原価計算2
「先生」
桜が、手を上げて先生に質問をした。
「さっき、部門別計算を部門別原価計算って言っていたような気がするんですが、正確には部門別計算ですよね?」
桜以外の3人は驚いた表情をした。僕は、特に今まで気にはしなかったが、そういえば、部門別原価計算ではなく、部門別計算である。
「おっと」
先生は、頭を掻いて、「しまったしまった」とつぶやいた。
「桜のいうとおりだ。そう、部門別計算だ。ただ、ちょっと言い訳というか、反面教師に聞いてほしいのだけど、結構、個別原価計算、標準原価計算、総合原価計算、部門別計算の中からランダムに試験には出ているんだ。一つだけ性質が違うのに、なんか同じ枠組みのように何回も出てきて混同しやすいんだ。2級ならまだしも、1級や公認会計士試験の管理会計とかバリエーションも増えてくる。本当に区別ができなくなってくる恐れがある。まぁ、だからこそ、この分類は大事だよって言いたかったんだが。間違ったことを教えそうになってしまったね。すまないすまない」
先生は、柄にもなく誤っていた。どうやら、先生は間違ったことを教えることはとても嫌なようだった。
「しかし!」
先生の表情は一変した。
「そんな用語の間違えなんて些細なことでもある。部門別計算が製造間接費の配賦計算であることを理解できているなら呼び方なんてどうでもいいんだ。結局、勉強が進むと、頭文字でみんな会話するはずだ。頭文字の意味は間違えないでほしい。あと、簿記検定の面白いところは、数字さえあっていれば、採点をしてくれる。そういうものだ。多少の意味を履き違えても解答になってしまうこともある。不思議である」
先生は、さきほどまでの落ち込みから、現実歪曲フィールドを展開して、結局自分の世界へと生徒たちをひきづり込んだのだった。先生の元気は回復し、残りの標準原価計算と総合原価計算の説明に移った。
「残りは、標準原価計算と総合原価計算だけど、その前にみんなは原価計算基準って知ってるよな?」
僕は、知っていたが、進むと橋本は知らなかったようだ。鮎川と桜も知っているらしい。
「原価計算基準は、いわば、原価計算を規定した基準だ。ネットで検索してもすぐに出てくるから参考にしてほしい。通常、2級程度ではいらないけど、1級を目指すなら是非原価計算の内容を理解する上でも読んでもらいたい。というか、標準原価計算を説明するとしたら、原価計算基準はさけては通れないからだ」
「標準原価計算に用いられる原価は、標準原価といって、財貨の消費量を科学的、統計的に調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ予定価格又は正常価格を持って計算した原価なんだ」
先生が、宇宙を語るがごとく難しい話をしてぼくらがぽかーんとしているとしていると、放課後の終了の終わりを告げるチャイムに僕らは救われた。
「試験もあと残り少しの所で、難しい話をしてしまったけど、帰ったら普通に過去問をガンガン解いていくようにな。別に、この原価計算の方法の話は試験には重要じゃないんだ。むしろ、今はいらないくらい。でも、みんなには1級やその後の会計士、税理士に進んで欲しいから、今、話しているんだな。ということで、今日は解散!明日は、標準原価と予定原価の違いを話すから、心してくるように!」
先生は、相変わらずスパルタでストイックである。僕らにとって2級は通過点でしかない。1年生のうちに2級を取れれば、簿記1級に挑戦できる回数も増える。在学合格というフレーズが最近は僕の頭には出てきたのだった。




