六話
6・いざ、迷宮へ
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サムたち【火蜥蜴の尻尾】の4人は苔の洞窟の正確な場所は知らなかった。
だいたい彼処ら辺とアバウトな感じだ。
「んー。確かこっちの方だったよな?」
パーティーリーダーのサムは3人に疑問を投げかける。
「多分そうだったかと思いますが、自信はないですね」
と、自信なさげにミールが告げる。
「ま、なる様になるさ」と呑気に言うボーシュ。
「まあ、ボーシュの言う通りね。すぐに見つかるわよ。それよりも苔の洞窟に入った時の対応について話しましょうよ」メルシーが提案すると他の3人もわかった、と頷き周辺を警戒しながらフォーメーションなどについて話し合う。
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暫く話し合って居るとメルシーが静かに。と声を鋭くして告げる。
それに他の3人もそれぞれ武器を手にとり周りを警戒する。
暫くすると前の茂みがガサガサと揺れてそこからゴブリンが姿を現わす。
「グギ、グギャグギャ」と何やら言うと後ろから3体も現れて合計4体になった。
いざ、戦闘か!と思いきや4体は背を向けて逃げ出した。
そしてある程度距離が開くと止まりこちらを振り向き何やら指をさして笑ってくる。
「なぁ、もしかしてあいつら僕達を馬鹿にしているのか?」とサムが3人に聞くと。
「そうでしょうね。なんか腹立つわね」とメルシーが拳を震わせて苛立ちを表している。
「で、ですが。こちらを挑発して罠に誘い込むつもりでは?」ミールは罠の可能性を示唆する。
「ゴブリンにそんな知能があるか?まあ、それに罠と言ってもお粗末な物だぜきっと。そんなのすぐに気付くさ。それに運が良ければ奴等苔の洞窟のゴブリンかもしれないぜ。そうしたら奴等に巣まで案内してもらおうぜ」ボーシュは大剣を肩に担ぎながら自信満々に告げる。
それにサムとメルシーが同意したのでミールも仕方なく付いていく事にした。
そうして火蜥蜴の尻尾の4人はゴブリンを追跡したところ奴等が苔の洞窟と思わしき所へ入って行くのを目撃した。
「おっ、ラッキー。苔の洞窟があったぜ」
ボーシュが嬉しそうに答える。
「でも、此処でしたっけ?もう少し西の方ではなかったですか?」
「ミール。私達苔の洞窟は今回が初めてじゃない。多分此処で間違いないわよ。それに入ったらわかるわ」メルシーがミールの肩に手を置きながらそう告げる。
「ああ、それによく見てみなよ3人とも。ほら、あそこ。苔が生えているよ。此処が苔の洞窟で間違いなさそうだよ」サムは3人に苔が生えている場所を指差しさあ、行こうと告げる。
洞窟に向かい4人は歩き出す。
洞窟の中を覗くと薄暗いが先が見えない程ではない。
彼らは念の為に松明を一本だけ作りミールの魔法で火を灯して灯りを確保する。
先頭をサムが進みそのすぐ後ろをメルシーが続き、ミール、ボーシュが続く。
ボーシュが後ろからの奇襲などを警戒する。
この狭い洞窟内ではボーシュ自慢の大剣は碌に振るえ無い為に、現在はサブウェポンのショートソードを装備している。暫く進むと広い空間に出た。
その広場になっている空間にゴブリンが3体にスライムが5体居た。
メルシーが素早く狙いを定めて一番手前に座っているゴブリンを狙い射抜く。
放たれた矢は寸分の狂いもなく吸い込まれる様にゴブリンの左目を貫通して、そのまま脳髄を破壊し即死させた。
これには他の3人も驚いて居たが射ったメルシー本人が一番驚いていた。
メルシーは頭を狙ったがまさか一矢で倒せるとは思っておらず牽制の意味合いが強かった。
仲間がいきなり死んだゴブリンは驚き慌てて立とうとして、自分の武器である棍棒に躓いてひっくり返ったりしている。
スライムはゆっくりとした速度で此方に近づいてくる。
ミールはスライムに向けて杖を構え、呪文を唱えて「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜『ファイアボール』」と火の初級魔法を放った。
