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水の聖者~20の柱~  作者: 森川 悠梨
第一章 冒険篇、白の魔術師
33/33

武闘大会 第一回戦Ⅱ

 舞台に上がった二人の人物。

 一人は、巨大な大剣を携えた大柄な男だ。服の上からでもわかるほどの膨らんだ筋肉を持っており、自分の身長ほどもある剣を軽々と片手で持ち上げていた。

 対して、対戦相手である選手は全身を丈の長い外套で包まれていた。頭巾を深く被り、その顔は窺えない。

 しかし、誰がどう見ても大柄な男に勝てるようには見えなかった。なぜなら、対戦相手の体は細く華奢な体格であり、手に持っている武器は細剣レイピアだったからだ。

 二人の見た目は対極に位置しており、誰もが、華奢な体格を持つ選手を運が悪い奴だと笑った。

 だが、それでも、例外が存在していた。


「勝ったな」


 華奢な体格を持つ選手へ、その人物はあっさりと一票を入れた。

 先ほどまでその選手と少しばかり会話をしていたアルだ。

アルは少女の佇まいを見て只者ではないことを悟っており、それは脇で様子を見守っている……いや、様子を窺っているアランもアルの一言で固唾を飲み込んだ。


「あいつ、何者なんだ?」

「さあな」


 アランの問いに対して、アルは素っ気なく返した。

 なんとなく感じている違和感を隠すためだったのだが、まだ付き合いの短いアランにそれを知る術はなかった。


『さあ本日二試合目の戦いが始まるぜ! 第一試合はそれなりに熱い戦いが見れたが、みんなそれで満足するなよ? 武闘大会はこれからなんだからなあ!』

『わああああああああああ!!』

『それでは、第二試合の選手の紹介をしよう。西サイド、膨れ上がらんばかりの筋肉と並外れた巨躯を持つこの男は、なんとダンジル王国の元中将軍だ! プロとしてこの大会に参加してきた彼は、自らの腕試しのために冒険者となり今回の大会に参加した。その名は、アジル=イェハイム=フォン=ジャウス!』

『うおおおおおおおおおお!!』


 観客が興奮から大声を出す中、体を小さく反応させた者がいた。


「アジルにジャウス……ダンジル王国の、元中将軍って……」


 アランの隣で、アルがそう呟いていた。特に聞かれても問題がないからか、深く被っている頭巾のせいで表情は読み取れないものの、感情の籠った声をアランの耳に届けていた。

 アルだけではない。観客席にて試合を観戦していたルミナ達や、特別席でゲストとして試合の景色を眺めていたロイ以外の皓月千里のメンバーもまた、大きな反応を見せていた。


「アジル、いや、ジャウスって……」


 大きな反応を見せた者達全員が、困惑の表情を浮かべていた。

 ジャウスという名字、アジルという響きに覚えのある名前。更に言えば、既視感のある顔立ち。アルに至っては似た魔力反応を感じとっている。これらの要素から、彼らは共通の確信を持ったのだった。


「……アル、あの人を知ってるのか? 会ったことはないように思えるけど」

「まあ、な。俺も存在は知らなかったけど……とある偉大な人物の孫のようだ」

「……偉大な人物の、孫?」

「ああ。……一人の少女の命と心を支えた、偉大な大将軍のな」


 アランは再びアジルへと視線を向ける。アルの言う偉大な人物の孫だというアジル。

 見た目からして恐ろしいといったイメージしか浮かばないその姿からは、アルが知っている大将軍のイメージが湧きにくかった。

 だがアルが懐かしそうなニュアンスを含めて言葉を発している時点で、その人物がすでに亡きものだというのはなんとなくわかった。


『対して東サイド、全身を外套に包まれたこの少女、彼女はこの華奢で小さな体を持ちながらも何とAランク冒険者というベテランだ! 特技はもちろん細剣レイピアを使った連撃! 目にも留まらぬ速さで、予選の選手たちを圧倒していた手練れだ! 決して油断はできないぜ! そしてそんな彼女の名は、シロ!』

