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師走より先に走る11月

「大変だ」

 部室に走りこんできた進のそんな一言で始まった。

 どうやら、こないだの文化祭が地域新聞に取り上げられて、そこに進と橋本がツーショットで写っていたらしい。残念ながら、僕はそのツーショット写真の後ろの方でダンボールを片付ける姿が写っていたようだった。きっと母親に教えても「あんたなんていつもそんな感じよ。影がなんか薄い」と言われてある意味喜ぶかもしれないと思った。我が子の通常運転の活躍ぶりに胸の高まりを抑えられてないかもしれない。

 僕は、悲しみをこらえつつも、彼らに喜びの言葉を浴びせた。なんだか、カップルのような取り上げられたらしく、両者の間に微妙な空気がながれていたようだ。ご両人、良いではないか良いではないか。と思う僕であった。

「大変だ」

 次は、久しぶりに会った鮎川が大変だと、部室に現れて言い放った。

 そう。すっかり忘れていたが、簿記検定2級が11月の中旬にある。僕らの文化祭は11月の第1週目にあったものだから、準備期間としてはあと2週間程度であった。これは、本当に緊急事態だ。そろそろ追い込みをかけなければならない。僕は、野菜のブランディング事業に最近は全力を注いでいたため、簿記検定の勉強は若干おろそかになっていた。

 恐る恐る過去問を解き始めてみると、案の定問題の内容がわからなくなっていた。特に工業簿記は悲惨であった。製造間接費?シュラッター図??もはや、工業簿記の森が目の前に広がっていたのだった。

「安心しろ」

 すると、勢いよく扉を開いて、ご存知、顧問の諸星先生が現れた。

「あと2週間しかない。バカを言うな。あと2週間もあるのだ」

 困り、焦っていた僕らにとって先生の言葉は、救世主のような言葉だった。

「そういえば、先生。文化祭中に広川先生と一緒にたこ焼き食べてたでしょ」

 桜がいつにない鋭い目つきで先生に質問をした。

「そ、そ、そんなことは今はどうでもいい!それよりも試験対策だ」

 先生は、慌てふためきながらもなんとか話をそらすことに成功したのだった。桜は、少々悔しそうな表情をしていた。文化祭を経て桜の表情のレパートリーが増えたようである。

「まず、君たちが簿記2級の合格を勝ち取るための必勝法としては、やはりここはぶれずに過去問を解こう。結局過去問が重要になるということは1級まで変わらない。そして、ここからはなるべく新しい問題よりも過去にやった問題を繰り返し解くんだ。100点しか取れなくなってきた、間違えないからいいよ、と言って新しい問題にチャレンジするのはやめよう。多分、重箱の隅をつつくような問題も過去問や市販の問題に載っている。そして、総じてこのような問題たちは「俺らが解けないと君らの合格はない」と言いたそうにしている。そんなことはないから、新しいことをする必要はない!」


 僕らは、2週間での追い込みに向けて一致団結した。改めて、勉強仲間がいる喜びを感じ、一人では追い込みもキツいと思ったのだった。



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