婚約破棄?しょうゆ顔!そして旅にでる!!
※100%フィクションです、実在する森羅万象全てに関係ありません。差別とかではないですよ。
ここは貴族子弟の学び舎
城と見まごうばかりの豪奢な建物、広い敷地。その中でも特に目立つ式典用の迎賓館。
天井は高く、いくつものシャンデリアにはロウソクが灯り、カットされたクリスタルに反射し
迎賓館のホール内を眩いばかりに照らしている。
色とりどりのドレスの花が咲き、そこかしこで談笑する少年少女。
そう、今日はこの国の第二王子が学び舎での履修を終え卒業する。
普段の卒業パーティーよりも殊更に趣向が凝らされ、国の要人達も祝いに参列し、
国王夫妻も広大なバルコニー席からパーティーを見守っている。
そして演説用の舞台に第二王子が姿を現した
スラリとした長い脚、シャンデリアの光を浴びてさざめく様に波打つ金色の髪、
麗しい容貌の中でも特に目を惹く、青空をそのまま閉じ込めた様なブルーの瞳は
見るものにため息をつかせる程に輝きを放つ。
そんな麗しの王子は、貴族子弟を代表し、パーティー開始前の卒業演説を担っているはずだった。
しかし、どうにも様子がおかしい。
王子の背後に四人ほど壇上に上がっているのだ。
王子の乳兄弟である側近、宰相の息子、魔ぢゅちゅ(噛むよね)師団長の息子、
そしてそれらの人物達に隠れる様に辺りを見回す、桃色の髪が印象的な小柄な男爵令嬢…
王子は一呼吸置いて辺りを睥睨すると、
1人の美しいブルネットにワインレッドのドレスが似合う貴族女性へ指をさし、高らかに
「公爵令嬢カトウ!君との婚約を今、この時点を以って破棄することを宣言する!!!」
ーお分かりだろう、天ぷらのこんにゃく泣き…テンプレの婚約破棄だ。
「君の所業は知っている。騎士団団長の息子タナカ!カトウを捕らえろ!」
大柄のタナカは易々と公爵令嬢カトウの手を後ろ手に掴み拘束する。
「…スズキ王子、仰っていらっしゃる事と、今の状況がよくわからないのですが…」
公爵令嬢カトウは眉を下げ表情からクエスチョンマークを飛び立たせつつも
演説台の上の王子に目線を合わせる。
「飽くまでも白を切るか公爵令嬢カトウ!!
男爵令嬢ミサワに対する暴言やイジメの数々到底見過ごせる物ではない!!」
王子の後ろにいた取り巻き達もやんややんやと囃し立てる
カトウ嬢の表情が更に怪訝なものに変わる
「女の嫉妬はなんと見苦しいものだ、
私が男爵令嬢ミサワの天使の如き微笑み…奥ゆかしさ、心の優しさに気づき、
真実の愛に目覚めたと分かって尚、
それを引き裂かんと悪辣極まりない企みを巡らせるとは…
失望させられ過ぎてなんの感慨も湧かないよ」
「騎士団団長の息子タナカ!公爵令嬢カトウを会場からつまみ出すのだ!」
くるりと王子は男爵令嬢ミサワに向き直り、その小さな愛らしい手をとって
「さあ、男爵令嬢ミサワ!これで私達の真実の愛を妨げるものはなくなった、
私と、結婚しよう…!!!」
男爵令嬢はその大きな瞳を涙で潤ませつつ口を開く
「 ひ、平に、平に、お許しをおぉぉぉ!!!!!!」
「 え 」
素早く王子の手から己の手を引っこ抜くと滑らかな動きで演説舞台の階段を手すりにつかまり
音も立てずに滑る様に降り、騎士団団長の息子タナカの脇腹に穿いていた靴のヒールをねじ込ませ、
「うぱっ!!!!???」
悶絶するタナカの手から公爵令嬢カトウを救い出し、タナカから距離をとり
何が何やらときょときょとしている衛兵のすぐ横に陣取ると
「不躾ながら申し上げさせて頂きます!
私、殿下が苦手でございます!金髪碧眼も苦手でございますっ
あの、差別とか偏見ではなく、生理的に苦手なのでございますうううう!!!!
申し訳ございません申し訳ございません!!!!」
震えながらも絞り出す様な切実な告白だった。
「三次元になると、同い年なのに老けて見えるバタ臭い顔、あ、違っ、
彫りの深い、顔のパーツが自己主張激し、あ、お顔立ちがクッキリした上に、
パッチリとし過ぎた目が怖い、あ、苦手でございまして、
爛々とした青いお目々が不気味あ、あー、あー、
金髪はやたら目にうざったくてロン毛気持ち悪っと、違う、んです、
それだけならあまり構わないのです、
私もこんなありえない色の髪の毛してますから!
