終末の開演
ーーー2054年8月ーーー
そこは大きな港だった、背後にはそれまで人が住んでいた家屋やビルが倒壊していた
大地は煌々と燃え、どこからかまた、爆発音が聞こえてくるような状態だった
そこは大きな都市だった、これまで人が普通に生活し、営みを、繁栄を繰り返し巨大化していた都市だった
いまそこには生活の影だけを残し、ひとつ、またひとつとその影すらも崩れていた
動くのはただ一つ、『meme』(通称:ミーム)と呼ばれる生物群だけ
体長は4mから10m前後で、見た目は地上にいる生物のそれと酷似している
体組織のほとんどが鋼のような金属でできているため物理的な干渉はほとんど意味はなく
電気も通さないその生物は、2048年、中国で発見され瞬く間に全世界へ広がった
彼らは肉という肉を喰らい、目の前にある建物や機械をも喰らいながら進むのでその侵略の後には文明は残らない
人がそれに対抗する手段はなかったが、幾度もの敗戦の末、彼らが熱に弱いことを突き止めた
寒冷地においては動きが鈍りー18度よりも低い温度の土地では活動ができなくなること
逆に高温においては鋼と同じ強度を持つ体組織ですら熱を通してしまい高強度の鎧の内側にある肉体が熱で死滅する
体組織自体も、高温に弱く、金属の様な表面の組織が崩壊しやすくなるので超高温で攻撃することが有効とされた
以上がが奴らに対する弱点と判明してから、人類はようやく攻勢に出ることができた
それが彼らの侵攻が行われた4年後の2052年の出来事だった、その時にはもう、ユーラシア大陸の約7割とアフリカ大陸が
彼等ミームの手によって、陥落していた
幸い、ロシアはその環境のためか、彼等の侵攻は遅く海を渡って逃げることのできなかった多くの人が
ロシアの地に、北に逃げ、軍隊が彼等を殲滅する時を待っていた
ミームは地上での動きはとても素早く小柄とはいえ、人が走る程度の速度で追いかけてくることができる
だが、水の中での動きは一転し亀のほうが早いのではないかと思えるほど動きが鈍る
これは彼らが太陽の光で活動をしているからではないか?と言う意見もある
もちろん、これは一説にしかすぎず、これを証明するものはない
そして、いま彼等が蠢くそこはその場所は、日本の九州は長崎、日本の最初で最後の防衛地点である
『作戦本部、こちらストライカー試験部隊チームアルファ、位置についた、攻撃指示を仰ぐ。』
ヘッドギアから聞こえる通信音声、待ちきれなくなったアルファの隊長がおそらく通信を行っているのだろう
周りから聞こえる電子音や機械音よりもよく聞こえるその喉太い声が耳を刺激する
『こちら作戦本部よりチームアルファ、もうしばらく待機しろ、チームブラボー、チャーリー、デルタ、応答せよ。』
『こちらブラボー位置についている。』
『チャーリー、同じく。』
「デルタ、問題はない、機体にも問題なし。」
ストライカー試験部隊チームデルタの隊長、それが今の俺の役職であり
おそらく最後の仕事になるであろう役職だ
そして、その最後の仕事を飾るのは、一台数億円と言う
一生働いても稼げないような金額のストライカーと呼ばれる試験機体
最新機器や重火器をふんだんに盛り込んだ、かつパイロットの生命がロストした時には
あの小型宇宙人もどきを消滅させるほどの熱量で爆発すると言う花火付きの機械の棺桶
外観は全高6mほどの人型の機動兵器、胴体部分に人が乗ることで稼働する
所持している兵器は右腕に装備されている大口径のライフルと左肩に搭載されている長距離砲撃用の榴弾砲である
アルファとブラボー部隊は小口径のガトリングを腕に装備し港から2キロの地点で待機
チャーリーは両腕を小型の榴弾に方に大型の砲を搭載して5キロの地点に待機
我々デルタ部隊はチャーリーの少し前方に位置するの4キロ地点である、あんな小型の虫相手に
ここまで後方で狙撃まがいなことをしないといけないのはとても癪だが、我々デルタに与えられた命令がそれだから仕方がなかった
そして各部隊にこの試験機体が8機体配備され、それが全部で4部隊の32機体
それ以外にも、戦車部隊と航空部隊、そして海上部隊も遠距離からのミサイル攻撃の準備を進めていた
これが日本が動かすことのできるストライカーと戦力の全ての数で、現在本州では、国民をアメリカに避難させるために
航空自衛隊による決死の作戦が続いていた
我々の作戦はただ一つ、長崎の港に上陸してきたやつらを、できるだけその場で押しとどめ
国民を一人でも多く非難させることにあった
『海上自衛隊からミサイル攻撃の準備が整ったとの連絡がきた、これより長崎に向けミサイルを発射、着弾と同時に、エグゾダス作戦を開始する、各員無事を健闘する!』
『アルファリーダー了解!』
『ブラボーリーダー了解!』
『チャーリーリーダー了解!』