『わあああああああああ!!』


 司会の男による解説で、会場は大いに盛り上がった。Aランクというランクは、それだけ人々の心に影響しやすい。

 先ほどまで少女――シロの方が負けるだろうと誰もが思っていたのだが、今ではどちらが勝つかわからない状況となっていた。

 アジルも油断なくシロへと鋭い眼光を向けており、相手の隙を窺いつつ自分の隙を見せぬようにと気を張る。

 双方に緊張が走っているように見えた。だが、シロの方は至って自然体だ。特に体に力を入れているでもなく、突きの構えを取るでもなく、ただ、自然の状態で立っているだけだった。

 そんなシロを見たアランは、自分と初めて模擬戦をした頃のアルファを思い浮かべる。

 あの頃も、アルファは余裕を崩さないまま自然体の状態でただ立っていた。だからと言って隙が出来ていたわけではなく、むしろ一切の隙がなかった。

 緊張感の類はほとんど見られず、ただただその緊張感はすべて自分に降りかかってきていた。

 アルもまた同じだ。

 模擬戦をする時はいつも後手に回る側で、当時のアルファや今回のシロと全く……いや、それ以上の佇まいをしてくる。

 そんなアルに対しては、アルと同じ〝白髪に青い目を持つ子リ・ミ・レイヴァ・クラント〟であるルミナやユアでも、リオンやコクでも、さすがのアルファでもかなりの緊張を強いられることになる。

 力を制限していても、聖族の純血で今では聖族最強――文字通りの意味での世界最強には勝てないのだろう。

 ……とは言っても、アルの体には日々負担が掛かりすぎているせいで、体調を崩しやすくなっているのも事実なのだが。

 ともあれ、双方の選手の紹介を終えた司会の男が審判へと合図を送り、審判も準備はできていると合図を送る。


『それじゃあ、待たせたな! 両者問題はないな?』

「はい」

「ええ」


 二人が同時にそう答え、それを確認した審判の男は右手を上げる。


『それじゃあ、試合開始だあ!』

「始めッ!」

『うおおおおおおおおおお!!』


 一瞬遅れて観客の喚声と鐘の音が闘技場に響いた。すると、最初に動いたのは意外にもシロの方だった。

 だが、本来ならばそれが普通なのだ。何故、意外、と表現したのかというと、それは開始合図直前の構えだ。

 先ほども言った通りシロは構えてなどいなかった。むしろ、細剣レイピアを片手に自然体で立っていただけだ。

 それなのに、シロはその軽い体を利用してアジルへと一気に距離を縮める。

 しかしアジルとて自分の弱点をわかっている。最初から、自分から攻める気はなかったのだ。

 大きな体に大ぶりな武器を持っている者にとって、スピードは一番の弱点。だが逆に、小さな体に軽い武器を持っている者にとって、大きく重い武器は弱点でもある。

 互いが互いの弱点であることを理解しているからこそ、アジルはスピードにのみ対応すれば良いことになる。

 細剣レイピアの起動を予測して、防御態勢に入りつつ剣を動かす。

 シロが取った行動は、突きではなく薙ぎ払いだった。本来の使い方とは、全くではないが違う。

 軽く素早い連撃が繰り出せるという利点から、細剣レイピアは突きに特化した武器として扱われることが多い。それに、大剣などといった重い武器を手にしている相手に対して薙ぎ払いの攻撃は愚策に過ぎない。

 どう考えても、剣身の細い細剣レイピアの方が耐えかねて、折れてしまうだろう。

 しかしシロは、そんな常識を覆してしまうかのように、平然と逆袈裟切りを繰り出す。

 アジルは大剣を以て防御する。すると、周りに衝撃波が走った。それほどの威力があった証拠であるが、シロの持つ細剣レイピアは折れていなかった。……それどころか、アジルの持つ大剣が震えて悲鳴を上げている。