まあ、気持ちが悪いですが、いえ、それ以上に、
ご性格が大変悪っではなくて、
あー、大変奔放で、らっしゃって、空気読めな、
意思の疎通がむずかし、あの、えと、うーん、申し訳ございません申し訳ございません!!!!!」
男爵令嬢ミサワはいっぱいいっぱいだった。
身分的に、ただただ目上の存在の言葉には、是として頷くことしか許されていないのを理解していた。
そして、天使の如き微笑みは、その場をやり過ごすために表情筋を酷使させた苦笑いである。
そして年単位で溜め込み過ぎた鬱憤はきっかけさえあればの丁々発止状態を保ち続け、とうとう決壊した。
追い詰められた彼女の脳はだんだん語彙力低下させとうとう仕事を放棄した。
放心した様に膝をつき、ボンヤリと「不敬罪で打ち首かなー私、ハハッ」そんな事を思いながら胡乱な目で天井を仰いだ…
ーとその時だった
「わかりますわ!!!!」
公爵令嬢カトウはガッシリとミサワの手を両手で握り
もう一度噛みしめる様に言葉を紡ぐ。
「……わかりますわ……!!!」
「二次元は許される。三次元は、ない。…ですわ。ミサワ様…」
光を失っていた男爵令嬢ミサワの目にみるみる光が戻って行き…
「カ…ト…ウ、さま……」
男爵令嬢ミサワのタレ目がちの大きな瞳にじわじわと涙がせり上がり
「金髪碧眼ロン毛俺様…!!三次元とかマジ拷問、ありえないいぃぃぃ、
友達にもなりたくないぃぃぃぃ、知り合いにもなりたくないいぃぃぃ」
公爵令嬢カトウの手に縋りつく様に大粒の涙をこぼし魂からの叫びをあげる男爵令嬢ミサワ
「黒髪短髪、しょうゆ顔、切れ長の一重まぶたに薄い唇…」
「ジャスティス…」
歌う様に喋りながらミサワを立ち上がらせるカトウ
「照れ屋な心優しい平凡な青年…」
「あな尊きや…」
さらに一回転男爵令嬢ミサワが訊ねる
「DV男は?」
「処す…!!!」
ギラリと騎士団団長の息子タナカを睨め付ける公爵令嬢カトウ。
お互いの手をとりくるりくるりと回りながら
「女性へ暴力を命令したり、命令を諌めないメンツ、いかに?」
「モアザンギルティ…!!!」
壇上で石の様に固まっている王子と取り巻き達へ絶対零度の視線を送る乙女2人
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卒業パーティーからしばらく経った、あるうららかな春の日
「カトウ様、お久しぶりです、この度お茶にご招待頂き感謝いたしますわ、
…東の国へ留学なさるって本当ですの?」
「ミサワ様お久しぶりね、よくいらして下さいましたわ!
ええ、本当ですわ、そのことでミサワ様に相談があったのでご招待しましたの。」
なんやかんやで卒業パーティーに騒動を起こした主犯として王子は拘禁、蟄居処分。
取り巻きメンツも謹慎処分。婚約は破棄以前に王家の手回しで、婚約自体無かったことになった。
晴れて汚点も傷もなくフリーになった公爵令嬢カトウは…
「しょうゆ顔の性格の良いイケメンに出会いたいと思いますの。
なんでも、東の国にはオリエンタルあふれる黒髪黒目のしょうゆ顔の方達が住まう国があるそうですの。
あ、コレ観光パンフレットですわ」
「まぁ!素敵!」
すっかり公爵令嬢と男爵令嬢はお友達になっていた。
「それで、もし宜しかったら、ミサワ様もご一緒にいかがかしら…と思った次第ですの…」
「カトウ様…!」
斯くして乙女2人はまだ見ぬ異国の地でしょうゆ顔を探して旅にでるのであった…。
------オマケ
「そういえば、ミサワ様、王子()が暴言とかイジメとか、
おっしゃっていた気がするのだけどアレは一体…?」
「暴言…?ああ、ツンデレお嬢様が同じクラスだったから、誤解されたのかしら…?
あの方言葉はキツイですが優しいお嬢様でしたのに…
イジメは…?私、ひどいストレス(王子とか王子とか)にさらされていた時ボーッとしてしまって、
何もない所で転んだり、階段を踏み外して落ちたり、しょっちゅうでしたわ…
生傷が絶えなかったのでもしかしたらそれもまた誤解されたのかしら…」
「「……………………」」
「れ…レッツしょうゆ顔!」
「イエス!しょうゆ顔!」
因みに2人は元日本人転生者だが乙女ゲーはプレイしたことの無い女性達の為、
乙女ゲーに似た世界だとかは気づいていないのだった。
しょうゆ顔っていいよね!




