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水の聖者~20の柱~  作者: 森川 悠梨
第一章 冒険篇、白の魔術師
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名も知らぬ花と少女

「はあっ!」

「遅い!」

「ぐっ!?」


 アランの苦痛を堪えるかのような声と、アルファの叱責の声が訓練場に響く。


「……アラン、頑張ってるね」

「ああ。本気であいつ、都目指してるしな」


 それを遠巻きに見つめるのは、アランの幼馴染みでもあるルートスとミーシャ。

 目の前で繰り広げられる模擬戦は、一週間ほど前のものとは比べ物にならないほど激しいものだった。

 アルファ率いる『皓月千里』がカル村に滞在して一週間ほど。それまでの間に、アランはDランクにまで昇格した。

 Dランクに上るには一日かけて行われる昇格試験を突破しなくてはならなかったが、それもアルファの特訓のお陰であっさりと合格。今ではアラン一家と『皓月千里』は友好的に接している。アランの幼馴染みのルートスとミーシャも彼らと仲良くはなったが、ほとんどアランとアルファが訓練しているためにほとんど会話はない。ただし……


「ほんと。まさか、あそこまでお兄ちゃんの気まぐれを動かせる人なんて、何年振りかしら。ま、シノン達程じゃないと思うけど」

「そう、ですね。アルファさん、すごく張り切ってます」

「……やべえ」


 アルファ以外のメンバーとの関わりは、彼らにはあった。

 レイはただ、才能を発揮して急激に成長するアランの様子を見て、ただ一言告げるだけだ。

 彼は弓と精霊魔法、副武器サブアームとして細剣レイピアを使うので、基本は後衛だ。だが、そんな後衛であるレイの目から見ても、アランの成長は著しく、以前の面影はほとんどない。

 今のアランと同じように、かつて……いや、今も"白の魔術師"に憧れ、彼を目指す身として、アランの戦闘の才能が少し羨ましくなるのは当然だった。

 だが、他人にあって自分にないものを羨んでも仕方ない。自分を磨き、目の前の才能の塊に追いつかれぬよう、自分は自分で上を目指すのみ。

 そう考えたレイは、よし、と言って自分の両頬を叩いて立ち上がる。


「アルファさん! 俺も混ぜてくださいよ!」

「……っと、だそうだが、構わないな?」


 アルファがアランへと確認の言葉を入れると、息を切らして休憩しているアランは無言でうなずく。


「よっし!」


 言いながら、レイもアランの相手をするべく細剣を抜くのだった。




「……本当に、行ってしまうんですか?」

「ああ、悪いな。こちとらあまりゆっくりはしていられなくてな。まあ、もう少しここにいても約束の日までには間に合うだろうが、余裕は持っておいた方が良いし」


 アルファ率いる『皓月千里』がカル村に滞在して約十日。

 彼らは出立するために村の出口に立っていた。

 どうやらこの国の皇帝に呼び出しを受けて都に向かっていたらしいのだが、ここには中継地点として寄ったらしい。

 ここから都までは十日以上もの距離がある。だが万が一ということもあり、約束の日まではまだ一か月あるが余裕を持っておくことに越したことはない、とのこと。


「俺がいなくても訓練は欠かすなよ。今度会ったら、また一緒に模擬戦をやろう」

「はいっ!」

「元気でな。俺だって負けねえから」

「ああ、俺も負けないぜ、レイ」


 レイに対して砕けた会話になっているのは、レイ本人が固い態度が気に入らないからだ。アルファに対する態度と同じもので接しようものならば、すぐに拳骨が飛んでくる。

 普通なら逆じゃないか? とも思ったアランだったが、Aランク冒険者として活動しているレイに逆らえるはずもなく砕けた会話となっていた。


「じゃあね、ミーシャちゃん、ルートス君」

「お元気で」


 アリュスフィアとユウキの別れの挨拶は、至極単純なものだった。だが、冒険者とは出会いと別れを繰り返す。それ故に割り切っているというのもあった。

 いちいち寂しがっていようものならば、切りがないからだ。


「あの、またここに来てくださいね」

「いつでも歓迎しますよ」


 ミーシャとルートスも、それを理解している。まだ新人ではあるが、彼らもまた冒険者だ。隣村まで行って依頼を受けたこともある。町まで言っていくつかの依頼を受けたり、畑などで育てた食材を売りに行ったこともある。

