第二二話 自宅へ帰宅
孝は家に戻り、一人安堵感でベットの上に転がった。
「……これで、さくらが繰々咲学校に行かない、よな」
天井に向けて手を上げて、ぼーっと見上げる。
太陽に向けて手を透かす時と同じような感覚で、天井の電光ライトを見つめた。
ひさしぶりに話してキャパオーバーになりそうな思考回路は彼女を救えたと言う安堵感よりも勝るものはない。一緒にアイスを食べて、普通に会話もして。
まるで小学生の頃に戻ったみたいな感覚だ。
「……俺が、キレなかったら、普通だったのか?」
俺がさくらに髪を茶髪に染めて、俺は激高して感情のまま口を利かなくなった。
本来の彼女の髪は銀髪だ。アルビノ、という奴らしい。
翡翠色の瞳は、まるで漫画作品の登場キャラみたいな感じな目を本当に実在するのだと歓喜したのをよく覚えている。
まるで、宝石のような瞳だったから。
まるで、ウェディングドレスのレースのような彼女の髪が、俺は好きだった。
好きだった、のに。
「……なんで、染めたんだよ。バカ」
周りに合わせるために、あんなに綺麗な髪を他人に言われるまま染めて。学校で髪を染めるのは違反だってするのが多い中、今の高校は認められているのが特別凄いだけだ。
もし、さくらを髪を染めるって行為をしなかったら。他人に流されない生き方をしてるって、羨ましいって思った俺の気持ちを、ないがしろにされたようで我慢ならなかった。
さくら自身、自分の髪を嫌っているようだったけれど俺は、好きだったんだ。
白髪だから老けてる、とか、そういうのじゃない。
真っ白な髪が、まるで物語に出てくる妖精みたいで。
綺麗で、眩しくて、輝いていて……けれど、彼女は髪を染めた。本人の家族たってのこと、だってことかもしれないし本人が我慢できなくて、ってことも色々考えられたけど、今もまだ謝れずにいる。
「ダサいな、俺」
こんな俺が、さくらと変に関わろうとして逆にアイツに迷惑をかけてるって対応の仕方で分かってる。だけど、だけど……さくらが、繰々咲学校で死ぬ未来を回避できるなら。
俺が嫌われ者のままでいれば。
さくらは、普通の人生を過ごせるのなら。
俺って人間が、さくらの人生を侵してはならないんだってわかってるのに。
「……ダッセェ」
後で、晩御飯を食べよう。一度、眠ってから。
そうすれば、少しは食事が上手くなると思って、孝は目を閉じた。
彼は気づかなかった……後日、あんなことになるとは想像もしていなかったのだから。