「っ!?」


 アジルは目を見開く。この大剣は特注品であり、頑丈さは他の剣と比べても上から数えた方が圧倒的に早い。

 まして、周りに衝撃波が渡るほどの威力でぶつけられたにも拘わらず、シロの持つ細剣レイピアには罅一つ入ってなどいないのだ。それに対して自分の持つ大剣は、罅こそ入ってはいないものの悲鳴を上げている。

 普通ならばあり得ないことであり、今までにこんなことはなかったがためにさすがのアジルでも驚く。

 だが、驚いているのはアジルだけではない。

 細剣レイピアよりも大剣の方が圧倒的に強いということは、戦闘の経験がない者でさえも知っている周知の事実だ。

 それなのに、その常識を一瞬で崩された観客達は、数秒経った今でも拮抗している二人を見て唖然としている。


『お、おお、おおお!? なんと、我々の常識では、細剣レイピアと大剣がぶつかれば細剣レイピアはたちまち折れてしまうはずだが? シロ選手の持つ武器は全くダメージを受けていないようだ! それどころか、悲鳴を上げているのはアジル選手の大剣だ! いったいどういうことなんだ!?』


 司会の男とて長年武闘大会の試合を中継してきている。驚いて状況を整理したくても、我慢して戦いの実況を詳しく伝えることは可能だ。

 故に現在の状況を、わざわざ観客に疑問という形にして投げかけている。

 それに呼応するように、観客達もざわつき始める。

 だがアジルはそれどころではない。少しでも力を抜けばこの拮抗は途絶え、自分が押し負ける。……いや、拮抗しているというのも苦しいかもしれない。

 アジルは華奢な少女の細剣レイピアを受け止めているだけで精一杯だが、シロの方は歯を食い縛っているような様子はない。

 何かと常識が通用しない少女だが、アジルもそんな少女になど負けてはいられない。

 全身に力を入れ、大剣――魔剣である相棒へと魔力を注いだ。

 たちまち剣身は赤く染まり、熱を帯びる。

 シロもさすがに危険だと判断したのか、はっとした後すぐに跳び退った。

 アジルはその間に魔力を注ぎつつ体を休め、シロの様子を観察していた。


(小柄で華奢な体格を持っておきながら、どこから出てくるのかわからないほど強い力の持ち主か。……それに)


 アジルは一瞬、シロの持つ細剣レイピアへと視線を向けた。

 その剣身は真っ白で、派手な装飾のない、しかし高価なものだと思わせる独特の雰囲気を放った剣だった。

 ――〝古代遺産アーティファクト〟。

 人々()()をそう呼ぶ。古代の技術で作られた特別な魔道具であり、現代のものよりも大きな力を持っている。誰もが欲しがる宝物であり、売れば当然の如く大金が手に入る。

 それは古代に作られたもののみがそう名付けられるのであり、現在ではその技術も失われ、一部の研究者は古代の技術でいくつか古代遺産の模造品を作っているが、一般の魔道具よりは性能が良いものの、本物の古代遺産には到底及ばないという。

 数もかなり限られており、現存するものは世界でも百を超えないと言われている。

 さらには、完璧でなくても上手く使いこなせる者は世界でもかなり少ない。

 古代では魔力の通し方、魔道具の仕組みから違っているため、そういったことが起こる。

 しかし目の前にいる少女はどうだろうか。大剣に悲鳴を上げさせるほどの威力でぶつけたにも拘わらずびくともしていない所を見ると、上手く魔力を通して大剣にダメージを与えていたということになる。

 徐々に赤く、熱くなっていく剣身を横目に、アジルはシロの隙を窺っていた。

 すると、シロはちらりと脇を見た。当然、相手に隙を衝かれないよう細剣レイピアで牽制をして。

 シロの視線の先にいたのは、アルだ。頭巾によって目元は隠れているので、アジルもシロの視線に動きがあったことに気づくのが遅れてしまった。アルは当然他人の視線には敏感なので、意味ありげな視線を受け取って表情を引き締める。

