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「そこまでだ!!」
それは、突然現れた。漆黒のマントを翻しながら、その男は高らかに名乗り上げた。
「我の名はミラージュ。ミラージュ・メシア・クインテットだ」
その男は言った。
「自分より年下の一人の少女を取り囲み、怯えさせるとは・・・・・・信じがたい所業だ。そんな紳士とは言えないお前たちに、この我が、ありがたい称号を送ってやろう・・・・・・」
男はその口元に嘲笑を浮かべながら吐き捨てるように言い放った。
「膝まづけ、この愚民どもが」
はい、改めまして、ミラージュ・メシア・クインテットことエリシアです・・・・・・。場所は屋上。中庭から太陽を背負っているように見える方角から、先輩方と対峙中です。
何故こうなったかといいますと・・・・・・私の作ったアイテム、クインテットシリーズの『蜃気楼の救世主』を使用したからですね。これは私が以前使った、『天罰執行☆エンジェル・ステッキ(ピンク)』同様、ネタアイテムとして作っておいたものなんだよね。
あれは、そう、ある夜中のことだった。私は何んとなーくバルコニーに出てみたんだよね。そして空を見上げると満月があって・・・・・・気が付けば作っていたというわけだ。一番恐ろしいののが、作っている間の記憶がないことなんだよね。はっとして目の前を見たら完成品が置かれていたんだ。私の身にいったい何があったんだ・・・・・・。
クインテットシリーズ・・・・・・そう、気づきましたか皆さん、クインテットって、五重奏ていう意味なんですよ。なんで五重奏なのか? そりゃあもちろん・・・・・・5つあるからですよ。私が今使っている『蜃気楼の救世主』以外にも、『愛の救世主』ことアガペー・メシア・クインテット、『黄昏の救世主』ことトワイライト・メシア・クインテット、『災厄の救世主』ことディザスター・メシア・クインテット、『超新星の救世主』ことノヴァ・メシア・クインテットがあるんです。名前がだっさいのは見逃してほしい・・・・・・私自身、ネーミングセンスがないのは自覚してるから。
このクインテットシリーズ、どんな効果があるかわかんなかったから試しに『蜃気楼の救世主』を鑑定したんだよね。そしたら、こんな鑑定結果が出たんだ・・・・・・。
*鑑定結果*
品名:蜃気楼の救世主/ミラージュ・メシア・クインテット(クインテットシリーズ)
作成者:エリシア・ヴァルテス
説明:月に導かれた少女が作り出した5人の救世主のうちの一人。
銀の髪に黒い瞳の青年は黒き衣を身にまとう。
尊大な物言いで誤解されやすいが、悪ではなく正義。
そのもの蜃気楼のごとく、とらえることはできない。
効果:身体能力向上・大/格闘技補正・大/状態異常無効/物体通過/透明化/転移/浮遊
青年化の呪い/色素変化の呪い(髪・銀/瞳・黒)/高飛車化の呪い
秘奥義・蜃気楼(そこにあって、そこにない。捕らえられずにすべての敵を下す)
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・・・・・・・いや、意味が分からない。何で呪いなんてついてるの。『尊大な物言いで誤解されやすいが、悪ではなく正義』って誰に対しての言い訳なの? まあ、いろいろと突っ込みどころの多い装備だけど、使ってみないと、どういう風になるのかわからないよね。それにこの魔道具、本体が仮面だから顔の半分は仮面で隠せて顔ばれしないし、鑑定結果では口調も変わるみたいだから、これを装備すれば私だとばれずに助けることができるし、先輩たちから恨みを買うこともないよね? そう思って使ってみたんだけど・・・・・・今、ものすっごく後悔してます。
だって、こんなことになるとは思っていなかった。見た目は、まぁ、うん、我慢できる。身長が175cmくらいかな?それぐらいまで一気に伸びた。髪は銀髪になって、目は・・・・・・うん、多分黒色になった、と思う。多分、イケメンじゃないかな。顔の半分は銀の仮面でおおわれているのでよくわかりません。で、服は全身真っ黒。シャツは白いけどね、全身真っ黒。丈の長いマントを羽織ってるけど、それも黒。なんか、貴族っぽい感じの服だけど真っ黒だから、喪服っぽい。
それをレイン様が出してくれたか大きな鏡で確認して、「うん、まあ、これならばれないんじゃないかな?」言おうとしたらさぁ・・・・・・
「流石俺様だ。身の内からあふれ出るオーラは隠し切れないようだが・・・・・・まあ、何とかなるだろう」
