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ラスト ベジタブルズ

最初は不安ではあったが、蓋を開けてみれば野菜大人気だった。

「鎌倉野菜が安価で買える」という情報がすぐさま町内会おばさまに伝わったらしく、午後になると奥様方が退去に押し寄せた。それでも、僕らは忙しさには動じなかった。淡々と掴みのトークを織り交ぜつつ、野菜は売っていった。

最後のお客さんが、鎌倉のナスを買って、全ての商品を売り切った。僕らは、大きな声で「ありがとうございました」と言って、僕らの文化祭は終わった。みんなで、ハイタッチをして、完売の瞬間を終わった。


テントは、次の日に片付けるという流れだったので、僕らは貴重品を持ってクラスに戻った。 進が、帰り際に僕に言った。

「楽しいかったな。そういえば、はじめに来た親子。小さい女の子可愛かったね」

 小さい女の子がお母さんに手を引かれてきてくれた。お母さんは、物珍しい文化祭での野菜を売っている光景をとても驚いていた。そして、鎌倉野菜など意外と物にこだわって売っていることを知るとさらに驚いた。女の子は、お母さんからはぐれないようにぎゅっと、その大きな手を握っている姿が印象的だった。

「可愛かったね。橋本もあれくらいの時は可愛かったのかな」

「余計な御世話ね。このあたりじゃ、天使の子っていって有名だったのよ」

「どのあたりだよ。この辺じゃないでしょ出身」

「フッ」

「でも、意外とあの子は、将来、南商業に入って、文化祭で野菜を売ってるかもね」

 橋本は、自らの話をそらすかのように、女の子の話に戻したつもりが、意外と周りの食いつきはよかった。進が、今は、野菜を売っていたかもしれないが、彼女が大きくなった10年後には、きっと野菜は無くなっていて、野菜エキスのどリングかもしれないとか、ビームサーベルを売っているとか、真面目な話のかふざけた話なのかよくわからない話をして、自体は迷宮へと進んでいったが。

 でも、本当にそう思う。この文化祭を経てこの高校を希望してくれる子が一人でも増えてくれたら嬉しいと思った。この文化祭もこういう子たちが入ってくれて進化していくのだ。彼女たちが入ってくるころには、この学校が宇宙的規模の学校になってくれるとありがたいな(それはない)。


 僕らは、教室に戻ると仕事があることに気がついた。僕と進と橋本は「え、簿記部じゃん」という理由で、他薦で経理担当になった。本日の売り上げを計算し、かかった費用から利益を算出して、配分額を決定する。生徒たちは出資はしてないから、マイナスになったとしてもそれは学校の負担となる。現実世界ではマイナスは、自らの負担になるが、今回は学校が負担してくれた。この負担は無茶が出来たので助かった。

 僕らは図書館にあつまって、計算を開始した。端的な結果をお伝えすれば、一人10円の利益でフィニッシュだった。やはり、野菜の単価が高かったことと、内装等のデザイン費用が高かったことが考えられる。本当に利益度外視で売ったことが原因だろう。でも、利益は出なかったが、それよりもこの文化祭で得たものは何かあったはずだ。

 すべての計算を終えて、僕は電卓の横にペンを置いて、図書館の天井を見上げながら背伸びをした。いつも気にならなかったが、天井には深いシミがあることに気がついた。天井のシミはどうやってつけるのだろうか。妖精でもいたら面白いなと思う僕であったのだった。

 






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