 外套の下で腕を組みながらも、いつでも動けるようにはしていた。

 もともとシロという少女には警戒せねばと思っていたのだ。それが、今自分に向かって流し目を寄越してきた。警戒心の強いアルが、気にしないはずもない。


「あなたに恥を掻かせたくはないわ。……だから、私が晒し者になってあげる」

「……っ?」


 アジルは、シロが何を言っているのかわからなかった。だが聞き返す前に、シロは左手を頭巾に手を掛け、降ろした。

 ざわり、と。闘技場に波が起こったかのようにざわめく。

 さすがのアルも、その隣にいるアランも、驚きで目を見開いていた。

 その理由は、当然シロにある。……いや、シロの髪色にある、と言った方が正しいだろう。

 シロの髪の色は、午前の太陽の下に輝く白銀色だった。外套の中に入れていた長い髪を掻き上げるようにして外に出し、頭を振って微笑んだ。

 細長いような、冷たいような、しかし温かさも感じるという矛盾した大きな赤い瞳。桜色の唇に向かって伸びる鼻筋はまっすぐで、凛とした顔立ちは幼さと美しさが合わさったような不思議な感覚だった。

 一言でいえば、美人だ。

 頭には狼のものと思われる耳があり、自信にあふれた笑みは気品すら感じる。

 そして同時に、皆納得もしていた。

 シロはただの少女ではなかったからだ。……白銀の髪を持つ、戦闘民族の末裔――レイヴァだった。

 戦闘能力が高く、圧倒的に大きく重い武器を携えているアジルが対抗するのに苦戦していた理由の一つだろう。恥をかかせたくないというシロの言葉の意味も、今ここでようやくわかった。


