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母さん

 僕は、家に帰った。家に帰ると母さんが午後のワイドショーを見ていた。

「おかえり」

 母はテレビに釘付けであった。学校近くのGOGO商店街の特集がやっていたからだ。GOGO商店街はこの地域じゃそんなに大きな商店街ではないが、とても美味しい中華料理屋があった。そこの出す餃子の旨さたるや、県下一と呼び声が高かった。もちろん、そのお店の特集もあったらしいが、どうやら、うちの高校が紹介されていたらしい。

「なんか、南商業の文化祭が特集されてたのよ」

 全然、カメラの存在とか気がつかなかった。先生も特に取材が入るとは言っていなかったが、それはうちのあの担任が忘れていただけで、他のクラスは知っていたらしい。ただ、自然なところが撮りたかったということで、大きなビデオカメラではなく、ハンディカムで取材を行っていたようだ。

「そうそう。それで、あんたたちの八百屋で野菜を買った親子のインタビューが紹介されてて。とっても感動したわ。あんたら、いいことするじゃない。南商業高校って随分前から近所にあったから気づかなかったけど、本当地域密着の良い高校ね。びっくりしたわ」

 母さんが向ける僕へのまなざしは「なんだか、知らない間に大人になったのね」と言いたそうな表情であった。僕は、照れを隠すように、部屋に戻った。

 部屋に戻ると、僕のスマートフォンにメッセージが届いた。

【なんか、文化祭の特集がやってたらしいね!あの、小さな女の子とお母さんがインタビュー受けてたよ!嬉しそうにトートバックを見せて、「あたしもいつかこの高校に通う!」て高らかに宣言してたんだって笑。可愛らしいじゃないの〜。あ、そうそう。このニュース映像はお母さんが録画してくれたみたいだから、明日DVDに焼いて持ってくね】

 橋本は、テンション高めだった。どうやら、このニュース映像を僕も観れるらしい。よかったよかったと僕は胸をなでおろした。


 僕は、ベットに飛び込んで激動の半年間を振り返った。

 簿記を学び始めて、大人たちに混じって検定試験を受けて。合宿もやって。文化祭で野菜を売って。本当に「食堂がそこにはあったから」という単純な理由で選んだ商業高校だったが、僕は後悔をするどころか、毎日が楽しくて楽しくて仕方がないことに気づいた。なんだか、何度も振り返っている気がするが本当に本当に。僕はどんどん成長していく。恐ろしくも楽しい現実だった。


 次の日、橋本はハイテンションで現れた。僕の頭をぶん殴ってから「おはよう」という青春漫画の一幕を演じたと思うと、青春漫画にはに使わない「DVD」の入ったアパレルショップの袋を僕に差し出した。袋の中身を確認しようとしたら、いい香りがして、少しドキッとした。

「あ、ありがとう」

 僕は、橋本にお礼をした。橋本は「良いってことよ」と肩を叩いて、席に戻っていった。

 僕は、今すぐにでもうちに帰って映像を見たかったが、放課後の部活を思い出した。

 

 標準原価ってなんだよ。

 

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