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第二五話 何度目かの繰々咲学校へ

 孝は家に帰宅するとカバンに詰められるだけの道具と少々の食料を鞄に詰める。

 さくらは今回見染神社に来ないはずだから、そこの心配をしなくてもいい。

 今回は実験も兼ねてだ。

 語部屋部のみんなに携帯のメールで受け取った情報は、想像つくような内容ばかりだった。


「……急がねえと」


 もしノブが失踪したのが俺が未来を変えたからならば。

 語部屋部のみんなにはノブのことだけは伝えておくのもだめじゃないだろう。もしノブが繰々咲学校にいるのなら、その繋がりで部活のみんなに情報交換するのも悪くないかもしれない。

 ……って、何考えてんだ。これは憶測じゃねえか。推測でも何でもない。

 孝はかぶりを振り、学校の鞄ではなくリュックを背負う。


「……無事でいろよ、ノブ」


 月夜に照らされた孝は小さく、同時に力強く囁いた。



 ♀ ♂



 蝉時雨の鳴き声が鬱陶しく感じながらも、履き慣れたスニーカーで神社の階段を上がりきった。

 長い階段に息を整えるために深呼吸をしてから、孝は呟く。


「……いるんだろ? 顔無狐」


 草木が揺れる中、落ちる一枚の草が裏返ると彼は陽炎のように姿を晒す。

 白い狐のお面からはみ出る、飄々とした笑みを見せる口角に孝はイラつきを覚える。


「やぁ、こんばんは。孝君」

「……ノブは繰々咲にいるのか」

「それは、君が学校にいけばいいだけじゃないのかな」

「答えろ」


 孝は凄味のある鋭い目つきで顔無狐を睨む。

 けらけらと、おどけて笑う顔無狐の内面が読めない。

 本当に、怪異という類の輩はホラー小説の中でも信用できない存在だ。

 ゲームでだとしても、小さな油断であっという間に親友が殺されている不安がぬぐい切れない。

 少なくともこの怪異は悪友の存在を明言するタイプではないとわかっていてあえて口にする。


「……駄目だよ、君の目で大切な人を見つけなくちゃ」

「いうと思った」

「おや、君は察しが悪くないんだね。そういう人間の方が物語の中では死にやすいのは、なぜなんだろうね」

「は、知らねえよ……もう、俺は2、3回程度は死んでんだ」

「あはは、まだそのくらいだろう? 君は絶対に耐えれなくなるさ。自分が死ぬ間隔を」

「何を、」


 一陣の風が靡き、孝は両腕で体をかばう。

 目を開け、再度確認すればそこはもう、さくらが何度も死んだ死体の記憶が蘇る、廃墟の学校だった。


「……ノブ、無事でいろよ」


 もしかしたら、死んでいるかもしれないという考えも捨てきれない。

 美談にはなってしまうが、悪友が無事でいることを強く、強く孝は願うのだった。




 孝は改めて悪友の捜索を再開した。

 ノブがいそうな場所なんて廃校なんて限られているが、予想できるのであれば……もしや。

 という結論に至った孝は、化学室を探すことにした。

 俺は廊下を歩いて確認しながら進むと、道の端に化学室を発見した。

 扉を横から開け、再度閉めてからもしかしたらいるかもしれない悪友を呼んだ。


「……ノブ、いるか?」


 ギィ、ギィと軋む床の下に小さく息を漏らす声を聞こえた。

 机の下から、金髪の悪友が恐る恐る現れる。


「タカ……か? 偽物じゃ、ないよな?」

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