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波多野放浪外伝  作者: 桃山城ボブ彦
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「セシャトのWeb小説文庫」(セシャト様)より(その1)「神保町の波多野と、そして神様」

セシャトさんがTwitter上にて募集された『ふしぎのくに』コラボのはじっこに乗っかろう! という急な欲がボブ彦に沸いたのでした。長くなりそうなので本編と並行した形で期日まで短期連載しようと思います。


セシャト様、神様、許してつかぁさい。あと、古代での女子野球に煮詰まってしまったから殷王朝リーグがまだ始まらないため、佳穂先生も許してつかぁさい。


「三田線と……半蔵門線?」


 靖国通りと白山通りの交差点には、聞きなれない路線名を掲げた地下鉄の入口があった。三田線や半蔵門線という名前の路線には聞き覚えがない。念のためにと手帳に貼り付けてある地下鉄の路線図に街灯の下で目を落としても、神保町を通る路線は都営の六号線だけとなっている。

 酔いすぎたかな、と思った。銀座で宣伝部長やプロデューサーと共に社運を賭けた秋公開作品『任侠の証明』のクランクインを祝っての接待酒が、ホステスの尻と胸を触ってご満悦の原作者がクラブのママとハイヤーでどこかに消え去ったら一気に全身にまわったらしい。しかしいくらなんでも酔っ払ったところで、瞬きのうちに新しい鉄道を二つも作る芸当など出来はしない。


「夢でも見ているのかもなあ……」


 やはり、酔いすぎているのだろう。中野まで乗るはずだった帰路のタクシーを、深夜二時に懐かしさのあまりに出身大学に程近い神保町などであてもなく降りるのではなかった。謎の路線名の地下鉄があるわ、よくよく眺めたら見知らぬ建物や高層ビルがあるわのこの街は、僕の知っていた場所のようでいて、どうもそうではない。幻とするには勘違いの規模が大きいのだ。


「まさか、またタイムスリップでもしてもうたんやろか?」


 嫌な予感がした。誰にも話せはしないが、十年前に友人と古代中国にさ迷いこんだことがあったのだ。


「何か……確信させるもんを見つけんことには……」


 不安の中で地下鉄の入口を通り過ぎてはみたものの、悪い直感はまあ大体あたっていた。すずらん通りは見慣れない洒落た舗装になっていて、これまた見かけない自動車が停まっていた。『シエンタ』なんて車種、トヨタにあったか? いや、それよりも次の瞬間、通りに面したレコード屋のガラス越しに『懐かしのキャンディーズ、山口百恵のLP大量入荷!』と張り出された文句を見つけたとなれば、僕が昭和五十一年にはいないことは残念なことに明らかだった。今、人気沸騰中のアイドルが懐古の対象になっている! ならば今度は未来に来たということらしい。時間旅行は癖になるものなのだろうか?


「また、やっちまったみたいやなあ」


 妙な落着きとともに未来の夜空に向かって僕は白い息を吐いた。一度目のそれは友人と散々慌てふためいたが、二度目ともなればそこまでうろたえることはない。仮にここが二十年先くらいならば、今度のタイムスリップにはそこまでの文化的な違和感を感じないですむはずだ。だからそれはさしあたって今、一番重要なことではなかった。目下の問題は深夜の寒さをなんとかすることだ。()()()()も元の世界と同じく冬の終わりあたりなら、終夜営業の喫茶店でも探さねばなるまい。財布には雑多な紙幣で二万円ある。物価が上がっていても手持ちの金が古銭となって価値が上がっているなら、当座のメシ代やお茶代くらいはあるだろう。何せ古代中国に飛ばされた時は美人が多かったが何かヘマをしたら……リツとかいうこれまた美人に矛で突かれそうになる世界だったわけだし。