「デルタリーダー了解!全員気合い入れろ!これよりオペレーションエグゾダスを開始する!いつでも撃てるようにしとけ!」
通信機のチャンネルを全体からストライカー試験部隊専用に切り替えデルタの隊員に激励を入れる
その向こうから部下の声が聞こえる、そしてすぐに後方からミサイルの軌跡が見える
「来たか、全員トリガーロック解除、周囲一帯の爆破と同時に砲撃開始!あの虫どもを一匹も逃がすな!」
ミサイル群は一瞬で俺達の頭上を通り越し、4キロ先のミームの群れがいる港を火の海にする
爆発によるまるで地震の様な大きな揺れが期待を揺らし、その次に身を焦がす熱風が吹き付ける
それを各機、瓦礫に身を隠すことでやり過ごす
『各機!攻撃開始!』
作戦本部からの指示と同時に、全ての機体が攻撃を開始する
ーーーそれから6年後ーーー
ーーー2060年6月ーーー
ーーーサンタローザ日米共同立高等学校前ーーー
ミームの日本侵攻を日本政府は半年以上前から予測し、それにより抵抗手段を生み出すことに専念した結果
ストライカーと呼ばれる、全高6mの人型機動兵器を生み出すことが出来た
だが、時間が足りず、抵抗するに足る数をそろえることのできなかった政府は
その技術を持って米国に国民のほぼすべてを脱出させることにし
持てる移動手段を用いて1億人の国民を脱出させることに成功した
だが、その時の作戦に参加していた自衛隊は八割がその作戦で死亡したと言われている
生き残った自衛隊達は米国に入り、対ミーム専門の特殊部隊に入隊することになったと言われる
そして、米国に移った日本人達はオレゴン州、カリフォルニア州、その二つの州を日本政府に貸し与えられた
なぜ二つの州を貸し与えられたのか、その大きな理由は、敵が米国に攻め込んできたとき
おそらく、真っ先に攻撃が来るのがこの二つの州と、そしてワシントン州の3つの州であることが予想されたからだ
米国は日本の技術を自国に取り入れつつ、もし自国にミームが入ってきたとき、自国の民の命を犠牲にすることなく
自分の土地の一部、日本人を切り捨てる、その決断を簡単に決める事が可能になるためである
日本はそれを知りながらサクラメントに日本政府の国会を立てたうえで、日本を再建する手立てをさがしていた
そしてアメリカが海に面した州のなかでも、カリフォルニアとオレゴンにならぶ危険地帯の
ワシントンを残したのは、そこにの軍事技術研究所を置くことにより
最前線での技術研究を行いながら自軍による防衛、そして日本人の監視も可能にするためである
それが最初の段階からわかっていた日本政府は、対抗策として、日本のストライカーの技術を渡したが
その当時新たに開発されていた新技を渡さずに秘匿していると言われている
だが、その技術について、知る者は極一部で政府の人間ですら半数以上が知らされていないとされている
そして今、アメリカ、カリフォルニア州とオレゴン州の二か所に
日本とアメリカの協賛で新たに学生が通う為の学校を8か所建設した、両国以外にも今回のミーム侵略において祖国を追われ
アメリカに逃げることとなった、各国の若者に無償で勉学を教える中高一貫の学校を
「ハル!今日の帰りよかったらどっかよらなーい?」
「いやー、今日はバイトがあるから、パスするー、それよりもクレアは部活はいいの?」
「今日は休みだからいいのよー」
ミームの侵略が始まってから12年が経とうとしていた、彼等の侵略はまだ続いていたが
6年前の日本侵攻以来、アメリカ、ロシア、ドイツ、イギリスの四か国が日本の技術を手にし
ストライカーを量産に乗せ、多くの敵を倒すことに成功した、そのおかげで敵の絶対数が減ったのか
侵攻の回数は激減し、アメリカ本土への侵攻は今現在なく、ユーラシアで最も激しい戦闘が行われているドイツにしても
月に数回の大きな戦闘があるだけで、最初のころの、毎日死の恐怖と戦っていた10年前とは違い
安全性が段違いに変わったことに違いはない
そして、そんな世界があることを知りながら、平和な日常を六年前を知らない子供達は満喫していた
「そういえば、今朝の予防接種、クレア、ちゃんと受けた?」
「あー、受けたよ?注射はあんまり得意じゃないんだけどねぇ、ハルは?」
「受けたよ、あの注射、半年に一度受けるけど、痛いだけでなんの注射かまったくわからないんだよね。」
日本人にしては薄い白人にも似た肌と方で切りそろえられたダークブラウンの髪の少女
身長は日本人の女の子にしては少し高めの160中盤と行った所だろう
それが、春寺シオン(ハルデラシオン)、高等部二年生の少女だった
そしてその隣にいる春寺よりも身長が頭一つとびぬけて高く、肌も更に白く金色のウェーブかかった頭髪が
腰まで伸ばしているのがクレア・ハバット、アメリカ出身でサンタローザに通う生徒である