見事にスライムに命中しスライムは蒸発し、消えて親指程の魔石が残された。
ボーシュは背中の大剣を抜き放ち、勢いそのままに混乱しているゴブリンを、頭から真っ二つに両断した。
サムはボーシュに続き転んで頭を打ちゴロゴロと転がっているゴブリンに近づき胴体を串刺しにして、動きを止めた後に引き抜き喉を引き裂いた。
残ったスライム四体はミールが魔法で三体を、残りの一体はメルシーが持っている松明で焼き殺した。
その後周辺を暫く警戒したが他に魔物の姿は見当たらなかったので、ゴブリンの胸を引き裂き魔石を回収した。
「やはり、低級の魔物だけあって魔石の大きさと純度も低いね」とサムが手にしたゴブリンの魔石を見ながら言う。
この純度とは存在力みたいな物で色が白ければ白いほど純度は濃く、逆に黒ければ黒いほど純度は低い。
魔石は様々な所で活用されている。
中でも魔道具がやはり代表的だろう。
魔石は魔道具を動かす電気であり、純度が濃いほど長く、そしてより強力な魔道具を動かせる。
他には魔石は魔力回復薬と同じ様に魔力を回復する効果がある。
まあ、純度が低ければあまり意味はなく魔力回復の効率も悪い為に滅多な事では使用しない。
後は錬金術の原材料などに使われる。
そして全ての魔石を回収し終えた4人は再び洞窟の奥へと進んで行く。
♢♢♢♢
イニティウムは4人の冒険者の様子を玉座に腰掛け足を組み肘を肘置きに手を顎に当てながら、モニターに映し出される4人を観察していた。
モニター越しでも問題なくステータスの確認が出来た。
【ステータス】
【名前:サム・ウィトウィキ】
【男性/普人族/平民】
【ミディアム王国人/冒険者】
【職業:剣士】
【状態:良好】
【年齢:16】
【Level:8】
【スキル:--】
HP:120
MP:23
STR:64
DEX:51
VIT:53
INT:55
AGI:61
MND:32
LUK:16
【ステータス】
【名前:メルシー・トゥルマ】
【女性/普人族/平民】
【ミディアム王国人/冒険者】
【職業:射手】
【状態:良好】
【年齢:16】
【Level:6】
【スキル:--】
HP:108/108
MP:29
STR:51
DEX:45
VIT:41
INT:54
AGI:64
MND:34
LUK:13
【ステータス】
【名前:ボーシュ・クルーマン】
【男性/普人族/平民】
【ミディアム王国人/冒険者】
【職業:戦士】
【状態:良好】
【年齢:17】
【Level:9】
【スキル:--】
HP:158
MP:18
STR:74
DEX:60
VIT:57
INT:61
AGI:72
MND:36
LUK:19
【ステータス】
【名前:ミール・ハタール】
【男性/普人族/平民】
【ミディアム王国人/冒険者】
【職業:魔術士】
【状態:良好】
【年齢:15】
【Level:5】
【スキル:火魔法LvⅠ・支援魔法Lv-】
HP:70
MP:54
STR:32
DEX:29
VIT:31
INT:70
AGI:42
MND:49
LUK:20
と、なっていた。
どうやら我々とステータスの表示のされ方が違う様だ。
4人は誘導されているとも知らずに、奥へ奥へと進んで行く。
時折出会うゴブリンとスライムを危なげなく倒して行く。
まあ、出会うのも一度に二、三体になる様に調整しているのだがな。
初めは不安そうにしていた、あの魔術士の女も次第に警戒心が薄れて来ているな。
予定通り4人組が第一階層から第二階層へと続く転移門を発見して第二階層へと転移すると、仕掛けを作動させて転移門を封鎖する。
完全に出口を塞げれば良いのだがダンジョンの使用上の注意点で必ず一箇所は出入り口を作らなければならない。と書かれていたので
第四階層に第一階層へ続く転移門を設置している。
まあ、辿り着ければ無事ここから脱出出来るだろう。
ま、逃がすつもりはないがな。
To be continued.......