第二四話 我らが語り部屋部へ
放課後の時刻になり、孝は部室へと向かった。
部室用に用意された部屋の前に孝は立つ。
「……こういう時は、素直に情報収集だよな」
最近全然出てなかったのもあるから、みんなからどんな反応をされるか、予想もできん。
蔦屋は全力で怒るだろう。
そして、しのぶはからかい、茜ちゃんは途方もなく呆れるのが目に見えている。
各々の反応を頭の中で反芻するよりも今は、悪友のことを知っている可能性がある彼らに質問するため、孝は部室の扉を開けた。
「たのもーお前ら―」
「あ、孝だ」
「的場先輩!? このまま幽霊部員入りするのかと思ってましたよ!?」
「よー、しのぶー、蔦屋ー」
目に飛び込んできたのは、三人でトランプをしている三人の男女が目に入る。
反応したのは二人。亜麻色の髪をしたアンニュイな後輩少女は皇しのぶ。
金髪の三白眼で背が少し小さい後輩少年は蔦屋慎也だ。
このコンビはいつも部活にいる定番のメンバーだ。
「儂を忘れてるじゃろ!? 孝!!」
「おー、茜ちゃーん。お久ー」
「儂は茜ヶ久保じゃ馬鹿タレ!! わざとじゃろ!?」
怒鳴るガタイがいい方言男は、茜ケ久保道宗だ。
トランプをしていたカードを突き立てて、ジョーカーが握られているのが見えてしまっている。
……あー、この後絶対茜ちゃん負けるわ。
だがあえて突っ込みを入れず、茜ちゃんが負けた姿を見たいので黙っておく。
両親が転勤族らしく、転校をよくしていたせいか色々な方言が混じってしまったらしいが。
転校ばっかりしてて色んな方言がごっちゃになる者なのだろうか……知らんが。
「お前ら、ノブは見たか?」
「ノブ先輩ですか? 昨日は部活に来ませんでしたよ。それがどうかしたんですか?」
「……シンヤ、情報把握ダメだね。そういうことじゃないでしょ」
「は? どういう意味ですか?」
「一番鈍いのは蔦屋書店君で決定なー」
「聞いただけでしょ!?」
「まーまー……ノブが失踪した、って話じゃろ? 孝」
「そっ」
……察しが悪い蔦屋よりも理解力のある茜ちゃんの察知力はありがたい。
「え!? あのノブ先輩が!? 的場先輩よりも十分素行いいじゃないですか!?」
「……蔦屋ーお前後で俺の特製怪談話聞かせてやってもいいんだぞ?」
「ご、後生です! ホラーだけは!!」
全力で土下座する後輩を下に見る自分はどことない愉悦を感じつつも、本当に鈍いなと蔦屋に呆れた。俺はこういう茶々を入れたくて語り部屋部の部活に来たわけじゃねえんだよ。
必要であるのなら、見染神社に行かなくちゃいけないかもしれねえんだから。
「……なら、ちゃんとノブ先輩の話をすればされないってことでALLOKなの? タカシ」
「そういうことになるな」
「璃々栖先生に話さなくていいんですか?」
「エロマン先生は俺らの顧問だろ。情報は行ってるはずだ」
「あ、そっか」
「……つまり、少年探偵団の出番、というところかの?」
「まー……そうじゃね」
溜を入れて、人差し指を立てる茜ちゃんに適当に返した。
「おい孝! こういう時は少年探偵団、やってやるぞー! とノリよく言うもんじゃろが!!」
「茜ちゃん、漫画の読み過ぎじゃねそれ。同調圧力でなんでもかんでも他人が屈すると思うなよ? ドイツの最もな悪をご存じない? えぇ?」
「おちょくるなやぁ!!」
「はい、話は一旦終了。今はとにかく、ノブ先輩がどこにいってるかの確認をする話でしょ……アタシもノブ先輩の面白いジョーク話、聞くの楽しみにしてるからいなくなったら困る」
「……ま、一理ある」
……アイツがいないと、ふざけきれないところもあるからな。しかたなく、アイツを探しに行ってやるだけだ。悪友であるアイツに、必要以上の心配をして調子に乗ったむかつく顔をされるより数百倍もマシだからな。
「で、お前ら。もし何かわかったら携帯で連絡くれ、できれば8時で」
「別にいいですけど……なんで8時なんですか?」
「8時を横にすると無限になるから」
「どういう理屈!?」
ツッコミ力が輝く蔦屋の返しはありきたりすぎてつまらん。
もう少し捻ってくれるノブの方がやっぱおもろいわ。
「いいよ、タカシは無駄なこと嫌う奴なの知ってるし。何の理由もなく行動するってわけじゃないんでしょ?」
「……黙秘権を行使する。俺はお馬鹿キャラなの! 突っ込みキャラは蔦屋の義務な」
「どんな理不尽!?」
「ほら、お前ノリよく突っ込むだろうが、俺はボケ担当の方が楽なんでジョブチェンジはしませーん」
「話が脱線しすぎじゃ! で? ノブはどこにいるかは検討あるってことでいいんじゃろ?」
「まぁな……とにかく、8時に情報交換な。用事がある奴は来なくていいから、待ってるぞー」
孝は扉を閉じ、語り部屋部の三人は話し合った。
「的場先輩、ああみえて人情あるから嫌いになれないんだよなー……普段適当だったり、みんなから嫌われそうなムーブやるのに」
「……捻くれてるだけでしょ」
「そうともいうのぉ、ほれ! 上がりじゃ!」
「うわぁー!! 嘘だ―!!」
孝は扉の窓ガラスで見えない角度で、しゃがみ込み思い溜息を着く。
「……ぜってぇ見つけてやるからな。馬鹿友がよぉ」
孝の恨めしそうな呪詛にも似た絞り出した声で囁いた。