「じゃあ、クレア、またあとでね。」
「うん、バイト頑張ってねー」
二人はその言葉を交わし、そして別れた、お互い明日また会えると信じ、疑わず
クレアに手を振り別れてからバイト先への道を歩いていた時
彼女の携帯が音を鳴らす、携帯のボタンを押すと、光り輝く透明な画面が空中に浮かび上がる
『春寺コトミ』と文字が浮かび上がりそれを見てすぐに通話ボタンを押す
すると、空中に浮かび上がった画面にシオンに似た幼い少女の顔が画面に浮かび上がる
「もしもし、なにかあった?」
『お姉ちゃん今日バイトだけど、晩ご飯なにがいい?』
「あー、じゃあコロッケがいいなコロッケ、コトミのコロッケ美味しいから。」
春寺コトミ(ハルデラコトミ)、シオンの妹で中等部の三年生の妹である
『はいはーい、じゃあバイト終わったら買い物手伝ってね、いつもの時間でしょ?』
「うん、そうだよ、7時には終わるから、モールの前の噴水広場で集合でいいよね?」
『うん、おっけー、じゃあまた後でね!』
「またね。」
通話を終了して時間を確認する、16時13分、まだ17時からのバイトまで時間はあるが
早めに行って準備をしようと、早足でバイト先に向かう
ーーー同日、日本自衛隊ユージーン本部
「司令官、サンフランシスコ沖、西20キロの海底にて異常な振動を感知、振動の原因は不明、どうします?」
「振動の原因を解明しろ、サンフランシスコ沖ならサンフランシスコ海上自衛支部に連絡をとって、緊急事態に対処できるようにしろ。」
「了解、引き続き原因究明を行います。」
暗い部屋の中で多くの人と機械が所狭しと動き回っている
ここは、日本自衛隊のアメリカに作られた新しい本部である、そして政府とは完全に切り離され
独自の判断で防衛活動を行う事が許された数少ない組織である
以前の日本での戦闘の時も、政府の人間の判断が遅れたため、回避できたはずの被害が回避できなかったとされており
それを避けるために、この度、アメリカに本部を移すことになった暁に、指揮系統の改善を行った
防衛目的と言う名目上に限り、自衛隊は政府の指示を待たず、独自に行動をすることが可能となったのだ
「サンフランシスコ支部に加えて伝令、原因不明の振動に注意されたし、ストライカー部隊をいつでも稼働できるようにしておけと。」
「はっ!ですが司令官、それは、まさか。」
「念のためだ、6年前の悲劇は起こさせるな。」
「了解、サンフランシスコ支部に連絡を入れます!」
私の指示を受け、通信士がサンフランシスコ支部に連絡を入れる
これでもし、この原因不明の振動がミームだとしても、すぐに対処が行えるだろう
「もしこれがミームだとしたら、上陸までどれぐらいの猶予があると思う?」
「おそらく、5時間、と行った所でしょうか・・・。」
「そうか、念のために湾岸沿いの都市部に緊急避難指示を。」
「了解しました。」
時計を見ると、時間は16時半を告げていて、これから五時間後には、もしかすると
この新たな新天地でさえもが、線上になるかもしれないことを、ヒシヒシとわが身に伝えていた
ーーーサンフランシスコ海上自衛隊支部
「休憩中失礼します!ユージーンより入電、サンフランシスコ沖西に20キロの地点で異常な振動を感知、常時対処可能な状態にせよとのこと!」
部下が部屋のノックをおこない慌てた様子で部屋に入ってきた
ユージーンからの入電と言うのがまず異常事態なのだが、その内容が、海から異常な振動ときた
もちろん、海底地震程度であれば問題はないのだが、ここは日本と違いそんなに頻繁に地震の起きる場所ではない
さらに言えば、異常な振動、と言う単語が琴の重要性を加速させているような気がする
「さらにユージーンより、ストライカーをいつでも動かせるように、とのことです!」
「了解した、各部署の担当長、ストライカー部隊の隊長、および現在わが基地に停泊中の艦艇指揮官を会議室に呼べ、1710より緊急の会議を開くと伝えろ。」
「了解しました!」
部下が足早に部屋から出ていく、沖に20キロの地点で振動を感知したとのことだ
もしこれが敵なら5時間前後で上陸することになるだろう、最悪の事態を考えるならばあと一時間後には
避難勧告、そして海上に船を出しストライカー部隊をいつでも動かせるようにする必要がある
「はぁ、振動探査機もあと50キロ沖に出せるようになれば、もう少し余裕ができるんだが…。」
海底に打ち込まれた振動探査機電波を拾う関係上、それ以上沖に打ち込むと、電波が拾えなくなり
打ち込んでも意味がなくなるので、現状20キロより奥には設置をされていない
だが、近いうちに、振動探査機にブイを取り付けてその部位から電波を発信できるようにした新型を開発中とのことだが
結局のところ、本当にミームが近くを通った時、有線接続された、探査機とブイが切断されてしまう可能性を考慮すると
