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水の聖者~20の柱~  作者: 森川 悠梨
第一章 冒険篇、白の魔術師
23/33

暗黒大戦

「じゃあ、始めようか」


 応接室の部屋に響いたアルの声。


「……っと、ロイはどうする? これから結構難しい話になるんだけど」

「ロイ、今からとても難しい話になるんだって。お外で遊んでる?」


 ロイは、ハーフとは言え純血のハイエルフだ。

 エルフも妖精の一種なので、それが理由なのかピクシーたちともわりと仲良くしていた。

 だからこそ大丈夫だろうと思ったのか、ユウキがそう話しかける。


「ああ、そうだな。それがいい」

「……うん、わかった」


 ロイも子供とはいえ空気の読める子供だった。

 ……だが今回の場合、やはりハイエルフであるがために思考能力の才能があるからなのか、単純に難しい話と聞いて退屈なのは嫌だと思ったのか。

 思考力に関する才能があるとは言っても、それでも大人たちの雰囲気を見て自分がついて行けるような話ではないと思ったのだろう。

 ともあれ、ウォルが外までロイを連れ出して、屋敷の結界からは出られないために妖精たちにロイを任せ、戻ってきたところでアルが説明を開始する。


「さて。俺が先にこっちに戻ってきたのは、これを調べるためだったわけなんだけど……」


 一旦言葉を止め、アルは立ち上がる。そして異空間に仕舞っていた杖を取り出す。……それも、ただの杖ではなく、呪術を使う上での、魔道具の類。


「杖?」


 アルは普段から魔術を使うためには杖を使わない。それはやはり魔術師として魔力との親和性が高いために必要はないということなのだが、だからこそここで杖が出てきたのには疑問に思った。


「ああ、魔術を使うための物ではなくて、呪術を使うための物だ」


 その言葉を聞いて、全員が納得の声を上げる。

 呪術を使うには魔力もそうだが、精神力と体力もまた必要になる。

 割合で言えば、魔力四、精神力三、体力三といったところだろう。

 魔力十の魔術や魔法と違って、人を呪ったり異界を覗くといった行為をする上で、魔力だけでは足りないというのもある。

 時には、自分の一部……それこそ心臓や眼球、舌など代わりのない物から、髪の毛や血液、皮膚など回復するものまで様々だが、ともあれそれらが必要になる術もある。

 要は、必要なのは結局は魔力だけではなく自分自身という風にも言えるだろう。

 もともと魔術を得意としているアルだけに、呪術といった普段は使わない術には、魔法使いで言う発動体のようなものは必要になるのだろう。


「で、なんで今回呪術を使うのかというと、だな。……これから、みんなに異界を見てもらう」

「異界?」


 何故? といった気持ちを込めて呟かれたアリュスフィアの言葉に、他の面々もうなずく。

 ルミナやゼロ、ウォルといった面々も説明されていないのか、不思議そうに首を傾げるだけだった。


「ああ。今回起こっているのは、間違いなく暗闇戦争……いや、暗黒大戦の前触れだ。だけど、今までのその間隔は長くて百万年、短くても十万年くらいだったんだ。差は広いけど、滅多に起こらないからこそ人々は暗黒大戦に対してほとんど危機感を覚えない。その時代の人が生きていないという弊害から、当時の悲劇を語る人がいないからだ。それはどうにもならないけれど、ともあれそんなわけだ。……意味は、分かるか?」

