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黒き門・白き門  作者: 灰色人生
第一章 ミディア王国編
8/24

八話

 


 8・調査




 ▼○


 ニアサイド最高峰の冒険者であるサーシェとラボックが一週間ぶりにニアサイドの街に帰って来た。



 本当なら4日も前に帰って来て居たはずの彼らだが、帰る途中にある橋が魔物の襲撃を受けた隊商が商品の積載された馬車を守る為に護衛の冒険者の制止を振り切り橋に火をかけ焼き払った為に、迂回路を行かねばならず帰って来るまでに時間がかかったのだ。



 当然橋に火をかけた商人は罪に問われ牢獄へ、私財は没収されその中から修繕費が出された。


 橋を管理、所有して居たのはこの地域一帯の領主である子爵の物の為だ。


 橋が直るのは速くても二週間後だろう、その為にそれまでの間は迂回路を行かねばならない。



「う〜ん。サム達は元気にしてるかねぇ?」

 と赤毛をポニーテールにした女冒険者は隣の無精髭のガッチリとした体格の男冒険者に尋ねた。


「大丈夫じゃねぇか?サム達ももう16だ。自分の事は自分で出来るだろう。いつ迄の子供扱いしているとあいつらの為にもならねぇだろ?」と赤毛の女に答える。




 赤毛をポニーテールにした女冒険者はサムの姉であるDランク冒険者のサーシェで無精髭の男は同じくDランク冒険者のラボックである。


 彼らは護衛依頼を終えて一週間ぶりにニアサイドに帰って来たのだ。



 2人は早速冒険者ギルドに向かい依頼の完了報告に向かう。


 2人は街を歩いてある異変に気付く、いつもより冒険者の数が少なく思えたのだ。



 確かに今は昼時でこの時間帯は冒険者達の多くは依頼で街の外へと出かけているが、それでも全員ではなく幾人かは休養していたりする。



 だが一週間前と今では明らかに冒険者の数が少ない。



 2人は顔を見合わせて頷き冒険者ギルドへと急ぎ向かう。





 ◇


 冒険者ギルドに入り冒険者ギルドに併設されている酒場の方を見るとやはり何時もより数が少ない。



 疑問に思いつつも受付に向かい依頼の完了報告をする。



 受付嬢は2人の姿を見て顔を明るくさせる。


「護衛依頼は完了したこれが証書だ」と言いラボックは懐から依頼者である商人のサインが入った羊皮紙と冒険者カードを渡す。


 受付嬢はそれを受け取りカードを確認してから達成の判を押して報奨金を渡す。



「ねぇ、何か何時もより冒険者の数が少なく見えるんだけど何かあったの?」と聞くと、受付嬢が顔を真剣な表情に引き締める。


 それに2人は何か重大な事が起きたのだろうと、察して気を引き締める。


「はい、実はここ数日複数のパーティーや冒険者が行方不明、つもり未帰還になっています」


 それは別に珍しいことでもない冒険者は常に危険と隣り合わせである為に必然とそうなる。



 受付嬢もわかっているとばかりに頷き続きを話す。


「確かに帰ってこない冒険者は珍しくはありませんが、その数が問題です。現在ノービスの森へと向かった冒険者の内実に8割にも及ぶ数の冒険者が帰って来ませんでした」


 受付嬢の言葉に流石の2人も目を見開いく。



 そうしていると奥の部屋から受付嬢の上司がやって来た。


「ああ、良かった。ラボックさんサーシェさん。お二人をギルド長がお呼びです」と告げた。


 それほど事態は深刻化しているのかと、2人は顔を強張らせる。


 2人は黙って案内されるままにギルド長の執務室に向かう。



 執務室の中にはギルド長の他にその秘書とこの街のもう1つのDランクパーティーである【漆喰の壁】の7名が居た。



「来たか2人とも、取り敢えず座ってくれ」と初老に差し掛かっているギルド長に促されて2人は空いてる席に座る。



「さて、ニアサイド最上の冒険者たる君達を呼んだのは他でも無い。ノービスの森についてだ。ああ、サーシェくんとラボックくんにはまだ説明してなかったな。これから詳しく話すとしよう」そう言いギルド長は手元のカップを持ち上げその中に入っている紅茶を一口飲み、喉を潤してから話し始める。



「あれは君達2人が護衛依頼で街を離れた次の日の事からだ。君達も良く知る冒険者パーティー【火蜥蜴の尻尾】が【苔の洞窟】へと挑戦しに向かった日の事である」


 ギルド長の言葉を聞いて思わずサーシェが立ち上がる。


「なっ!?あいつら何勝手に!そ、それであいつらは今何処に!?」と取り乱すサーシェ。


 ラボックはそんなサーシェの肩を掴み落ち着くように言う。


「落ち着け。ギルド長の話を最後まで聞いてからその話をしよう」と宥められサーシェも大人しく従う。



「コホン、話を戻そう。そして彼らの後にも数組のFランクパーティーと2組のEランクパーティーとソロの冒険者数人がここ数日ほどでノービスの森へと向かい消息を絶った」



 その言葉を聞きサーシェはギリっと手に血が滲むほど手をきつく握り締めた。


「そして、今回君達に依頼するのはノービスの森の異変の調査だ。もしかしたら境界線を越えて魔物が出て来たのかも知れぬ」


 境界線とは川の事で基本的に川向こうの魔素の濃い向こう側から魔素の薄いこちら側には魔物はやっては来ない。


 だが何物にも例外はあるもので生存競争に敗れて逃げて来たものや、好奇心が強く自らの意思で出てくるものなど理由は様々なれど、どの個体もこちら側の魔物より数十段も上の実力を兼ね備えた化物だ。