「あの時は怖かった……」


 三千年前の中国大陸で野球をしたら、友人は王の妃にクロスプレーで弾き飛ばされて目を回し、僕は僕で王様に城壁まわりを追いかけまわされたのだから。

 とにもかくにも急な酔いをおさめ、強引な納得をしたのを期に表通りから裏路地までをくまなく見渡す。だが、そう簡単に店など見つからない。だからかろうじて何本目かの細い道に、『ふしぎのくに』と書かれた看板を出した店から灯りが漏れているのをみとめると、僕はそこが喫茶店か酒場かを考える余裕もなく足を向けた。とにかく、寒かった。


「『ふしぎのくに』ねえ……とりあえずアリスとチェシャ猫にでも会ったろか……」



 ……果たして『ふしぎのくに』にアリスはいなかった。代わりにいたのは長いストレートの銀髪と褐色の肌を持った少女だった。チェシャ猫もいなかった。何でこの時分に起きているのか分からないような金髪のガキがいた。そしてご丁寧なことに三月ウサギのように目をせっかちに動かす黒髪の少女までいる。


「大都映画社の波多野啓次郎さんですね? お待ちしていましたよぅ」


「はあ……」


 飛び込んだ場所は飲食店ではなかった。この界隈にふさわしく、何らかの古本屋らしい。それでも、セシャトと名乗った銀髪は店員だかなんだかよくわからない三人がいるレジ奥のテーブルへと深夜の来訪者を迎え入れると、コーヒー椀とビスケットの盛られた皿を目の前に差し出した。僕は礼もそこそこに温かい飲み物にとびつく。が、すぐに寒さしのぎと酔いざましを超えるだけの素朴な疑問を発した。


「ちょっと! 『お待ちしてました』ですって!?」


「うふふ、そうですよぅ」


 のんびりとした声とともに首を少し傾けてはにかんだ少女は、そのくせ発した言葉を否定はしなかった。先の世界から呼びつけた、とでも言いたいのだろうか?


「うーん…………」


 僕は飲み物を口にしながら、セシャトをじろじろと見つめた。多少の落着きのもとに視線を向ければ、チョコレート肌とでもいったらいいようなエキゾチックさを身にまとった美しい女の子だ。ここが昭和の五十一年だったなら、アイドル映画のプールシーンに出演させることを知り合いの助監督まで掛け合いたいくらいに。でも、この美女に映画出演を申し込みたい気持ちがあっても、少なくとも面識はないし、万に一つも何か呼びだされるような約束をした覚えもない。


「お主、商売の胸算用しとるらしいがの、ソイツの出演料は高いぞ。何せ我輩がマネージャーなんだからな!」


 こちらの商魂とスケベ心が一緒くたになった思考をたしなめるかのように、今度は金髪が話しかけてくる。ガキの言葉に僕は混乱した。心中をあてられたのも気味が悪ければ、この空間の上下関係がみえてこないのも不安を煽ってくる。セシャトは見たところ二十歳前後、ヘカと名乗った少女もまあそれくらいだろう。でも、この子はどうみても十かそこらじゃないか。


「坊やがかい?」


 二人の女の子はガキの使用人か何かだろうかと思いつつ、恐る恐るに聞き返す。こちらの胸中をあてるような勘の鋭さがあるのなら、優しげな声でも出しておくのが無難だろう。心のうちを探る術でも持っているなら、下手に怒らせるのは怖い。


「坊やではない! わしゃ、神様だ!」


 怒らせてしまった。見くびるなと言わんばかりのハスキーな大声がぶつけられる。「大変に失礼しました」とか何とか言いながら頭を下げつつ、ややこしい所に飛び込んだなあと思うしかなかった。「神」などとおそれず断言するガキを相手にしたことは、勿論、ない。


「神様無理なん! 多分波多野は『神』に凡庸なイメージしか持ってないん! もっと凄いところ見せるん!」


 景気のいい音で自分のカップをテーブルに置くと、ヘカが会話に加わる。


「ブッダとかキリストみたいな格好を思い浮かべてるに違いないん!」


 こちらはこちらで酷く、殆ど雇い主並に口の悪い少女だ。でも、個性的な雰囲気はある。プールシーンには使えないが、ホラー映画の霊媒師なんかにはうってつけかもしれない。ああ、助監督と連絡が取れたならら!