「つまり、前回も含めてそうだけど、今回は更に異常だと?」


 アランの問いに、アルは間もなくうなずく。

 今までは短くても十万年の間があった。

 そのお陰で一般の人々はそれらを神話として語り継いでしまう。つまり、実際に起こったことなのか疑ってしまうのだ。

 この世界の歴史は長い。……いや、長すぎると言っても過言ではないのだが、やはり神話に年代はほとんど意味はない。

 あまりにも昔の暗黒大戦の記録は人々の中に残ってはいない。

 だからこそ、人々が暗闇戦争と呼んでいる人類と闇の種族の戦いは、悲劇のお伽噺として扱われていた。……そう。いた、のだ。

 その言葉が過去形になったのは、五十年前の暗闇戦争……暗黒大戦だったのだ。

 今までお伽噺だとばかり思っていた大きな戦争が、実際に起こってしまった。

 人々は混乱した。

 人型をしているが、真っ黒で、顔もない、得体の知れない怪物がいきなり襲いかかってきたのだから。

 人々は虐殺された。

 名もなき漆黒の怪物は高い戦闘力を持ち、それこそAランク冒険者でもほとんど互角だったのだ。そんな相手に、数だけが集まっても意味はない。

 それこそSランク冒険者にならなければ、一人で数体の怪物を相手にすることはできなかった。

 しかし、現実は残酷だった。

 そんな、Aランク冒険者でも互角の相手が、何百、何千、何万と現れたのだから。

 田舎に暮らす者は国の機関がかなりのコストを背負って転移魔法を使い、王都やそれに相当する大きな街に避難させ、騎士団やAランク以上の冒険者たちが守りを固めていた。

 だが、冒険者とはランクが上がれば上がるほど人口が少ない。

 冒険者の割合の中でといったところだが、それでも少ないことに変わりはない。相手は数万を超える軍勢なのだから。

 そんな戦いは何十日も続いた。

 空は真っ黒な雲で覆われ、太陽をしばらく見なかったことで人々は気力を失い、死の恐怖から発狂する者まで現れた。食料の類は国が惜しみなく配っていたが、それでもいつまでも持つはずがない。

 そんな中で出された、リリーズ王国からの発表。


『世界中で現れている黒い影は、闇族と呼ばれる闇に生きる種族であり、これは、一万年ぶりに勃発した、暗闇戦争である。光属性の魔法ならば、初級の魔法でも倒せる。現在、″白の魔術師″が解決に向けて行動中。それまで、負けぬよう奮闘せよ。リリーズの戦力を各国に送る』


 一万年ぶりに勃発した、暗闇戦争。

 暗闇戦争というのは、幼い頃から親に聞かされたお伽噺で知っている。

 だが、それはあくまでお伽噺であり、一万年前に起こったと云われる戦争に関しては本気で信じてはいなかった。

 だからこそ、その知らせを聞いた人々は衝撃を受けた。しかし、無知はこの場合、人々に恐怖しかもたらさない。だからこそ、全王もこれを発表することを決意したのだ。

 そして戦争に終止符を打つために知る人ぞ知る、″白の魔術師″が動き出した。

 数の少ないSランク冒険者だっただけに、″白の魔術師″は世界でもそれなりに有名だった。彼を知っている者は、きっとSランク冒険者なら解決してくれると信じる者、影の数体と戦うのが限界のSランク冒険者が、何をするのかと思う者。

 だが、街の外を護るだけ――あるいは何もできなかった――が精一杯だった自分たちに比べ、解決に動ける者がいるのなら、それに賭けるしかないのだろうと。

 数十日も絶望が続いた人々にとって、その知らせはわずかな希望でもあったのだ。

 そして実際に……″白の魔術師″は、見事暗闇戦争を終わらせた。

 詳細に何をしたかというのは公開されていないが、リリーズ王国の全王が、戦争を終わらせたのは″白の魔術師″だとはっきり告げたことから、アルは世界の英雄として謳われるようになった。

 それらを説明されたアラン達は、相槌を打ちながら聞いていた。

 五十年前の悲劇ということで、当時の人間もまだ生きている者が多い。

 五十年前の戦争で命を落とした者は、百億を超えるという。世界人口の約三分の一以上の命は、数十日の間で消えたのだ。

 ただのお伽噺だと思っていたからこそ、人々に与えた衝撃は大きかった。今度こそは、お伽噺だけでは済ませてはいけないと。また先の未来にこの戦争が起こった時に、ただのお伽噺だと頑固に現実を信じようとしない者が出ないようにと、語り継ぐことにしていた。