 そんな中で繰り返す小さな出会いと別れは、アルファ達との出会いと別れにも少し似ていた。

 だからこそ、特に彼らを止めたりはしない。

 それはルートスとミーシャだけでなく、アランも同じだ。

 冒険者として活動する上で、それは日常茶飯事なのだ。


「じゃあ、そろそろ行くよ」

「アルファ殿、どうか道中、お気をつけて」

「ああ、ありがとう。世話になった」


 カル村の村長である老人、レブルスが頭を下げて言うと、見送りに来た村人も小さく頭を下げる。

 アルファ達は、アランの訓練だけでなく、畑仕事やそれぞれの家の家事などを少しずつだが手伝っていたのだ。さらには子供たちとも遊んでいたりしたので、アルファ達は村ではかなりの人気が出ていた。

 だから、こうして早朝に旅立とうとしている彼らを村人総出で送り出そうとしているのだから。

 一部の子供たちは、思いっきり遊んでくれたアルファ達との別れを惜しんで大泣きしていたが、何とか親たちが押さえているところだ。

 ――こうして、一時の間ではあったが、Sランクパーティ、アルファ率いる『皓月千里』のカル村での滞在の時間は、終わりを告げた。


 *


「……またいたの、アラン」


 いつもの白い花の大群の中で、アランの姿を見つけたミーシャがそう言う。


「……ああ。最近は来てなかったからな。今日は依頼もないし、仕事の手伝いもないから、ここでゆっくりするのも良いかなって」

「一日中?」

「ああ」


 ミーシャのその言葉に、アランは短く即答する。

 なんとなく、ここにいれば、またあの少女に会えるのではないか。

 そう思ってしまうのは、間違いだろうか。

 アランはここに来る度、そう思ってしまう。


「確かにここは綺麗で誰も知らない秘密の場所だけど……」


 ミーシャは花畑に降り立って空を眺める。

 ここは木々の開けたところであるだけに、周りの木々の間から空がはっきりと見える。

 それでいて、夏の日差しを直撃しない穏やかな気温の花畑だった。


「この花は一年中咲いてるから、ちょっと暇なときに来ると、落ち着くんだ」


 しみじみと呟くアランの目は、優し気に細められている。


「……たしか三年くらい前、綺麗な女の子がいたって言ってたよね、アラン」

「ああ。この白い花みたいに、白い髪に、白いドレスを着た女の子だった。この花の冠を被ってて、作りかけもその白くて細い手にあったんだよ。……一目惚れってやつをしてしまってな。忘れられなくてさ」