「波多野、映画の配役の妄想はそれくらいにな。二人ともワシにとって大事な存在じゃからな。それに…………」


 金髪と小生意気な笑みを蛍光灯の灯りで輝かせた「神様」が、激しい口調のヘカを片手で制するとこちらに向き直った。おまけにまた、こちらの脳内で勝手に執り行っているキャスティングをピタリとあててくる。どうも、いけない。


「それに?」


 平皿のビスケットをつまみながら、つとめて動揺を出さないように僕は問い返した。ガキは……いや、神様は笑った。


「出演料は一人アタマ二億は譲らんぞ。それぞれがワシの片腕なんだからな」


「ヒェッ」


 ソファにのけぞった我が口から情けない声が出る。()()()()()()では、映画社が心血ふりしぼって超大作を撮るとなっても総予算が十億なのだ。通常の予算の映画なら、セシャトに水着を着せてヘカが預言者役を演じただけで製作費は底をつき、プロデューサーのクビが飛び、僕のボーナスが減ってしまう。


「神様、波多野さんが口をあんぐりしてますよぅ! お小遣いが少ないからって、二億だなんて言ったらダメですよぅ!」


「そうなん! 仮にヘカとセシャトで四億稼いでも、神様のお小遣いの額は変わらないん!」


 女の子達が交互に本音とも冗談ともとれない台詞を口にする。が、小遣いの現状は知る由もないが神様は案外に素直だった。それぞれの顔を淋しそうに見やると、それきりでオタフクのように口を膨らまして黙り込んでしまう。偉く尊大だと思ったら、経済的には大分に絞られているのか。

 でも、僕にとってはどうでもいいことだ。限界だった。酔いなどではない。神を名乗ってこちらの心を見透かすガキの前に居続ける自信がなかったのだ。


「で、では……お世話になりました……また、どこかで始発を待ちますよ」


 場所代の礼として五百円札をテーブルに置き、コートを掴むと僕は立ち上がった。仮にここが未来だったとしても、もう少し居心地のいいところは多分、あるだろう。

 しかし、黄ばんだ本がひしめくケモノ道のような通路に足を踏み入れようとした瞬間、ヘカの甲高い声が逃避行に没頭したい僕の背中を襲った。


「どこに行くん! 行くあてもないのに!」


「分かりませんよ! でも、ここがどんな世界かはわからんにしてもこの店はどうもかなわんですわ」


 仕方なしに足を止めると僕は三人を振り返った。こちらが立ち止まった様子を確認したヘカは、テーブルから中腰に立ち上がり、更に言葉を続けた。


「ここに来るまでに気づいたかもしれないけど、この世界はアンタがいた時代じゃないん!」


「そう、らしいですなあ」


 気乗りしないままに同意をした。答え合わせが終わったのだ。やはりここは、昭和五十一年ではない。


「波多野さん、よろしければ何故ここに来たかを考えてみてください」


 今度はセシャトだった。そういえばこの娘は僕が入ってきた時に「お待ちしていました」と言った。神様とかいう不思議な小僧に呆気にとられているうちにそのことをつい、忘れていたのだ。


「セシャト…さんでしたね……。『お待ちしていました』と確かおっしゃっいましたが、僕がここに来ることを前もって分かってらっしゃたのですか?」


「はい! だから神様とヘカさんと深夜の二時半にお待ちしていたんですよぅ!」


「ワシがお主を呼んだんじゃよ、波多野」


 神様、いや、ガキがとんでもない事実をセシャトの声に被せる。


「ええっ!」


 声の主に何かを問いかけようとするが、それは椅子に座ったままの少年が片手でとめる。


「あと、いい加減『ガキ』はやめるのじゃ波多野啓次郎。仮にも神なのだから『ガキ』などと思われたらいい気はせん。そうだな……神様らしいところを見せるためにお主のあれやこれやをあててやろう」