やはり有線では都合が悪くなるようで、開発が難航している
「海底近くに潜水艦を配置して索敵を行うという手も一度上がったそうだが、それも失敗の前例があるから、何とも言えんからなぁ。」
二年前、ドイツが海底に潜水艦を配置、敵の動きを監視していたことがあったが
敵はどうやら、海底近くにある潜水艦の存在に気づき、潜水艦に攻撃を行ったのだ
それにより、海底からある程度の距離に存在する艦艇、人が乗っている物体に対しての攻撃が確認されているため
潜水艦の有効性はミームに対しては無いことが判明している
「さて、今回の異常振動とやらが、杞憂に終わればいいのだが…。」
腕時計を確認する、時刻は16時50分を告げていた
ーーーストライカー格納庫
ストライカー、日本が自国を守るために作り上げた技術の結晶、そして外敵を自らの手で滅ぼすために作り上げた機械の鎧
しかしそれは、俺達の祖国を守るために力をふるったのはただ一度きり、そこから先は、各国に技術を提供し
一番最初に日本で作られたそれを初期型第一世代ストライカーと命名
アメリカやドイツ、イギリスの技術協力により各国で新型が続々と開発され
駆動部をより柔軟にし、地上での走行力を強化した第二世代
背部に戦闘機に使われるジェットエンジンを搭載することにより、推進力を強化した第三世代と世代も続々と入れ替わっている
現在、日本の自衛隊に配属されているストライカーはST-82s通称アサギリ
そして、ほぼ純日本産の技術のみを使って作られた最新型、第四世代ストライカーSJ-02通称ムラクモ
アサギリが各支部に40機、ムラクモが各5機配備されている、そしてこの格納庫にも現在30機以上の機体がずらっと並んでおり
さらに、いつでも出撃することが出来る状態の機体がアサギリ、ムラクモ、両機あわせて10機が格納庫の外で待機している
俺は先ほど訓練を終了させ、この格納庫に戻ってきたところだ
「俺のムラクモだが、左に旋回する時に、少しの違和感がある、おそらく右と左のスラスターの遊びが多少ずれてるからだろ、なんとかなるか?」
「はい、それなら先ほどのシュミュレーションでこちらも把握しています、報告ありがとうございます、すぐに修正させていただきます!」
「あぁ、よろしく頼む。」
格納庫にいた整備兵に声をかけ、操縦していた時の違和感をそのまま伝える、訓練の時に感じた違和感を細かく解消しておかなければ
もし、実戦になった時に、その違和感に俺達自信が殺されることになる、だからこそ、俺達は整備兵を信頼し
整備兵は、俺達の言葉を大切にする、もちろん、すべてが解消されなかったとしても
何割かが解消されるだけで、生存率は大幅に上昇するというものだ
そうして整備兵と言葉を交えていると、格納庫の入り口から一人の隊員が走ってくるのが見えた
その隊員は俺の目の前に来ると、すぐに息を整えて敬礼をする、俺はそれに返すと、隊員は口を開いた
「篠月大尉!今井司令より通達!1710より緊急の会議を行うとのこと!」
「なに?このタイミングでか?理由はわかるか?」
「はっ!さきほどユージーンより入電があり、海底での異常振動を感知、対策会議を開くとのこと!」
「そうか、了解した、さがってよし。」
「はっ!失礼します!」
伝達に来た隊員が走ってどこかに行く、おそらく次の場所に言伝に行くか、司令室に通達終了の旨を伝えに行ったのだろう
俺はそれを確認して、格納庫に停めていたジープに乗り込む、腕時計を確認すると16時58分となっていた
「輔!ジープを運転してもらってもいいか?」
「あ、篠月大尉、わかりました、場所はどこに?」
シャワーを浴びる時間も無いが、それでも服を整える時間ぐらいはある
俺は近くを歩いていた山本輔を呼び止め、車のキーを投げ渡す
輔はそれを受け取り、すぐさま格納庫近くに止めていたジープのエンジンをかける
こいつはストライカー部隊に今年配属された新人で、ずば抜けて運動神経や頭がいいわけではなく
言われたことをこなす能力と、元々航空自衛隊のパイロット志望でそれに受からなかったと言う理由で
このストライカー部隊に配属されることになった、人当たりの良い性格と類稀な操縦センスを持っているため
23と言う若い歳ではあるが、ストライカーのパイロットとして模擬戦では活躍している
「とりあえず司令部に、俺を下した後は、少しの間待機しといてくれ。」
「了解しました、緊急の会議ですか?」
「あぁそうだ。」
「もし、差し支えなければ、会議の内容を伺うことは可能でしょうか?」
輔は車両を運転しながらバックミラーで俺の方向に目を向ける
「簡単に言うと、サンフランシスコから西に20キロの地点で異常な振動を感知した、それがミームの可能性があるから、対策会議を行うらしい。」
