第二話 精霊界のシンビオート
「まずは精霊界を救ってもらいたいんだ」
家の庭でいきなりバムが言い出した。
「分かった」
精霊界ってのは……。
こいつの仲間がいっぱいいる場所的な感じだろうか。
「じゃ、とりあえず目閉じて……。えいっ!!」
バムが叫んだ。
次に目を開けると、家の庭ではなく、大通り、いや、商店街……と言った感じか?
とにかくそんなところにいた。
「とりあえずどうすればいいんだ?」
「わかんない」
とりあえずバムをシバき倒す。
「痛い痛い!ねぇ雷君は全ステータス上がってるんだからいつもの感覚でやらないでよ!!」
「あ、そっか」
言いながら、輝に試験的にデコピンを喰らわせる。
「痛った!!ほんとにデコピン!?デコピンのふりして殴ったでしょ!!」
「……そこまで痛い事はねぇだろ」
俺たちが商店街のど真ん中で騒いで他の精霊に若干引かれていると。
「あれ?バムー!!」
パクの名を呼ぶ声が聞こえた。
「あ!シルフちゃーん!!」
「なんだ?お前ら知り合いか?」
「うん!シルフちゃん!風のせ」
「言わんでも分かる」
俺の代名詞"セリフぶった斬り"が発動しました。
「あー、バムたちは界魔倒そうとしてるのかぁ」
ここは、シルフの家だ。
「そゆこと、そゆこと」
シルフの言葉にバムが頷く。
「じゃあよ、この世界のその……界魔っつったか?そいつはどこにいんだよ」
「それは、アレだよ」
「どれだよ」
俺は外部の人間だぞ?
アレって言われてもわかんねぇよ。
「この世界は、大精霊様が統治してたんだ」
唐突にバムが言い出した。
「ふーん……あれ?してた?」
過去形じゃねーか。
「そ。今じゃ対抗勢力が生まれて、精霊界がふたつに割れてるんだけど、その対抗勢力のところに界魔が行ってる感じだね」
え?
「おい待て、敵対勢力なら別に問題ねぇんじゃねぇか?」
「大精霊が直接狙われてる訳でもなし」
俺の言葉に輝も続く。
「いや、対抗勢力が乗っ取られたら乗っ取られたで、あっち側の勢力と、界魔の勢力で、大精霊様も負けちゃうって感じなんだよね……」
めんどくせー話だな。
「要は界魔ってのぶっ潰しゃどうにでもなるって事だろ?」
「ならば!我が爆裂魔ほ」
「お前そんなん持ってねぇだろ」
アニメキャラの決め台詞をぶった斬られた輝は少し凹んだ。
「じゃ、とりあえず行くか、その対抗勢力ってところに」
着いた。
近い。
「ふぁーあ。作戦会議とかかったりぃなぁ〜。あれ?あんたら誰?」
艶やかな黒い髪、西洋人形を思わせる端正な顔立ち、それに相反した荒々しい口調(一応女子)。
こいつが対抗勢力のリーダーだって。
「カルマ様……で、宜しいですよね?」
バムが恐る恐る尋ねる。
「あぁ、そだよ?で、様とかナシで呼び捨てにしてくれ。あと敬語もナシ。でもなんかみんな聞いてくれねぇんだよな……」
そりゃそうだろ。
立場を自覚しろ立場を。
一通り説明を(ビビりまくってた)バムが終わらせた。
「なるほど。じゃあんたらは敵を退治しようとしてるけど、これが初陣って事か」
「そうなるな」
既にタメ口だが、自分で言ってたし大丈夫だろう。
「じゃ、私としては今のうちにあんたらの能力知っときたいんだけど」
「わあった。えっと……輝は魔力だっけか?」
「そうだよ?今は簡単な魔法しか使えないけど……」
なぜか輝はしょんぼりとする。
「俺は身体能力が少し上がっただけ」
「な、なるほど……」
反応に困ったんですね分かります。
「じゃあとりあえず……あいつらはいつ攻めてくるかわかんねぇから……みんな緊張は解かないでくれ」
カルマの言葉に、その場の緊張が微妙に高まった。