 アランは当時少女が座っていた場所へ視線を向ける。


「……俺がちょっと声を上げたら、逃げてしまった。その先に後で行ってみたんだけど……行き止まりだった」


 ミーシャは笑みを浮かべる。

 ここにいるときのアランは、どこか落ち着いている。

 それを見ていると、まるで別人を見ているようだと自分も落ち着いた気分になる。

 何故かはわからないが、アランはここに来る度、嬉しそうなのだ。

 やはり幼馴染みとして、彼が嬉しそうに微笑んでいるのを見るのは、心に優しいものが灯るような気がして、穏やかになれる。

 だからこそ、アランがここにいても攻めるような真似はしないのだ。

 それは、ルートスも同じだった。

 彼もここへアランを呼びに来ることがあるのだが、アランの嬉しそうな笑顔を見ると、ストレスを溜め込んでいないというのを実感するので安心するのだ。


「……?」


 不意に、アランがミーシャとは反対の方向を向いて警戒を露わにする。そしてミーシャを護るように位置取ると、腰の剣に手をかける。

 ミーシャも盗賊――この場合はシーフやバーグラーなどの類――として周りの空気には敏感だ。

 アランが何を感じて警戒しているのか察し、彼女もまた自衛のための短剣を取り出した。


「ミーシャ、気をつけろ」

「うん、わかってる」


 アランとミーシャが警戒し始めて間もなく、彼らの正面から飛び出してきたのは黒い霧状の影。赤黒く禍々しい双眼でこちらを数秒間見つめると、その影はアランに視点を定めた。

 すると、顔のない影の中に大きな口が出現する。


「っ!?」


 一気に距離を詰められたアランは驚愕をその顔に貼りつけるが、目で反応できても体が反応しなかった。


「ぐっ!」

「あ……アラン!!」


 悲鳴を上げるミーシャだが、アランにその声を聞く余裕はなかった。

 目の前に見える化け物の口内。

 焦って、まだ鞘から抜いていない剣の柄から手を放してしまう。このまま倒れてしまえば、後ろにいるミーシャが危ない。そう一瞬で判断したアランは、魔術を発動することにした。

 体の半分はもう化け物の口の中に入ってしまっている。口は閉じられようとしており、魔術式はまだ半分しか完成していない。

 どう考えても、間に合わない。

 いきなり襲ってきた謎の襲撃者は、自分たちに何もさせないまま、幼馴染みを口の中に収めようとしていた。

 ミーシャが恐怖で目を瞑った、その時――。


『キュッ!?』


 不思議な声を出して、黒い霧状の化け物は霧散した。

 それは当然、アランも気づいた。直前まで魔術を発動させようとして目は開いていたので、化け物が霧散したところも見ている。

 魔術式は、発動直前までに組みあがっていた。後は、発動させるだけだった。


「……え?」


 何があったのかと、アランは周囲を見回した。そんな時に目に入ってきたのは、見覚えのある風貌をした、少女。

 白いドレスに身を包み、腰まで伸びた白銀の髪をなびかせて、白く細い右手をこちらに向けていた。

 幼い顔立ちは美しいとすら表現でき、深い海を連想させる双眼は気づかぬうちに意識を集中させる。

 まさに、三年前にアランがこの花畑で見た、美しい少女の姿だった。

 そして目を開いてアランの無事な様子を確認したミーシャが、また、その少女の姿を見て目を見開いていた。


「……真っ白なドレスに、真っ白な髪の毛……綺麗な女の子……」


 思わず、ミーシャは呟いてしまう。

 傍らに控えるのは少女の髪と同じ色の毛並みを持つ、立派な翼を携えた体長二メートルほどの狼――すなわち、Sランク指定の魔物である(よく)(ろう)だった。

 少女と同じ深い海のような青い双眼は、その静かな佇まいの中に存在する一つの芸術品のようだった。

 少女は右手を降ろす。そして、何も言わずにその場を立ち去ろうとするが……


「ま、待ってくれ!」


 アランが、それを止める。少女は足を止めると、半分だけ顔を振り向かせる。


「……助けてくれて、ありがとう。良かったら、名前を聞かせてくれないか?」


 できるだけ穏やかに話しかけるアラン。だが、少女は少しだけ顔を下に向かせると、何も答えずに歩いて行ってしまった。

 だが、アランは追わずに、ただ一人の少女と一匹の翼狼が去るのを眺めていた。少女に話しかけられただけでも、満足そうな顔をして。




「ミーシャ、このことは、村の人には言わないでくれよ」

「え? ……どうして?」


 アランのその言葉に、ミーシャは疑問符を浮かべる。すると、アランはふと立ち止まり、空を見上げた。


「何となく、本当になんとなくだけど、あの子が言ってた気がしたんだ。このことは、誰にも話すなって。それに、俺が命の危機に陥ったなんてみんなが知ったら、俺はこの先あそこに行けなくなる」