「ミームですか、20キロの地点と言うと、もし上陸するとなったら5時間前後ですかね。」
「あぁ、だから早急に対処をする必要がある、上陸したら、俺達ストライカー部隊の出番だ、その時は任せたぞ。」
「了解です、篠月大尉、到着しました。」
「あぁ、すまない、駐車場で待機していてくれ、二十分程度で終わるはずだ。」
「了解しました。」
俺は輔を駐車場に残し、そのまま司令部の会議室に足を進める、途中で何人かすれ違ったが
誰もが足早にすれ違っていった、その表情はまるでこの世の終わりのような者もいれば
ようやく自分の出番がきたとやる気に満ち溢れている者もいる
そして、会議室の前に到着し、俺は一呼吸おいてから入室する
「ストライカー部隊部隊長、篠月!招集に応じ参上しました!」
声を上げながら会議室に入ると、そこには陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊のサンフランシスコ支部に配属されている部隊長達が並んでいた
誰もが大きな円卓を囲んでいて、この部屋の一番奥にはサンフランシスコ支部の司令官、村門志文司令官
そしてその両サイドには、飯塚副司令官と手塚作戦技官がいた、この会議室に陸海空の部隊長達が集まるだけでも大事なのだが
それには飽き足らず、あの三人が揃い踏みと言うのが、この事の重大さをここにいる全員にヒシヒシと伝えている
「では、全ての部隊長がそろったので、会議を行う。」
手塚作戦技官が最初の音頭を取る、それを、そこにいる誰もが黙って聞いていることを確認し彼は言葉をつづけた
「本日16時20分ごろユージーンがサンフランシスコから西に20キロの海底で異常な振動を感知、ここサンフランシスコ支部で対処することになった、くわしくは。」
「時間がない、回りくどい説明は後にする、全員よく聞け。」
手塚少佐の話が回りくどいと感じたのか、村門司令が口をはさむ、齢42歳、6年前の戦いの時、俺がいたストライカー部隊の
作戦指揮官をしていたのがこの村門司令で、俺と約数人が、あの戦い、ストライカーに乗り脱出できている
それは、この男の手腕があってこそだろうと、俺は思っている
だからこそ、この緊急事態、無駄をなるべく省き、簡潔に作戦を伝え行動を専決させようとしたのだろう
「陸上部隊は歩兵部隊を一般市民の非難に、戦車部隊、車両部隊は海岸から一キロの地点に移動していつでも攻撃可能な状態で待機。」
「了解。」
「海上部隊は今動かせる艦を海岸沿いを有効射程にとらえれるギリギリまで船を離し待機、最悪陸地めがけて砲撃もできるようにしておけ。」
「了解。」
「航空部隊は戦闘機、戦闘ヘリをいつでも出せるように、ホークアイは三時間後には空に上げておけ、以上。」
「了解。」
「各部隊、兵装は対ミーム専用装備への換装を許可、では動け詳しい作戦は後程無線で伝える!」
対ミーム専用装備、それは、超低温と超高温に弱いミームに対して開発された装備の事で
爆発することで周囲一帯の熱を瞬間的に奪い超低温にする気化冷却爆弾と
熱に弱い敵の装甲を貫通し体内で爆発するように開発された貫通型自爆信管の二種類である
これにより、近年のミーム撃滅率は6年前より以前に比べて数倍に跳ね上がっており
ユーラシア大陸のドイツとロシアがいまだ自分の国を守り続けることが出来ているのは
その新開発された兵装のおかげとされている
『了解!』
村門司令の指示で陸海空の部隊長や指揮官、さらにはイージスの艦長までもが一斉に動き始める
そしてその全員が会議室を出たのを確認してから、村門司令はこちらに目を向ける
「さて篠月大尉、歴戦の勇士の君に、今回のストライカー部隊とその他の部隊の合同作戦について、いくつか案を出してほしいのだが、かまわないか?」
「まぁ別にかまいませんが。」
「では、今回のほか部隊の配置は、こんな感じになるのだが、ストライカー部隊はどういう風に配置する?」
村門司令がそう言うと、照明の明かりが落とされ、部屋の中央のテーブル上に光で作られた立体映像が浮かび上がる
そこには北アメリカ大陸の西側、ここサンフランシスコ支部を中心に半径30キロ程
陸地が緑、海が青色の光で地図が立体化される
そして海岸沿いから陸地側、約一キロの地点にオレンジのマーカーが打たれる、これがおそらく陸上部隊の戦車部隊だろう
さらに今度は海側に7つ水色のマーカーが置かれるこれが海上部隊の艦艇のおおよその位置になるのだろう
「航空部隊の支援が来ることを前提に考えますが、まず50機あるストライカー部隊を10個の小隊に分けるアサギリ4に対してムラクモを1。」
そういいながら俺は、ピンク色のマーカーを10個用意する、それをそれぞれ、海岸北側に3、南側に3、中央に2
