原価計算3
僕らは、試験前の決起集会と称して、放課後ハンバーガーをほおばりに、学校近くのスーパーにあるハンバガーショップに行った。ここは、大手ハンバーガーチェーンであり、特段すごいうまい!というお店ではなく、安価な価格で商品を提供してくれる高校生にはとても助かるお店であった。
僕は、スペシャルバーガーセットを頼んだ。しめて、500円だった。
席に着くと、桜の頼んだサラダバーガーが気になった。お肉は豆腐でできていて、バンズの代わりにレタスが使われていた。僕は、「え、それハンバーガーなの?」と聞くと、「そうみたいだよ」と答えた。育ち盛りの男の子としてはあまり美味しそうには見えないハンバーガーだった。
「今日の原価計算ってどうだった」
進がみんなに聞いた。
「あたし、原価計算の問題は得意だったけど、全然中身を理解していながった気がぁするぅ」
橋本は、ビックサイズバーガーを口いっぱいに詰め込んで答えていた。食べ終わってから答えればよいものを。
「僕は、あまり得意ではなかったから今日の授業は、試験前の総復習にしてはよかった」
鮎川は、ポテトをうさぎのように食べながら言った。
「わたしも、よかったです。うん。いい勉強になりました」
さくらは、レタスをちぎって食べていた。結局ハンバーガーとしては食べ辛かったらしい。
僕らは、ハンバーガーを食べ終えると、ポテトをつまみながら原価計算についての話が始まった(鮎川のポテトはすでに無くなっていたが)。このハンバーガーひとつもきっとこのチェーンの本社では原価計算を実施しているのだろうと。今日は先生は言っていなかったけど、原価は変動費と固定費にわかれていて、基本的には売上から変動費を超えた粗利益が固定費を越えると利益が出る仕組みである。
すなわち、あのレジに立っている女子高生と思しきアルバイトの女の子は1日に売り上げないといけないハンバーガーの数があるはずなのだ。なぜならば、「時給制」と取っていたとしても、アルバイト側からすれば変動費のように見えるが、会社から見れば時給かける営業時間で、結局固定費なのである。
僕らは、なぜか原価計算の話から、レジのバイトの女の子の話になった。「彼女は、そういうの知っているのかな」とか「いや、たぶん、ひたすら売っているだけだよ」とか「ノルマあるのかな」などなど、彼女を心配する簿記部の面々であった。
「勉強した後に、その勉強内容を実社会に照らし合わせて考えられるのは結構楽しいことだね」
進はしみじみ言った。その通りだった。僕もそうだったし、進以外の3人もそう思っているに違いない。僕らの勉強は実社会に役立つと信じて学べばすごいものになる気がした。商業科目の面白さは、意外と教室を抜け出した場所にあるのかもしれない。「実学」という座学を超えた実際の経済学習のようなものをアピールしている大学の中吊り広告を目にしたことがあるが、僕らは高校生の間にそれをやっているのだ。
僕は、炭酸ジュースを一気に飲み干して、ゲップをした。「汚い」と橋本に怒られて、今日の決起集会は閉幕したのだった。