 彼は話す前の腹ごしらえなのか、皿のビスケットをたて続けに数枚頬張ると、口元の食べかすも立ち尽くすこちらにもおかまいなしに話しはじめた。


「波多野啓次郎、二十五歳。大都映画に入社して四年目になろうとしている宣伝部の期待の若手。今は『任侠の証明』の製作記者会見のセッティングの傍ら、再来週封切の春休み用特撮映画『ゴドラ対ガンガン』の為に青森から鹿児島まで飛び回ってキャンペーンに従事し、岡山から西ではチビッ子ファンの前で悪役怪獣ガンガンの着ぐるみにやられる哀れな通行人まで演じたナ……ン? それでもって昨日日航で羽田に帰還。その足で銀座に行きクラブをハシゴして小説家の接待……そうじゃの?」


「は……いかにも」


 僕は長髪を掻きながらに驚くしかなかった。全部、その通りなのだ。

 だが、驚きはしたが、それは尾行していたらどうとでも分かる内容でもあった。そんなこっちの意図を察したのか、疑念を深める猶予を与えずに金髪の子供は話を続ける。


「ふむ……後をつけただけとでも思っているようじゃの。なら、今度はも少しお主自身の話をしてやろう。去年のお主の年収は残業に残業を重ねたから額面で三百万、その代わりに潰瘍で三週間入院した……。家は去年の秋、学生時代から住んでいた阿佐ヶ谷の下宿を出て中野の2DKのマンションに越している。越した理由は付きあってる彼女と同棲できるようにするためだの。そして彼女の勤め先が……」


「わーっ! わーっ!」


 僕はもう、なりふり構わずに両手をブンブンと振り回しながら話を遮った。女の子の前でこうもプライベートなことをベラベラと喋られてしまったら困るじゃないか。それでもってこの神様とやらの情報収集力は興信所レベルだ。こんな調子じゃ去年の暮れのボーナスの額を知った僕が、会社の帰路に赤飯を買い込みすぎて彼女に小馬鹿にされたことすら知っているんじゃなかろうか?


「波多野、往生際の悪い男だのお……。まだ頭のどこかでワシのことを興信所か何かの類とどこかで思っておるな」


「いや! いや! そんな訳では!」


「無理するな。そうだな……なら、さっきお主が腕を振り回したから本棚から何冊か本が落ちたじゃろ? 何でもいいから拾い上げてみるがよい」


 促されるままに足下を眺める。確かに、少し冷静さを取り戻したら先ほどの狂態のせいか通路に本が散らばっている。僕はかがみながらその中の一冊を手に取った。


「式亭三馬『浮世風呂』……?」


 驚くしかなかった。こりゃ、江戸時代の滑稽本じゃないか。しかも、保存状態が恐ろしく良い。


「当時のものじゃ。ついでにその下の本も拾うがよい」


「はあ」


 これまた和本だ。表紙には、ああ、『当世書生気質』と書かれている!


「晩青堂の初版だぞ!」


 得意そうに胸をそらした金髪は立ち上がると、小柄な身体をゆっくりとこちらへ歩み寄る。


「もう問答をするのにも飽きたから言うぞ。わしゃ、神様だ。だからお主の考えていることを読みとくくらい訳もない。そして……そこの本の数々で分かるように色んな神々の中の『創作の神様』なのだ!」


「はえ~」


 滑稽本と坪内逍遥を小脇に抱えながら、僕は間抜けな声を発した。それを受けて、フフン! と鼻を鳴らした神様がこちらを見上げる。幼い表情がまだからかいたくてうずうずするようなものに変わっていく。