そして海岸から2キロのポイントにさらにマーカを2つ配置する
「強襲装備を8チームで敵の足止めおよび殲滅、狙撃装備を2チームで敵の撃ち漏らしを拾っていく。」
「なるほど、この配置なら確かに、敵の撃ち漏らしが出たとしても、それを撃ち抜きやすい位置に狙撃型が配置されていますね。」
「あぁ、それに、おそらくこれだけの戦力の投入だ、六年前のストライカーならともかく、最新型ストライカー、敵を撃ち漏らすほうが難しいだろう。」
敵の襲来予想地点を囲むようにストライカーを配置、その後方に戦車部隊が陣取っている、上陸と同時に
ストライカー、戦車からの攻撃、さらには艦艇からの砲撃も期待できる、これで敵を完全に封殺してしまう算段だ
だが、これには問題がある、それは、敵が襲来予想地点以外から襲来した場合、もしそうなった場合は作戦の早期立て直しが必要になる
現時点において、敵の襲来ポイントは、異常振動の動きから未来予測計算により大まかな位置が出されているが
これが必ずしも正解と言うわけではない、ただ、的中率が8割を超えているだけ、ただそれだけなのだ
「よし、この作戦を採用しよう、篠月大尉は急いでストライカー格納庫に戻り作戦の準備、装備の換装をお願いする。」
「了解しました、失礼します!」
敬礼をして足早に会議室を出る、そのまま司令部を出て駐車場で輔の乗るジープを見つけ乗り込む
「お疲れ様です大尉、格納庫に戻ればよろしいですか?」
「あぁ、頼む。」
俺は無線機を取り出し、格納庫に無線をつなぐ
『こちらストライカーデッキ、どうしました、どうぞ。』
「こちら篠月、アサギリ8機とムラクモ2機を狙撃装備に換装、その他全てを強襲装備に、2時間以内に終わらせてくれ、あと部隊員全員をデッキに召集、以上。」
『了解しました。』
格納庫に連絡を取ってそのまま無線を切る、その行動の間に、輔は車両のエンジンを入れ目的地に向かって走り出していた
そして俺の通信が終わってこちらの様子をうかがってから、輔は口を開いた
「もし、問題がなければ、今回の作戦内容を伺ってもよろしいでしょうか。」
「あぁ、どうせ向こうで話すことになるがいいだろう、先に話しておこう、今回はミームが上陸することを想定して作戦行動を行う。」
「それってやっぱり、あの反応がミームだったってことですか?」
「まだ確定ではないが、最悪の事態を想定して動かないと、ダメだからな。」
「で、ですよね、まだ敵がミームと決まったわけでは。」
「だが、気を引き締めろ、完全に奴らじゃない確信もないんだ、8割の確率で敵が来ると思え。」
「りょ、了解、大尉、格納庫につきました。」
「あぁ助かった、ではすぐに他の隊員と合流しろ、すぐに会議を開くぞ。」
俺はそう言って、輔が慌てて走っていった後姿を見る、そしてそこに別の背中を思い浮かべる
なにもなくしっかりと育っていれば、おそらく輔と同じぐらいの歳になっていたであろう、別の後姿を
ーーーサンタローザ市街 PM18:58
六時を過ぎたころだった、街中を自衛隊の人達が戦闘車両に乗り移動していたのを見たのは
そこから徐々に車両の数は増えていき六時半を回るころには街中に避難指示が出されていた
私もバイト先の喫茶店から店長に急いで避難するように言われ現在、避難中である
『♪〜〜〜』
「えっ、こんな時に誰なんだろ。」
自衛隊員の指示に従い非難をしていた時、唐突に携帯電話が着信音を鳴らす
画面を見るとそこには、コトミと表示されていた、私は足を止めることなく携帯を耳に当てた
おそらく、私と待ち合わせしていたモールの近くにいるのだと思うが
避難指示を受けてどうしようか相談してきているといったところだろう
モールは海岸の近くにあるから、人が混雑している可能性もあるし、困っているかもしれない
そう思い、私は携帯に出た
「もしもし、コトミいまどこにいるの?」
『あっもしもしお姉ちゃん?ちょっと言いにくいんだけど、いま実はモールにいるの。』
私は思わず立ち止まり後ろを振り返る、モールは海岸から数キロ離れているとはいえ
緊急避難区域の真っただ中だ、私がいま向かっているサンタローザの避難場所とは真反対の方向
「なんでそんなところにいるのよ!早く避難しないと!」
『実はモールで迷子の子供を見つけて、その子が泣きじゃくってて避難どころじゃなくて。』
「そんな、でもとりあえず、その子と一緒に早く避難して、そうしないと…。」
『うん、この子もさっきなんとか泣き止んだから、私も非難するね、ここから近いのは』
妹がおそらく携帯で避難場所を調べているのだろう、そしてすぐにわかった、と言う返事が返ってくる
『とりあえず避難場所はわかったから、すぐに向かうよ、お姉ちゃんも気を付けてね。』
「うん、あんまり心配かけないでよね…。」
『ごめんごめん、じゃあまたあとでね。』