「…………」


 その後は、ミーシャも口を噤む。

 今後アランがあの花畑に行けなくなったら、間違いなく自分とルートスは……いや、他の者も、アランの心からの笑顔を見る機会が減る。

 だが、やはり大事なのはアランの命だった。


「けどね、アラン。あの花畑に行く時は、私かルートスに言って。あの場所を知ってるのは私達だけだし、ルートスになら、話してもいいでしょ?」


 ミーシャの言葉に、彼女が自分の身を案じてくれているのだということを察したアランが、ミーシャに向かって微笑む。


「わかったよ。……ありがとうな」


 そう言って微笑んだアランの笑顔は、とても嬉しそうで、ミーシャには輝いて見えた。




 冬。

 村では、冬籠りの準備を終えて皆家の中で暖を取っていた。

 カル村では、冬は冒険者以外はほとんど活動しない。畑も休ませているし、雪が降って積もるのでまともに仕事もできない。

 そのため、この時期のために食べ物を蓄え、村人全員で協力し合って生活している。

 そして今年も、例外なく食べ物を蓄え、アランたちも協力し合って生活していた。


「アラン! いくよ!」

「おう!」


 アランたちも冒険者だ。少々きついが、冬でも活動をしている。普通なら冒険者も活動回数は減るが、都に行くことを目指しているアランたちは冬でも例外なくほとんど毎日依頼を受けている。