 それは世界の者たちの共通の想いだった。

 だが、アルは。これまで何度も暗闇戦争――彼の呼称では暗黒大戦――を経験してきたアルは、知っている。

 これまでどれほど多くの人がそれをしようとして、失敗してきたこと。

 結局、時間というのはどうしても人の記憶を消してしまう。悲劇を、忘れてしまう。

 今だってそうだ。

 五十年も経っているのだ。その時から生きている、戦争の記憶がある者は五十歳を超えているのだ。

 人間の寿命は短い。……そう、非常に短い。

 長く生きるエルフやドワーフ、人間より少し長い獣人などはまだいいかもしれない。

 だが、長命種族というのは、生きる時間が長ければ長いほど繁殖力が低い。そのため世界で最も人口の多い人間との関わりというのはどうしても少なくなるものだ。

 ……だからこそ、一番知っていなければならない人間が、悲劇の記憶をどこかへ放り出して捨ててしまう。

 ……だからこそ、一万年前にも同じように、しっかり語り継いで歴史として残そうとした人がいても、今回のようにお伽噺だとしか思っていなかった者が多く……いや、ほぼ全てなのだから。

 その例外に当たるのは、やはりアルや彼の兄弟姉妹だろう。だが彼らは自分たちの秘密を公にするわけにもいかないし、悲劇を忘れた人々にいくら忠告しても、警告しても、鼻で笑われて終わる。


「……怖い、ね」


 ミーシャが、ぽつりと呟く。

 誰だって怖いのだ。そして、アルも。


「当り前だ。戦争は、起こるべきものじゃない」


 手に持っている杖の柄を握り、目を細めるアル。


「……で、だいぶ話が逸れたんだが、とにかく前回も含めてだが今回は異常だ。闇族は普段、異界に暮らしている。繁殖力が高くて、寿命はあるが寿命が尽きるまで、死なない。半ば不死に近い状態なんだ。だから、奴らを絶滅させることは難しい」


 ここで、不可能、と言わない辺り、アルの高いプライドと悔しさがあるのだろう。


「人と慣れ合うことができない奴らだから、決して交渉しようとは思うなよ」

「うっ……あ、いや……」


 アランへと視線を向けて告げられた言葉に、アランは図星を突かれたのかそんな声を出す。


「……はあ。駄目だぞ。駄目だからな」

「なんで二回も」


 大事なことなので二回言いました、とでも言いたげな顔を作ると、アルは他の面々を見回す。


「……で、だ。今から、その闇族が暮らす世界を覗く。……気絶するなよ」


 言って、アルは杖を強く床に突いた。

 彼が言っていることの意味がよくわからなかったのか、アラン達やアルファ達は首を傾げていたが、ウォル、ルミナ、ゼロが真剣な顔で身構えているのを見て自分たちも構えた。

 アルが床に杖を突くと、そこを中心にして紫色の光と黒く細い煙のようなものが立ち昇った。


「――――……。――、―――――」


 理解不能な言語を呟くアル。

 そんな彼の足下から現れる煙や光にどこか神秘的な雰囲気すら感じたアル以外の面々だったが、それをゆっくり見ている暇などなかった。

 アルを中心として発せられるプレッシャーのようなものが、体にどっと押し寄せてくるのだ。

 アルがロイをここから出したのは、こういう理由もあった。

 子供の体では、とてもではないが耐えられるようなものではなかったからだ。

 今まで窓から差し込む光で明るかった部屋は、暗くなる。ただ、アルを中心として光が生み出されていた。


「なっ……!?」


 そんな声は、誰が出したのかはわからなかった。

 だが、それを気にしていられるほど、余裕はない。

 それはアルも同様だった。

 異界を覗くといった行為は、普通なら一人だけで覗くのが精一杯なのだ。非常に高い魔力量と体力、長年培ってきた精神力のお陰で、これだけの人数が一度に異界を覗くといったことができるのだから。