妹からの電話をそこで切り、私はまた、サンタローザの避難場所に向かう
だがその時だった、地面が大きく揺れだした、そして目の前のアスファルトの道がいきなり膨れ上がるように隆起し
“奴等”がそこから現れた
ーーーモール 19:02
「それじゃあそろそろ、お姉ちゃんと一緒に避難しよっか。」
「うん…。」
周りではまだまだ多くの人が避難を続けており、自衛隊の誘導である程度スムーズに一般市民の避難が行われているとはいえ
まだまだ時間がかかりそうだと、一目でわかる状態がずっと続いている
そして私は20分前に出会った迷子の子供の手を引き、この避難誘導の流れの中に入る
多くの人が、同じ方向に向かって歩いている、この先の一キロほど行った場所に避難場所がある
「ほら、お姉ちゃんが一緒だ、大丈夫大丈夫。」
子供にそう言って、そして自分自身にも大丈夫だと言い聞かせる
そうしないと、自分自身が恐怖でつぶれそうになるから、子供の手を握る手にも力が入ってくる
「お姉ちゃんはコトミって言うの君の名前は?」
「紡、紡っていうんだ。」
「そっか紡君か、じゃあ一緒に避難所まで行こうか、お父さんもお母さんも、きっとそこにいるよ。」
「うん。」
紡君の手を握る手に力を込めて、モールから出るために足を動かす
もう片方の手は、さっきから震えが止まらないが、それ以上に足が言うことを聞かない
まっすぐ歩こうと思うのに、一歩一歩が凄く重い
思い出さないようにしていた、六年前の記憶が戻ろうとしているような気がする
(なんで、こんな時に。)
六年前のあの時、私とお姉ちゃんは避難中に両親が戦闘に巻き込まれ死んでいる
お姉ちゃんはその時すぐに私の手を引いて逃げて、避難してこのアメリカに来たけど
私はそこから一年間、私は両親が目の前で死んだ時のショックから、家にこもりっぱなしになり
まともな状態でなかったと言われている、いつ自殺をしてもおかしくなかった状態だったと
だからこそ、いまこうやって立ち直ってお姉ちゃんと一緒に暮らしてるのはお姉ちゃんの懸命な励ましのおかげだと
私は思っている、だからこそ、この非常事態で体が恐怖で警告音を鳴らして動きを止めようとするのを
必死に抑え込んで、逃げる必要がある
「ほら、お姉ちゃん早く逃げよう。」
「う、うん!」
いつの間にか足をとめていたようで、紡君が心配をして顔を覗き込む
おそらくひどい顔をしていたかもしれない、でも今作れる一番の笑顔でこの子にこたえる
たぶん、あの時のお姉ちゃんもそうしていたのだろう、私はいま、そんなことを考えながら足にもう一度力を入れる
(いま必要なのは、自分が逃げる力じゃない、この子を守って一緒に逃げる力だ、それなら、頑張れるはずだから。)
そう思うと、不思議と体から力が湧いてくる、あの時のお姉ちゃんも多分そうやって自分を奮い立たせていたのだろう
(大丈夫、私はまだいける。)
子供の手を引き、広いモールを出て外を歩き始める、そして自衛隊の人の避難指示に従い避難をすることにした
だけどその時だった、海岸側から耳をつんざくような轟音が連続して聞こえ始めた
男の子も私も、それだけではなく周りの人も一斉に振り返る、自衛隊の人が大きな声を出して早く避難をするように促す
音の大きさ、そして自衛隊の人の反応からして、海岸で戦闘が始まったのだろう
私は周りを見て、人の流れを伺う、多くの人が恐怖で避難所のある方向に向かっているが
雪崩のように流れ込む人の波で思うように動けてないのが見て取れる
だが、後方は、今さっき私達がいたモール側は、逆向きになるが人の波はなかった
私はすぐに判断をして、子供の手を引いてモール側に走り始めた
「お姉ちゃん!?」
「これだけ人が雪崩みたいに動いてたら避難所も混乱してて、入れないかもしれない、それならこのモールに逃げ込んだほうが確実だから。」
「う、うん!」
私は再び子供の手を取り走り出した、モールなら何かがあっても人と連絡を取る手段はいくつかある
だからこそ、助かるための選択を私は選んだ
その時はその選択が正しいと信じながら
ーーー 19:00
アメリカ、サンフランシスコ、カーメットから北へ5キロ程行った場所に、そこはあった
ソノマコースト州立公園、カリフォルニア州で最も風光明媚なスポットと称されるほど魅力に満ちており
南北に二キロ伸びた海岸では貝殻拾いや魚釣り、日光浴、ピクニックを楽しむ人々の姿が見受けられるほど有名な観光スポットである
だが、いまはその観光スポットから一キロほどのポイントで南北に伸びているのは、日本とアメリカの戦車部隊である
そしてその前方には日本が六年の年月をかけて磨き上げ作り上げた最新型ストライカー、アサギリとムラクモが並んでいた
「ストライカー部隊、全機配置についたか」
