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ざっくり帳簿体系と仕訳

「僕は、鮎川計だ」

「わたしは、桜です、桜栞」

 真面目そうな彼は、自己紹介をするとメガネをクイッと直した。女の子は、もじもじとしてた。対象的な二人であった。

 話を聞くと、二人は隣クラスの子達らしい。鮎川君は、勉強ができる子らしい。桜さんは、読書が趣味で時々小説も自作しちゃうような文学少女らしい。二人に入部した理由を聞くと「ここは、学校で一番頭のいい人たちが集まるような部活だから」「えっと、なんかお菓子を食べながら集まれて、暇な時は本とか読んでいていい所だそうなので」

 どちらも騙されている。特に女子。よく見ると、後ろで、先生は口笛を吹いているようなふりをして、そっぽを向いていた。こっちを振り向くと、先ほどまで肩で息をしていたのが嘘のように消え、舌をだして「えへっ」という顔をした。こらこら、こちとら本気で簿記をやろうと思ったというのに。

「それで、先生。これからの活動はなにをやるの?」

 進は先生に聞いた。

「そうだな。まずは、明日の放課後から活動を開始しよう。ざっくりとした、簿記の復習かな。あと、来年あたりには、簿記1級合格記念旅行かな」

 先生の妄想はとりあえず置いておいて、明日からいよいよ部活が始まるようだ。この先生はどういう部活動の指導をするのか意外と気になるところであった。

 

 翌日。

「おはようございまーす」

「さようならー」

 あっという間の、放課後だった。すでに、僕は食堂を堪能していた。食堂は、毎回毎回野球部が陣取っていて、なかなか席確保に苦戦するのが唯一の難点だった。残念ながら、これは卒業まで続くのだろうか。甲子園に南商業を連れて行ってくれるなら、いくらでも大きい顔をしていいんだけどね。

 部室に着くと、そこにはすでにみんな揃っていた。

「今日は、何をやるんだろうね」と橋本さんは言った。進は、ぽりぽりとお菓子を食べていた。どうやら、桜さんが持ってきたものを貰ったらしい。桜さんは水筒には熱いお茶を入れて持ってきているようだった。

「はーい。始めます」

 先生が、扉を開けて入ってきた。ここのとびらも、ぎぎぃと音を立てて開いた。

「今日は、帳簿体系と仕訳について復習しよう。さて、復習がてらに語ってやろう。まず、すべての基礎のとなる科目ごとの総勘定元帳。そして、各科目の総勘定元帳を集約したものが残高試算表。残高試算表から貸借対照表と損益計算書に分けられる。そして、残高試算表を元につくってるから、貸借対照表と損益計算書は当期純利益を通じて相互に連携している。まぁ、高一の頃ならこんなところかな」

「仕訳は、各取引を表したもの。お金の動きであったり、売上だったり。仕訳によって日々の取引を記録して、それを各総勘定元帳に集約していく。いわば、簿記の基礎の基礎。簿記は仕訳といっても過言じゃない。また、貸借一致の原則というのがあって、借方も貸方も数字が一致する。不一致になることはない」

「先生」

 ここで、話の腰を折るように、鮎川くんが質問をした。

「その、借方と貸方っていまいち覚えにくいんですが。なんかいい方法はないのですか」

「いい質問だ!」

 と、彼の方に向かって指をさした。彼は、一瞬たじろいだ。

「かりかたと、かしかた。ちょうど、かの次の文字が、(り)と(し)になっているはずだ。その書き順で伸び終わる方。かりかたのりは、左に伸びていくから、左側。貸方はしは右に伸びていくから、右側。こんな感じでどうだろう」

 鮎川君は「なるほど」といって、メガネをクイッとあげた。


 

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