」

「はいはい、分かりました。聖女様の仰せのままに」


 腕まくりをしてやる気を見せると、ユーグ様は笑いながら剣を並べた。

 テーブルの上にはキラキラと輝く装飾の剣が置かれている。柄も鞘も金で縁取られ、宝石が散りばめられている。手をかざして祈ると、温かい風が吹いた。


「いつもよりキラキラしていませんか」

「建国祭に使う物だからね。いつもの討伐用より装飾が多い」

「なるほど」

「でもこれは王族の護衛騎士くらいで、警備兵なんかはいつもと同じだよ」


 ユーグ様が指差す方を見ると、よく見る武器が箱いっぱいに入っている。そして、そんな箱がいっぱいある。


「多くないですか」

「多いね。建国祭だから」

「去年はもう少し少なかったと思います」

「今年は、ほら、婚約発表があるから。いつもより盛大だし、警備が厳重なんだ」


 去年の建国祭も盛大だった。こんなに大きなお祭りがあるのかと、びっくりした。屋台がたくさん出て、通りは人で埋め尽くされていた。それよりも盛大なのか。


「婚約発表の前に聖女のお披露目もあるだろう。難しいことはないと思うけど、大丈夫?」

「言われた場所まで歩いて、笑って手を振れば良いって言われています」

「ああ、そうだね。王宮の一部を解放して式典をするから、銀の宮殿のバルコニーだよ。あそこなら遠くからでもよく見える」


 私はバルコニーに立って手を振る自分を想像した。想像するだけで震えてくる。


「リゼット。手が止まっているけど、大丈夫?」

「あっ、はい、すみません」


 テーブルに新しく並べられた剣に手をかざす。手から光がこぼれた。ユーグ様は加護を与えた武器を片付け、また箱から武器を出して並べる。


「リゼットはさ、目立つの得意じゃないよね。本当に大丈夫?」

「でも聖女ですから。私が聖女です!って見てもらった方が、皆さんきっと安心しますよね」

「うん、お披露目は必要だと思う。でもそっちじゃなくて、婚約の方。注目を集めることも、人前に出る機会も格段に増える」

「これから慣れていきます」

「そんなにアドルフと婚約したかった?」


 私は弾かれたように顔を上げた。ユーグ様が不思議そうに私を見ている。ただただ疑問に思っている、と言うふうな顔をしていた。


「したい、と言うか、した方が良いと思ったんです。陛下や王妃様に勧められて、ああ本当にそうだなって。私は私が事件や争いの元になるのが嫌です」

「そっか。リゼットらしいな」

「それに痛いのも怖いのも嫌なので、守ってもらえるなら大歓迎です」

「あはは、確かに王家なら一番良い方法で守ってくれる」


 ユーグ様は部屋の奥から新しい箱を持って来た。床に置くとガチャリと武器が音を立てる。


「なぜアドルフは婚約したんだろう」

「えっ」


 ユーグ様はさっきより、もっと不思議そうな顔をしている。


「好かれていた?」

「いいえ、むしろ嫌われていると思っていました」

「そうか」


 ユーグ様はしばらく考え込んで、ラウルに聞いてみるか、とつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