第三〇話 毛むくじゃらの新怪異の謎
孝と信光は一緒に学校の探索をするためにもお互いの情報交換を深めることにした。
「もしかしてあのもじゃもじゃ、トイレに関連したり、化学室に関係のある怪異なんじゃね?」
ノブはひらめいたように言うのに対し、前回のループの時に似た返しを返してくるのに俺の悪友が地頭が悪くないところに関心する。今回のループではノブには夢の話をしてないとはいえ、すぐにその推測ができる程度には察しがいいで知られている悪友らしさを感じた。
同時に大抵の怪異で襲わないことの裏返しは、見失った以外ならば関連した場所には来れない、という裏もとれる。
「……まあ、そう推測できるわな」
「だろ?」
「トイレに関連するならあの毛は髪の毛か、それとも陰毛か、って当たりか」
「おう、けど化学室に関連するとしたら理由が浮かぶか?」
「わからん……そこについてはまだまだ情報不足だな」
……俺の悪友がそこまで馬鹿じゃないのは本当にありがたいわ。
「孝がそういうってことは、お前が知ってる怪異の分類にはいねーの?」
「そうです」
「マジー!? じゃあ、新種の怪異ってことを想定しなくちゃだろー」
「大きな声出すなよ、他の怪異が来る可能性もあるだろうが」
「ご、ごめん」
少なくとも、刃物女の出現条件がわかっていないんだ。
アイツが出てきたら対応策は念のために持ってきている刃物しか対処法がない。
ノブはさっきよりも声のトーンを控える。
「ん……少なくとも古い怪異ではないのは確かだ。まぁ学校に関連があるなら、先生か生徒のどっちかが怪異になってって話にたぶん落ち着くわ。で、俺の予想は女子生徒」
「なんで?」
「女子は生理あるだろ、その発想なら血の匂いとか汚物っぽい理由も何となくだけど納得できる」
「おー、流石ホラー好き。引き出し多いな」
「……伊達にホラー愛好家じゃねえわ」
……元々はお前がひらめいたことだぞ、と出そうになった言葉を飲み込む。
だが前回のループでそれならばと思って納得したのもあったからこそ、つい口に出てしまった。
少し会話をしたりしながら落ち着いてきたのか悪友の表情は幾分か柔らかい。
俺が知らないだけで、とも思ったが、新種の怪異ならば納得はしやすい。けむくじゃらな怪異なんて学生である俺が知り得ることは最初のループの時に考えつくしたのだから。
だからこそ、新種の怪異という認識でいいとはいえ……女子生徒の怪異と考えたとしても、けむくじゃらなあの怪異がなぜ複数の足があるのかが気になる。
……一体、どんなバックボーンがある怪異なのか。
「で、悪友。俺、あの怪異の噂とか知らないか?」
「え? 何だよ急に」
「噂だよ、噂。それだけでも対処法が違うだろ」
「噂だ―? んー……いじめられっ子の肖子さん、とか?」
「なんだそれ」
いじめられっ子の肖子さん、か。聞いたことないな。
「お前、最近語部屋部に来てねえから知らねえはずだわ」
「……創作か?」
「いんや? 慎也が知り合いから聞いた話なんだってよ、あの時盛り上がったっつーか。しのぶちゃんとか何人かは気分悪そうにしてたなー」
「どういう話なんだ?」
「昔肖子さんって高校生の女子生徒がいて、小さい頃からいじめられてたんだと。確か、生理で貧血になりやすかったりしたー、とかで」
「死因はどうだったんだ?」
「確かぁ……トイレで尿と血塗れで死んでたとかで、まんま溺死だったらしいぜ? ……悲惨な死に方だよな。俺なら絶対いやだわ」
……最悪な死に様だな。
しのぶたちが聞いていたのなら、相当不快だったろう。
「しのぶたちに聞かせるような話題じゃねえだろ、気をつけろよ」
「うん、気を付けるわ。まあ、慎也にデリカシーねえぞって言ってその話中断したから、詳しくはわからねえわ、慎也が言うには怪談話なのにーなんて言ってたけどな」
「怪談……?」
「とりあえずその話は、この学校から脱出出来たら聞こうぜ」
「……そうだな」
「でも、この学校なんなんだろうな。見たことない場所だし」
「繰々咲学校、だと」
「くりがさき……? 聞いたことない学校だな」
「そうだ、待てノブ! 机の下に隠れろ!!」
「え? お、おう!!」
俺は廊下を見ると毛むくじゃらの怪異がやってくるのが目に入る。
急いで孝は信光に机の下に隠れるように指示した。
孝と信光は二人で机の下に隠れる。
けむくじゃら怪異は廊下の向こう側へと去っていった。
「……行ったみたい、だよな」
「だな」
孝は信光に相槌を打ち、完全に毛むくじゃらがいなくなったのを確認してから机から出る。
「じゃあ、情報交換はここまでにして繰々咲学校の探索するか」
「お、おうっ」
孝と信光は情報交換を終了し、繰々咲学校の捜索を本格的に開始することにした。




