第五話
ナイフを構えてカッコつけたはいいが、魚をこの状態から捌くのは初めてだ、
「けど、たぶん大丈夫、魚を捌く動画は何回か見たことあるから」
動画投稿サイトに上がっている気まぐれな料理人を思い出す。
「とりあえず、覚えている通りにやってみよう」
「けど、バスとナマズか…火が無いから生で食べるしか、うーん、バスかな」
ブルーバスを手に取り捌きやすい向きに向ける
「まずは、締めるところからだよな」
左手でナイフをアイスピックのように持ち魚の頭に当て、右手を上から当て一気に押す
「ふんっ」
ドスッという音と共に刃が魚にめり込み、ビチッと一回魚が跳ねてその後動 きが止まる、どうやら無事に締めることができたようだ
「ふうっ、次は血抜きかな」
確か、エラの中を切るんだっけな
エラの隙間にナイフを入れ傷をつける
「よし、血が出てきた」
そしたら水につけるんだよな
ブルーバスの尻尾を持ち川の水につける、血が出て川に流れていく、すぐに血が止まる、どうやら血は抜けたようだ
「次は鱗取りだ」
ナイフの刃を縦にして左右に動かす、簡単にポロポロと取れる、取れた青い鱗を観察すると綺麗な光沢を放っている
「よし、あらかた取れたな、次はエラと内臓を取って三枚おろしかな」
腹を開いて内臓を取る、意外と匂いはしないようだ
「ちょっと気になるけど、何が入ってるか分からないから食べるのはやめよう」
しかし、好奇心を抑えられず内臓の観察をする、特に変わったところは無いように思えたが、内臓を開くと中から小指の爪ぐらいの青い石が出てきた
「結構綺麗な石だな」
もしかしたら、売ったら金になるかもしれないな
「一応取っておくか」
青い石をポッケに入れ作業を再開する
「三枚おろしは確か、頭の後ろに切り込みを入れて…」
記憶を頼りに捌いていく
「意外と覚えているもんだな」
おろした身に付いている骨を切り落とし皮を剥ぐ
「よし、コレで完成だ」
なんとか柵の形にすることができたが思ったより食べる部分が少ない
「これだけか…だけど食べれるだけありがたいと思わなきゃ」
「醤油も無いし、刺身にする必要無いからこのままかぶりつこう」
恐る恐る一口食べて、咀嚼する
「あ、意外とまずく無い」
クセや臭みがなくすごく食べやすい、だけど味も薄く醤油が欲しくなる
「まずくはないけど美味しくはないな」
それでも何時間ぶりの食事あっという間に平らげてしまった
腹は一杯にはならなかったが、それでも食事ができたことに安心し、一息つく
「あーあ、火が使えていれば焼き魚とかできたんだけどなぁ」
目の前で指を振りながらぼやく
「火を、とか言ってたらつかないかなぁ」
すると、勇悟の指先に小さな火が灯った
「え?」