 そして今日は、北に存在する小さな丘に生えている薬草を採集する依頼を受け、アランたち三人は村の外へ繰り出していった。


「えーっと、『カグラーゼ』の注文を街から受けたんだとさ。ハッシュさんからの依頼だ」

「なるほど」


 ルートスの今回の依頼の説明を聞き、アランがそう返事をする。

 ハッシュは、村でも少ない商人の男だ。主に薬草を売り買いしており、カル村の発展にも貢献してくれる。

 今回はこのカル村付近の丘でしか取れないカグラーゼの採集を任され、こうしてアランたちが赴いていた。


「あった」


 短く呟き、アランは地面に――正確には雪の下に――見えた赤い植物を目にする。

 カグラーゼは冬に生えてくる解毒用の薬草で、その希少さから高く取引されており、このカル村でも重宝されている。

 赤く雪の下から生えてくるこのカグラーゼは、白い雪の下ではそれなりに目立つ。

 解毒以外にも、煎じてお茶にしてもいいし、擦って調味料として使用してもいいし、煮込んでそのまま食べてもいい。

 色々と使い道の良い薬草だった。

 アランたちはそうしてそれなりの量を摘むと、籠に詰めて村への帰路につこうとした、時だった。


「ん……?」


 ルートスが、不意に村とは違う方向に視線を向ける。


「どうしたんだ?」

「いや……あそこ」


 ルートスが指差した場所には、何もなかった。……いや、正確には、何もないように見えた、と言った方が正しいだろう。

 盗賊として視力が優れているミーシャはすぐにその存在に気づき、アランもまた遅れて、雪の中に()()()()()者の存在に気づいて叫ぶ。


「おい、あれ、人じゃないか!?」

「なっ!? 本当か!?」


 存在には気づいても、雪の中に倒れているのが人だとは思わなかったのだろう、ルートスが驚きの声を上げる。

 籠を背負ったまま、アランはそちらに駆け寄って行った。ルートスとミーシャもまた、遅れまいとアランの後ろを行く。


「おい! 大丈夫、か……?」


 近づいて上半身を抱え起こしたアランがいきなり絶句した。

 雪の中に倒れていたのは、少年だった。それも、自分たちと同じくらいの歳の。

 だが、それだけだったならばアランは絶句などしなかっただろう。だが、言葉を失った理由。それは、倒れていた少年にある。

 後ろにいたルートスもミーシャも、アランが急に黙ったことに疑問を持ってアランが抱え起こしている少年を覗き見る。

 ミーシャはアランが黙り込んだ理由に気づいて言葉をなくし、ルートスはそれでもわからない様子でミーシャに尋ねる。


「……ミーシャ、どういう、ことだ?」

「……あ、うん。アランが一目惚れした女の子に、すごく、似てるの。この子……」

「え……?」


 ルートスも思わず驚きの声を上げる。

 アランが抱え起こしている少年は、名も知らない白の花畑で、アランの前に二度も姿を現した少女にとても似ていた。

 だがどう見ても少年は少年であり、少女である要素はどこにもない。

 それでも、やはりその少年は森の中で見かけた少女に酷く似ている。違うところがあるとすれば、髪の長さが男にしては長めだが、短いこと。そして、服装が身軽で、男物であること。最後に、狼の耳と尻尾が生えていることだ。

 少年はぐったりとしており、生きているような気配はほとんどない。その理由は、脇腹から出ている赤い液体にあった。


「……って、怪我してるじゃないか! アラン、俺がそいつを運ぶから、カグラーゼの方は頼む!」

「え? お、おう!」


 アランはルートスの声で我に返り、少年を彼に預けた。だがそれでも少年が動く気配はない。よく周りを見渡して見れば、転々と立っている木で見えなかったが血を垂らして歩いてきた痕跡がある。

 その方角も村の方に向かっているので、村を目指していたのだろう。


「わ、私、先に行って皆に伝えてくるね……!」

「頼む!」


 人や荷物を背負っているよりも、何も持っていない、敏捷性に長けた盗賊のミーシャに任せたほうが良い。

 そう判断したルートスは、ミーシャのその申し出に即座に答える。

 ルートスは少年を背に載せ、アランとともに走り出した。


「おい! 大丈夫なのか、そいつ!?」

「わからない。だけど幸い、今の村にはジャノンさんがいる。彼ならきっと、治療してくれるだろうさ!」


 冒険者にとって医術の知識は大事だ。ただでさえ魔法使い――特に回復魔法の使い手――が少ないので、怪我をした時の処置くらいはできるはずだ。

 ましてや、村にいる最高ランク冒険者のジャノンはBランクだ。

 大怪我をした村人の怪我の手当も、彼がいる時は何度もしてもらっている。


「ルートス、アラン!」


 村に到着すると、手を振って彼らを呼ぶのはミーシャ。彼女と合流すると、まっすぐに向かったのは冒険者ギルドだった。

 そしてギルドの中に入ると、数少ない冒険者がそこにはいた。

 その中で、筋肉男と表現した方が早いだろう巨躯の男が立っていた。


「おう、ルートス。アランも。怪我人がいたって?」

「はい、この人です」


 ルートスはそう言いながら、ギルド内に敷かれていた毛布の上に少年をそっと降ろす。


「レイヴァ、か。……ん? こりゃ……人間のものじゃねえか? いや、こんな雑な切り傷……」


 呟きながらも、慣れた手つきでジャノンは応急処置を進めていく。呼吸は弱々しく、未だに血が流れている。ジャノンは何とか出血を止めるべく清潔な布を押しつけており、緊張から汗までかき始めている。


「……よし、お前ら、奥まで運ぶの手伝え」

『はい』


 アランとルートスを指名し、ジャノンは道具をさっさと片付ける。


「ミーシャ、依頼完了の報告をしたら、ここで待っててくれ」


 そう言いながら、アランは背負っていた籠をミーシャに渡す。するとミーシャは素直にうなずき、籠を持って受付へと向かって行った。


「よし、傷を刺激しないよう丁寧に運べよ。ようやく治まったんだからな」


 アランとルートスは、ジャノンのその言葉にうなずいて少年の上半身と下半身をそれぞれそっと持ち上げる。そしてジャノンの案内に従って奥に引っ込むと、ギルドに設置されている治療医室の中へ入って行った。

 アランたちは慌てていて気付かなかったが、先ほどまでは曇っていた空が、今では完全に晴れ空となっていた。


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