「お主もしぶといな……今度は近世の古書を集めている変な金持ちの子供だとまだ疑っておる……おい! セシャト!」


「はーい」


 平皿にビスケットだけでなく煎餅を追加しようとしていた長い髪の少女がのんびりとした声で応じる。


「お前、ちょっと奥の書庫からホメちゃんとシバっちの原本取ってこい!」


「ホメちゃんにシバっちですかぁ?」


 セシャトは小さな口元に手を添えるとしばし考え込む。


「ああセシャトよ。お前鈍いぞっ! 人類が物語を語って三千年、ホメちゃんといえばホメロスでシバっちといえば司馬遷と相場が決まっておろう!」


「了解しましたよぅ」


「分かりました! もうホンマ分かりました!」


 書庫に入ろうと立ちあがるセシャトを、僕は大声で押しとどめた。


「神様……『創作の』神様、もう十分です。確かに、あなたはただ者ではない」


「ようやく認めおったか」


 ガ……いや、神様はまた、鼻を鳴らした。


「たまに古今東西の名著の作者に会いたくなってな……戯れに時間を遡っては会いに行って作品をもらっておる…………そうだお主、せっかくだしパープル姐さんのサイン、見てく?」


 ホメちゃんにシバっちときたら、パープル姐さんなんて綽名の作家は多分……『源氏物語』の作者だろう。


「いや、もう……十分です」


 げっそりとした僕はそう呟くのが精一杯だった。小一時間のうちに摩訶不思議な体験をしたらもう、フラフラなのだ。酒は抜けたし、おまけに体重まで減ったような気がする。そして、紫式部の直筆サインなんてものを拝んで気絶する前に、何とかこの神様に確認しなければならないことがある。


「それで……それで神様、ここは神保町らしいですが、一体いつの神保町なんです? そして……何故僕はここに呼ばれたんです?」


「あぁ……それはな……」


 パープル姐さんのサインに期待した反応が得られなかったのか、神様は少しショボくれた目をしたが、すぐに答えを伝えてくれる。


「喜べ波多野、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。有り難く思え。それでもってここは……お前が過ごしていた時代から四十三年の後の世界だ」


「はえ~」


「ちなみに今年は昭和じゃなくて『平成』っていうんですよぅ! 平成の三十一年、西暦なら2019年なんです!」


 山積みの本で埋もれたカウンターの彼方で煎餅を齧っていたセシャトが主人の代わりに説明を付け加える。


「でもそれももう終わりなん! 来月にはあたらしい天皇が即位するん!」


「はえ~」


 新しい天皇となると、えー、今上の次の次ということになるから……。


「徳仁親王が即位されるということ?」


 素っ頓狂な声が出てしまう。


「いかにも」


 神様は首をゆっくりと縦にふった。そしてその瞬間、僕は飲み込むまでにえらく時間のかかったこの夜更けの混乱にはじめて心の底の納得を感じた。


「分かりました」


 僕は片膝をつくと、この店にやって来てからの最初のお辞儀を傍らの人物にした。


「大分かかったが、ようやく諸々を理解できたようだの」


 神様は左手を奥の方へと指し示すように伸ばした。共にセシャトとヘカがいるテーブルに戻れということなのだろう。


「波多野さん、次のお茶はミルクティーにしませんか?」


 通路を戻る僕にセシャトが笑いながら尋ねる。


「ええ、そうして下さい。……あと、タバコを吸っても?」


「一本だけなん! 今は禁煙の時代なん! でも波多野は神様のゲストだから特別に一本だけ吸うん!」


 ヘカの黒い眼がこちらを見据えた。どことなくとっつき難い女の子だと感じながら、長い夜明け前を過ごすために僕はソファに腰をおろした。セシャトが換気扇を回し、鈍い低音が部屋に響きはじめる。換気扇なんぞは時代が経ってもあまり変わらないもんだな、と思った。

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