第三三話 刃物女の対処法会議
孝と信光は二人で一緒に刃物女から距離を取るため教室から遠い、女子トイレに来ていた。
野郎が女子トイレに入るのもどうかと思ったが、けむくじゃらにも襲われないようにするためにはこれしかなかったのである。
「タカっ……はぁ、はぁ、どうすんだ? こっから」
「はぁ? わかってるわきゃねえだろっ……はぁ、はぁ、ただ、でけぇ声は出すなよ。大抵下手に騒ぐと怪異も寄ってくる」
孝は肩で息をしながら、呼吸を整えている。
大抵騒いだら敵や化け物が寄ってくるのは定番だしな。
「はぁ、はぁ……了解っ、んで? どうなんだ? お前のホラー知識の貯蔵は?」
「この学校の怪異は俺の知っている範囲の怪異じゃねえ。覚えも見たこともない奴ばっかだ……刃物女に関してだって、最近の都市伝説だしな」
「マジ? お前の知ってる刃物女の特徴は?」
「死んだ女子高生、首から垂れてる縄と刃物を持った少女、学生を見ると襲い掛かって殺そうとしてきます」
「まんまじゃあん……こわぁ」
俺の知っているホラー作品の情報の中で、繰ヶ咲高校の怪異は最近の都市伝説が主だ。
俺が風の噂や知人から聞いたことのある怪異もいくつかはある。
一般的な怪異知識も基本はホラー小説とホラー映画などしかない。
……困ったことだ。
「はぁ? じゃあ、この学校、最近の怪異ばっかの学校ってことか!?」
「おい馬鹿、大声を出すなっ!!」
孝は信光の口を手で塞ぐ。
心臓が激しく鳴り、緊張感の空間に二人で黙り込む。
数分してから孝と信光は、小さく息を吐いた。
「悪い、タカ……でも、今頼りなのはお前だけだわ、頼む」
「情報が足りねえ、お前も何か知ってることねえか?」
孝と信光は小声で情報整理を行うことにした。
「まず、今回いたのはあの毛むくじゃらは知らないんだよな?」
「ああ、刃物女も知らない。俺ホラー得意じゃないし」
「懐刀はなんて言ってた?」
「……お前、こういう時にふざけちゃう?」
「気を重くならないようにさせてる幽霊部員配慮だろうが」
「ちゃんと部活動して!? 俺らの語り部屋部はあんまり多い部活じゃねえんだぞっ!?」
「るっせぇわ、今は命のやり取りしてんだわ。部活どうこう言ってる前に脱出することから考えようや」
「……まぁ、一理あるわな。で、俺の知ってる刃物女の話、していい?」
「頼む」
「えっと、まず刃物女はいじめられっ子の女の子が怪異化? したって奴で、自分をいじめた女子男子に似た人間は死ぬまで追いかけまわして最終的に絞首するんだって」
「……それ俺も知ってるが?」
「タカにホラー知識バトルで勝てる気がしねえわ……ちぇー、知らねえことだと思ったのによぉ」
「……そうか」
重い溜息を吐く孝は頭を軽く掻く。
……ループできてやり直せる俺としては、なんでもかんでも死ぬ覚悟なんざできてない。
というか、もしかしたらノブが死ぬ姿を見る羽目に明日を超すことになるのも避けたい。
ってなると、俺ができることは……なんとかノブをこの学校から脱出させることだな。
もちろん、できるなら俺も脱出、なんだが……残りの食料は菓子程度。
それにバックは刃物女のいた教室にある……壊されたが、アルバイトで新しく買えばいい。
「……あ、そういえば」
「なんだ?」
「ああ、聞いたことがあるんだけどさ。とある風の噂で、綺麗な女の子が、いじめられっ子たちにいじめらて最終的に孤立して、学校の教室で首釣って死んでたって話」
「……それがなんだよ?」
「今回の刃物女と、何か関係はねぇ?」
「……は? なんだよそれ」
「いや、今思い出したからさ。どうよ?」
孝は顎に手を当て数分試行してから、口を開いた。
「……刃物女の種類は一パターンだけか?」
「え?」
「口裂け女って知ってるか?」
「え? あぁ、口元が横に割けてる怖い女な?」
「うんうん、あれ元々は1979年に岐阜日日新聞の地元ネタなんだわ、それが記者たちの尾ひれがついて広まったって話なわけだけど……尾ひれがついて以降からの口裂け女の種類、なんぼあるか知ってるか?」
「は? ないんじゃねえの? 普通」
「これが東京とか他の所でも服に関する見た目とか、色々と種類が多くてな。刃物女の都市伝説も最近だから、たぶんあの女と同じ見た目っていうタイプの奴じゃねえと思う」
「……えぇー?」
「とにかく、今はこの学校に情報があるかもしれねえ、調べてみよう」
「まぁ、そうするかぁ」
孝たちは議論を広げ、もっと刃物女の情報はないか、周囲を捜索することとなった。