って、ありえない言葉が口から漏れ出たんだよ・・・・・・!!無駄にさわやかなテノールボイスで。思わず固まってしまった。レイン様も驚いたような表情でこっち見てたもん。そんなレイン様に「違う、これ、呪いのせいだから! 私の意志じゃないから!!」と言おうとしたら「案ずるな、わが師よ。これがこの素晴らしき魔道具の効果の一つだ。我自身の意志は関係ない」と変換された。その言葉で何か感じ取ってくれたらしく、レイン様は特に何も言ってこなかった。レイン様の前でこんな口調で話し続けるのはあまりにも恥ずかしいので、逃げるように窓から飛び出して屋上まで飛んで行ったんだよね。なお、その際「じゃあ、行ってきます!」と言おうとして「それでは行ってくるとしよう。あの愚か者どもを排除しに」と訳されてしまったことは、忘れたい。しかも、無駄にかっこつけて窓から出て行ったことにも気づかなかったことにしたい。どうやら、この救世主、微妙に格好つけたがりみたいで、行動の一つ一つが痛々しい。今すぐ穴に埋まりたい。屋上で一人身もだえしようとしたら、髪をかき上げながらくつくつ笑うという行動を体がとった。めちゃくちゃ恥ずかしかった。仕方がないのでさっさと終わらせて仮面を外そうと思って行動した。
そして現在に至るのだが・・・・・・やばい、今すぐ帰りたい。
ちなみにはじめ、私は「やめてください! 私、その子と同級生なんですけど・・・・・・その子、必死に抵抗してるようにみえます。その子の気持ち、ちゃんと考えてあげてください。先輩なのに、後輩を怯えさせるなんて、最低です!」と、言おうとした。原文そのまま言ってもアウトだとは思うけど、さっきのセリフはもっとアウトだ。先輩たちは、あぜんとした顔でこっちを見ている。わかるよ、痛々しいのはやってる本人が一番わかってる。と、とにかく、さっさと片付けてレイン様のとこに戻ろう、そうしよう。
「なんだお前、ここの教師、じゃないよな? こんな教師、知らないし」
「生徒でもない、よな?」
「何を言ってるのかと思えば・・・・・・この春からこの学校に入学してきたお前らの後輩だぞ? そんな簡単なこともわからないのか、愚かだなぁ。(今年からこの学校に入学してきた、あなたたちの後輩です)」
「おい! ちゃんと制服着ろよ!! 確かにうちの学校、制服のアレンジは自由だけど、どんだけアレンジしてんだよ!!」
「ふっ、制服、か・・・・・・あの衣は脆弱すぎてな。我の力に耐えることができず、我がまとうこの漆黒の衣に飲み込まれたのだ(大丈夫です、魔道具の効果で服が変わってるだけなんです)」
「意味わかんねぇよ!」
うん、私も意味が分かんないよ。
「ふん、矮小な存在には理解できぬことだ(気にしないでください)」
「うん、一番意味が分かんないのは君だから」
やばい、なんか、だんだん楽しくなってきた。私という意味不明の存在の出現によって先輩たちの注意がそれて隙ができたので、アリス嬢への攻撃がやみ、適当なところに転移させて逃がすことができたし、あとは戻るだけなんだけど・・・・・・先輩たちの私への反応が面白すぎる。しかも、アリス嬢を逃がしたことに気づいてないし。
「はぁ、やれやれ。これだから愚民は・・・・・・(全然気づいてないんですね)」
「え、なんで俺ら、いきなり貶されてんの?」
「ふっ、そろそろ戻るか(私、そろそろ帰りますね)」
「君何しに来たの?」
「我の目的は達成された。だから去る。それだけのことも理解できぬのか。(アリス嬢を逃がすことには成功したので・・・・・・)」
「目的? あ! あの女の子がいない!」
「うわ、マジかよ」
「え、マジでどこに行ったの」
「あいつに気を取られてたから、全然わかんなかった」
さっきまでアリス嬢がいた場所を見ながら先輩たちはざわざわと騒ぎ始めた。
「え、あいつ何かしてた?」
「いや、俺たちずっとあいつのこと見てたけどあそこから動・・・うん、ポーズとったりはしてたけど、移動はしてなかったぞ」
「愚民どもに理解できるわけがなかろう。我は行くぞ、我を呼ぶ声が聞こえたからな(ただの魔法なので、気にしないでください。じゃあ、私はこれで)」
「あ、ちょっと!!」
私はちょっとしたいたずら心で[秘奥義・蜃気楼]を使い、すうっと空気に溶けるように姿を消しながら先輩たちの頭の中に直接聞こえるよう、テレパシーみたいな魔法を使って語りかけた。
「同じ学園にいればまた会うこともあるだろう。またの再会を楽しみにしているぞ」
「うぉ、魔法で頭に直接!!」
「まじで、何者だったんだ、あいつ」
私はそのまま先輩たちが見えないよう蜃気楼を使って屋上の奥に引っ込んで物陰に隠れ、魔道具を外した。自分の見た目が元に戻ったことを確認して冷静になり・・・・・・その後、めちゃくちゃ悶えた。
恥ずかしい、すっごく恥ずかしい。最後ノリノリであんなことを言ってしまった私が恥ずかしい。自分の言葉で発言するとき、痛々しい感じで発言すれば変換されないことは分かったけど・・・・・・こっちのほうが、自分で言ってるっていう自覚がある分恥ずかしい!!
レイン様のところに戻るのに20分ぐらいいかかったけど、仕方ないよね・・・・・・。