 ここ数十年はそんな事は起こって居なく、領主である子爵も代替わりし、対策を疎かにして居た。


 ギルド長は速やかに領主に向けて早馬を出してこの事を報せに向かわせた。





「これは、ギルドからの指名依頼だ。期間は5日、何も発見出来なくても一旦それで戻って来て欲しい。他の都市にいる冒険者にも声をかけて集めているがそれぐらいの時間がかかるだろう」ギルド長が話し終えると【漆喰の壁】はメンバーで話し合う。


 サーシェはラボックの方を向き「私は参加するよ。弟達の事を何か掴めるかもしれないかねぇ」とサーシェはラボックに告げる。


 ラボックは肩を竦めて「俺も参加するさ。あいつらにはまだまだ教える事が沢山あるからな」と参加を表明した。



【漆喰の壁】もどうやら参加をするらしい。



「必要な物などは出来るだけこちらが用意する。費用などはこちらが受け持つ。今日のうちに装備を整えて明日の早朝早速調査に向かってもらう。君達以外にもギルドの調査員を数組派遣するが、あまり期待はせんでくれよ」と苦笑し御開きとなった。


 現在ノービスの森は立ち入り制限がされており、ギルドの許可なく入る事は不可能になっている。



 まあ、何処にも馬鹿はいるもので封鎖を抜けて入って行った者達のその後を見たものはいない。


 サーシェは早速馴染みの武器屋や、雑貨屋に行き装備を整える。


 ラボックは少しでも現在のノービスの情報を得る為に馴染みの情報屋の元へと向かう。





 ■■■■



 翌日朝早く日がまだ完全に昇り切る前に門に集まり最終確認をする。



「君達【漆喰の壁】はこの区画を、サーシェくんとラボックくんはこの区画をまずは調査してくれ。他のここと、ここ、あとそこはギルドの調査員が向かう手筈になっている」


 効率的に探す為にノービスの森(川の手前側)をいくつかの区画にし、その区画毎にパーティーを割り振る。



 サーシェとラボックそれに【漆喰の壁】のメンバーは早速用意されていた馬車に乗り込みノービスの森の手前まで送ってもらう。



 馬車から降りてノービスの森を見渡すが此処から見る限りだと何時もと何も変わらない。


 静かなものだ。


 いや、静かすぎるほど……か。



 2人は任された区画に向かい足を進める。



「特にこれと言った変化はないわねラボック」サーシェが辺りを見渡して変化が無いかを確認するが、何時もより魔物や動物の数が少ないと感じる以外、特にこれと言った変化は見られない。


「ああ、そうだな。気になる物と言ったら魔物と動物の数が何時もより少ないと思うぐらい……か。だが境界線の向こうから化物がやって来た形跡もないな」と難しそうな顔をして考え込むラボック。


 ふと、サーシェはある考えが頭の中を過ぎる。


「ねぇ、ラボックもしも、そう、もしもの話なのだけれどね。仮にこのノービスの森に新たな迷宮が出来た可能性はあると思う?」



 新たな迷宮が生じた可能性を説かれラボックは考え込む。


「ぬぅ、ない…とは、言い切れぬか。だが仮に新たな迷宮が誕生していたら、その事をギルドに報せる義務が冒険者には生じる。サム達【火蜥蜴の尻尾】の連中もその事をちゃんと理解している筈さ。それに新たな迷宮の危険性は俺たちがキツく奴らに教えたろ?仮にあいつらが新たな迷宮を発見したとしても決して挑戦するな。と言い聞かせただろ?」とサーシェに問いかける。


「ええ、そうね。でも、もしその新たな迷宮が幻惑系の迷宮なら【苔の洞窟】と間違って入って行ってしまった可能性はあるわ」と、

 もしもの可能性を問う。



 幻惑系の迷宮とは他の姿に迷宮内を偽ったりする迷宮だ。



 だがこの可能性は少ないだろうと、サーシェ自身も思っている。


 幻惑系の迷宮は最低でもC級の迷宮で滅多な事では発生しない。


 それに発生するにも条件があるらしくこんな初心者の狩場では発生しないだろうと2人は結論付けた。



 2人は今日1日で担当の区画を調査し終えたが、何も見つからなかった。


 当初は居なかった動物や魔物も奥へと進むと徐々に現れたりしたので、数が少ないと思ったのも勘違いだったのかと思いその日の探索を終えてギルドが用意した野営地へと戻る。



 2人が戻ると大半の調査メンバーは戻って来て居りその日の調査内容をみんなで照らし合わせた。





 だがこれて言った手掛かりは何1つ見つからなかった。



 それから1時間が経ったが、ある区画へ向かった調査員が戻って来なかった。



 それは【苔の洞窟】のある区画だった……





 To be continued.......






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