「悪いけど、まだやめるわけにはいかないのよね。勝たせてもらうわ」

「……なるほど。だがこちらも、負ける気はない」


 アジルは目を細め、そう呟いた。だがそれに対抗するように、シロは笑みを深める。


「……じゃあ、始めましょうか」


 再び細剣レイピアを構え、アジルも愛剣を構える。赤く熱を帯びた大剣は空気を揺らし、アジル以外の会場の者たちに熱を伝える。

 二人は同時に地面を蹴る。一気に距離を縮め、剣と剣を交えた。

 金属同士が激しくぶつかり合い、両者は激しく動き回る。

 彼らは互角なように見えた。だが、一部の強者には、すでに勝敗が見えていることだろう。

 アジルの剣線には、余裕がないと。


「うッ!」


 華奢な体格の可憐な少女に、しかも細剣で、体格のいい大男が舞台の淵にまで吹き飛ばされた。

 当然そんなチャンスをシロが見逃すはずがなく、一瞬で距離を詰め笑みを浮かべる。


「……楽しかったわ」


 最後にアジルへ一言。小さく囁いてからアジルの持つ剣へ、ここでようやく細剣レイピア本来の使い方である突きを放った。

 アジルは咄嗟に大剣を握る手に力を入れたせいで、そのまま舞台下へ落とされてしまった。


『……勝者、シロ!!』

『うおおおおおおおおおおお!!』


 会場は大いに盛り上がった。

 誰もが予想しない結果になったためか、逆に面白かったと盛り上がる者が多かったためだ。


「……さて、いくらになったかしら」


 この大会の恒例行事ともなっている賭け。試合前にどちらが勝つのかを予想して金を賭け、倍率を競う。

シロは倍率が高いであろう自分に自分で賭けていたため、何十倍という数字になって返ってくることだろう。

舞台から降りれば、アジルが苦笑いを浮かべながら近づいてきた。


「……完敗だ。俺もまだまだだな、こんな美人にボロ負けしてちゃ」

「いいえ、あなたは十分強いわよ。自信を持って、さらに上に行きなさい」


 とても優しく美しい笑みを浮かべながら、シロはアジルへと告げる。観客はそんな二人に注目しながらも未だに盛り上がりを見せている。


『まさかシロ選手が戦闘民族の末裔であるレイヴァだったとは驚きだったな! 今後の試合もどうなるか楽しみだ!』


 少しずつ落ち着きを取り戻してきた会場へ、司会の男がそう告げた。

それに呼応するように共感の声を上げる観客たち。その間に、次の試合の準備をする従業員と、未だに仲良さげに会話をしているシロとアジル。

この後アジルに話しかけようかと考えているアルやルミナ達、そしてアルファ達。

同時に、アルのシロに対する警戒心が膨れ上がった。

こんな大衆の前で白銀の髪を晒すなど、いったい何を考えているのかと。

普通なら、同じ戦闘民族の末裔として、注意喚起や忠告をしただろう。しかしシロは、どこか纏っている空気が違うのだ。

 アルの場合はこの世界が生まれた時から存在しているのもあって、彼が持っているのは戦闘民族の末裔レイヴァの血ではなく、正真正銘の戦闘民族レイヴォルスの血。だが現在ではそれを誰かに言うなどということはしていない。

 そんなアルの感覚からしても、シロがレイヴァではないような気がしている。

中にはレイヴァに化けてレイヴァに近づこうとする愚か者さえいるのだから、それだと思うかも知れない。しかし偽物というわけではない。

アルはじっとシロを見つめながら、違和感の正体に気づこうとしていた。

元々、シロを初めて見た時から違和感はあった。

既視感というか、懐かしいような気がしているというか、何とも言えない感覚に侵されていた。

アルの表情は全く変わっていないので、アランにはただ二人の会話をただ遠目に見つつ高い聴力で聞いているようにしか見えなかった。

やがて会話が済んだのか、二人で並んでこちらに歩み寄ってくる。アルは歩き出し、シロ……ではなく、アジルの方へと話しかけた。


「ちょっと、いいか」


 まったく感慨のない、いつものトーン。アジルはそれを聞いて、一度立ち止まる。

 大剣は背の鞘にすでに収められており、少しだけ疲れたような顔をしつつもアルの呼びかけに応じた。


「なにかあったかね」


 小柄な少年に話しかけられたことでアジルは若干の驚きを感じたが、表には出さない。ここはさすがに一国の中将をやっていただけはある。

 感情に敏感なアルやシロは、そんなアジルの感情の変化にもしっかり気づいていたのだが。


「会って欲しい人がいる。この後時間はあるか。……主に、昼頃」

「ああ、負けてしまったからな。特に予定はない」


 アルの纏う空気が只者ではないことを感じ取らせていたのだろう。アジルは若干の警戒心と緊張感を持った声で応じた。


「……じゃあ、昼になったら選手用の出入り口で合流しよう。待ってる」


 それだけ言って、アルはアランの待つ場所へ戻っていく。シロはそんなアルをしばらく見ていたが、やがて小さくため息を吐き、アジルにも何を言うでもなくその場を去った。

 動くたびに揺れる癖っ毛な髪は美しく、まるで真珠のようだ。そんな洗練された動きと美しさに何人かの観客が見とれて、あるいは目を奪われていたが、シロが会場から姿を消すと何とか元に戻っていく。


「さ、アラン。行くぞ」

「え、行くって、どこに? 次の試合を見るんじゃ……」

「馬鹿野郎。さっきの試合見ただろ。お前の次の対戦相手は誰だ?」

「…………」


 次の対戦相手。アランは一回戦で勝利し、次の試合に進める。しかしこれはトーナメント戦だ。

 二回戦で勝利した者が、アランの試合相手だ。だからこそ、アルは相手の動きをよく見ていろと、ここでシロとアジルの戦いを見せたのだから。


「誰だ?」


 しっかり問いに答えろとばかりに振り向きながら、アルは声を少し声を強めにして再び問う。


「……し、シロ」

「そう。あいつは強い、それだけじゃなくてレイヴァだ。彼女が本気でかかればお前なんか赤ん坊も同然なんだ。少しでも特訓しとかなきゃ駄目だろ。わかったら行くぞ」


 そう言い放って、アルは構わず会場から出て行った。

 厳しい訓練が待っているんだと少し憂鬱になりながらも、アランはそんなアルに渋々ついて行くのだった。

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