無線の回線を使い、ストライカー部隊全機に確認を取る、するとすぐに各部隊ともに順番に返事をしていく
もちろん、俺の操る一番小隊は全員が一機の漏れもなく現在準備を終わらせていた
戦車部隊や海上部隊の状態はわからないが、俺は自分の部隊の準備の終了を聞いて、そのまますぐに
作戦本部に連絡を入れる
「こちらストライカー部隊、すべての準備を終え待機状態、本部の指示を求む。」
『こちら作戦本部、敵の振動は感知できない、現状待機状態を維持せよ、繰り返す、待機状態を維持せよ。』
「了解。」
待機状態の維持、簡単に聞こえるが、兵士の精神力は、この待機状態に一番すり減っていく
敵が来るかもしれないという恐怖感、まだ始まっていない戦闘への焦り
色々なものが兵士達を削っていく、もちろん、それは新米だけに言えたことではなく
俺達のような長年訓練を積んできた男達でもそうなるのだ、俺は少し気を紛らわせようと
ストライカー部隊の専用チャンネルを開いた
「そう言えば輔、今年でいくつになるんだっけな?」
『えっ、自分でありますか?』
「あぁそうだ、お前がこの部隊で一番若かったはずだからな、ほら、言ってみろ。」
『自分は今年で23になりました。』
「ほう、23か。」
『隊長、奴はそのとしでまだ未経験らしいですよ〜。』
『マジか、俺なんてそれぐらいの歳の時は、とっかえひっかえだったのになぁ。』
『はははっ!知ってるぞ、その癖が治ってなくて、この前家に戻ったら、女房と子供がいなくなってたんだよな!!』
『ちょ!馬鹿言うんじゃねぇよ!いなくなったんじゃない、実家に帰ってたんだよ!』
『ぶふぉ、マジかよ、それってお前やばくね!?』
『やばくねえよ、土下座して何とか許してもらったんだよ!』
『『『あーははははっ!!』』』
さっきまで静かだった無線が突然にぎやかになる、もちろんダシに使われた輔も一緒になって笑ってるのが
その向こうから聞こえた、俺はそれに安どしていた、話は次から次に広がり
俺か本部からの緊急連絡でもない限りは止まらないだろう、これでいい
そう感じた、そう感じたからこそ、こんな時間が続いて、そして何もなく終わってくれたらよかったのだが
世界はそれを許さなかった
【ドゴオォォォン!!!】
それは突然現れた、海底からではなく、部隊のはるか後方二キロ程度の地点、地面を貫き一斉にこの大地に放たれたのだ
もちろん、いままで地下を通って上陸したという報告がなかったため、
『こちら作戦本部!揺れを感知できなかった、まさか地下から現れるなんて、各部隊戦闘開始!戦闘開始!』
本部からの指示を受け、一斉に全部隊が後方を振り返る
『そんなまさか、隊長助けてぐああぁぁっ!?』
後方に配置していた狙撃部隊の機体がこのたった数十秒の間に2機ロスト、ほかの8機は後方に後退しながら敵を減らしているが
装備が悪い、大勢の敵に対して単発でしか攻撃できない狙撃装備では分が悪い
「第4、第5部隊は垂直噴射で敵頭上を越えて9、10に合流しろ、他の部隊は各個トリガーロック解除、俺達の新天地を侵略させるな!」
『『『了解!!』』』
俺達はその機動力を生かし、後方にいた戦車部隊を飛び越え、敵の発生源であるポイントに照準を合わせる
「第一部隊、第二部隊、発生源を狙うぞ、榴弾用意!」
10機のストライカーが一斉に左右の腕にアサルトライフルを一丁ずつ構える、そしてそのライフルの下部に取り付けられている
120?の榴弾を一斉に打ち込む、これは対ミーム用の榴弾で、その鋼を超える強度の鎧を溶かせる熱量を放出することが出来る
「てーーっ!」
ヘッドギアの消音効果がなければ、コックピットの中とはいえ、数十秒は音が聞こえなくなりそうなほどの爆発音が左右から聞こえる
敵の発生源と思われる隆起した土壌と敵の群れに20の榴弾は一斉に命中し、そのすぐ後にもう一度大きな爆破を起こした
敵の山は吹き飛び、炎に巻かれた敵はその鎧を焼かれ溶かされ惨めな灰になっていく
「いける、これなら、行ける!」
そう、俺は思った
だがこんな小さな希望でさえ、新しい絶望で塗り固められることになるのだ
『こちらユージーン基地!敵の侵入をサンタローザで確認!繰り返す!サンタローザで敵の侵入を確認!直ちに全ての自衛隊は行動せよ!繰り返す!』
「なん、だと…。」
もう少し疑ってかかるべきだった
敵は地中を進んできたのだ、もう、この国ですら、どこも安全とは言えなくなったことを少しでも早く、気が付くべきだった
「8、10番部隊!サンタローザに向かえ!ここは俺達で抑える!」
『第八部隊了解!』
『第十部隊了解!』
「9番部隊の各機は6番と合流、敵を遠距離から攻撃、6番はそのサポートに回れ!」
『第六部隊了解!』
『第九部隊了解!』
各部隊に一斉に指示を出す、できる事ならば、これ以上の被害が増えないことを祈りながら。