 アラン達の目の前に広がっているのは……星空だった。

 それも、三百六十度、どこを見ても満天の星空。それこそ、ここは空の向こう側だと言われても、非常に納得できるほどの、圧倒される美しい景色。

 その景色に目を奪われ、ただ呆然とするアラン達。その中には、ルミナやゼロ、ウォルの姿もある。

 だが、それを眺めることができたのは、ほんの数秒。すぐにその景色は霞のように消え、気がつけば元のように日の光りが差し込む広い応接室に戻っていた。

 すると、今までの緊張が解けたからか、全員が荒い息を吐いていた。今までずっと息をしていなかったのか、一気に息を吐いては吸ってを繰り返していた。と、そんな時……


「ぁ……」

「アルスレンド様!」


 床に座り込んで杖を落としたアルに、ウォルとルミナ、ゼロが慌てて近づく。


「アル、大丈夫?」


 アルは苦しそうに喘いで、額に薄らと汗を浮かばせていた。

 数秒ほどすればだいぶ息が整ってきたのか、浅く息を吐きながらも返事を返した。


「大、丈夫。ちょっと、さすがに、この人数は、きつかったな……」

「申し訳ございません、私がこの部屋から出て行けば良かったものを……」

「いや、いい。ウォルにも見てほしかったからな。……で、見たな?」


 何を指しているのか、言われるまでもないだろう。ソファに座りながらそう尋ねるアルに対して、立ち上がりかけたアラン達も座り直してうなずく。


「闇族は光が弱点だけど、決して、全く光のない場所で暮らしているわけじゃない。お前たちが見た星くずのようなものは、全部闇族の魔力の塊だ」

「えっ、あれがか!?」


 驚きの声を上げたのは、アルファだった。

 何度か苦戦して倒したことがあっただけに、驚きは大きかったのだろう。

 闇族は普段、魔力の塊として異界を彷徨っている。そしてこちら側の世界に入り込んでくるときにのみ、あのような黒い影の姿になるのだ。

 彷徨っている、と言ったが、その際は意思も意識もない、あくまで魔力の塊の状態だ。

 それを理解してか否か、あの状態の闇族ならば簡単に倒せるのではないか。そう思ってのアルファの叫びだった。


「やめろ。そもそも異界に渡るのは自殺行為に等しい。それに、忘れたか? 闇族は寿命が尽きるまでは死なない、半ば不死に近いってこと」

「……もちろん、忘れてはいないさ」


 アルファもそれはわかっている。だが、そんな厄介な能力がなければ、簡単に異界に渡ることができれば、闇族は全滅していたかもしれない。

 だが、それができるようならばアル達とて馬鹿ではないのだから、人が思いつくようなことはすべて試して失敗しているのだ。

 だからこそ、今でも暗黒大戦などというものが勃発するのだから。


「……それで、その中に、いくつか強い光を発しているもの……星空で言う一等星や二等星の類があっただろ」


 それを聞いて、他の面々は先ほどの景色を思い出し、うなずく。


「あれは闇族の中でも大きな魔力を持つ、貴族階級。貴族階級は他の闇族と違って人間以上に知能が高く、戦闘力も高い。言葉も喋る。……そういった者の数が、前よりも異常に増えているんだ」


 これが、アルの言いたかったことだったのだろう。

 表情に影が差し、同時に他の者も驚きを隠せずにいた。

 知能が高く、戦闘力が非常に高い。

 それをアルが言っているのだ。世界一と謳われる、あの英雄が。

 アラン達に対する影響は、それだけでもかなり大きい。


「それに関してはこっちで処理をする。で、異常とはいえ今回はそれほど大規模にはならないのは確実だ。暗黒大戦は間が開けば開くほど激しいものになるんだ。それは傾向や経験なんかじゃなくて、理論的な結論だ」

「理論的?」

「ああ。闇族は長い時間をかけることで力を溜めて、世界を滅ぼそうと動くからな。たった五十年じゃ、まだ力を溜めきれていない奴も多くいる。数もかなり少ないはずだ。……まあ、だからと言って油断するつもりは毛頭ないが」


 目を細めて告げられるその言葉に、アラン達の目も細められる。

 当然だ。暗黒大戦は()()()生死を懸けた戦争なのだ。ただでさえ戦闘力の高い闇族と戦うのだ。少しでも気が抜ければ、待っているのは死、のみ。

 もっとも、今のところ闇族と主に戦う予定なのはAランク冒険者以上なのだから、油断する者などいないだろうが。


「ともあれ、今回わざわざここに集まってもらったのは、この術を誰かに見られるわけにはいかなかったということだな。さすがに隠しようがない」


 アルの《固有魔術ユニーク》でもある《視線逸脱ガイズアポーキシ》という魔術がある。

 興味、集中的な注目といった視線を逸らさせるという闇属性の魔術だが、その術者であるアルは呪術を使うので限界であり、とてもではないが魔術を同時に使っていられるような状態ではなかった。

 普段から使い慣れていないだけに、呪術というのはアルにとってかなりの労力を費やしていた。

 そんな中で魔術など同時に使っていれば、それこそ命を落としかねない。そんな危険な真似をするくらいなら、ここのような人が全く来ない場所で行った方が良い。

 呪術師というのは、魔術師ほどではないが希少な存在なのは間違いない。

 闇属性の魔法術に似てはいるが、呪術というのはその闇属性以上のことができるのだ。だが、闇属性がそれほど人気ではないということもあり、呪術師を目指そうとする者はいるものの実際になれるのはほんの一握りだ。

 呪術を習得するには、性格の問題もある。

 アルのように優しく繊細な性格を持っている者は、使いこなすどころか習得すら難しい。呪術とは本来、人や物に呪いをかけるという術なのだから。

 それでもアルが異界を覗くなどといった、呪術の中でも上の上を行くほどの難易度のものを使えるのは、長年の修行と負けず嫌いの性格のお陰なのだろう。

 呪術師には好奇心旺盛な性格の者が多い。……というより、研究者や錬金術師のように、好きなことに強い興味を見せるような者でなければやってはいけない。

 アルもまた、呪術師をやる上では珍しい、優しく繊細な性格の持ち主ではあるが、同時に好奇心旺盛で負けず嫌いな性格だ。

 何にでも興味を示す性格であり、同時に興味を持ったものに対して必死に上を目指そうと頑張る心が、功を成した形だ。


「……アルスレンド様、顔色がよろしくないですよ」

「……白いよ?」

「大丈夫。本当に。ちょっと、呪術を使う代償に精神と体力を使ったからな。……まあ、座っていれば問題はないさ」


 疲れたような顔をしてそういうアルだが、言葉は真実のようで、ウォルもルミナもそれ以上は言わなかった。


「で、だ。アラン達には、本来ちょっと早いんだけどさっそく訓練を始めようと思ってな。……今日はさすがに御免だけど」


 それを聞いて、ウォルは安堵の息を吐く。これから、今からやると言ったら、なんとしても止めるつもりだったからだ。

 アルは呪術を使ってしまった影響で体力と精神を消耗している。これ以上動き回れば、倒れてしまう。そう考えていたのだ。


「じゃあ、俺たちの方でやるよ、アルさん」


 提案してきたのは、レイ。

 彼らはアルの呪術に便乗した形で、特に疲れなどはなかった。

 ……いくらかの疲れはあるのだが、それは到底アルには及ばないし、これくらいの疲れは痛くも痒くもないというのが正直なところだったのだが。


「そうだな、それがちょうどいいだろ。……悪いけど、俺は寝る」


 小さく欠伸をしながら、話は終わったらしくウォルと共に部屋から出て行った。


「あー……ごめんね。眠くなった時のアルって、結構大雑把になっちゃうんだよね。訓練場に行きたいんでしょ? 案内するよ」


 ルミナが立ち上がり、アラン達もうなずいて立ち上がった。


「じゃあ、私はお昼ご飯でも作ろうかな」


 ゼロはそう言って、部屋を出た所で彼らは別れて行った。


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