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文化祭2

 先生の話を聞く限り、物販には種類がいろいろあるようだった。王道的なもので言えば、学校の公式グッズの作成及び販売。斜め上を行くものだと、野菜の販売だ。

 先生曰く、昨年は意外と野菜の販売が好評で、それなりの収益が出たので、意外と野菜販売は穴場であると話していた。僕は、少しひねくれているため先生の発言には裏があると思った。たぶん、公式グッズの販売が昨年は集中して、結局じゃんけんで決めたのだろう。すべてのクラスが同じものを売ってはなんだか面白みに欠けるというものだ。

 今日は説明だけで、本決めについて来週のホームルームで決めるということだった。それまでに、クラスで話し合いの場を設けて決めてほしいとのことだった。設けるタイミングが見つからなかったら、先生が教える簿記の授業の終わり30分をくれると言ってくれた。クラスのみんなは特段の返事はしなかったが、心の中ではその30分で決めようと思っていたに違いなかった。


 僕は、ホームルーム終わりに、進と橋本のところへと向かった。

「何がいいかな」

 僕は、ストレートに聞いてみた。

「物販だから、必ず形あるモノを売るんだよね。サービスはダメだろう。だとしたら、仮に南商業公式グッズを選んだとしたら、僕としては今までにないものを売りたい。去年が、ストラップとかキーホルダー、タオルとかならもっと違うものを」

「たしか。それはわかるよ進くん。じゃあ、わたしたちだったら何が売れるんだろう」

「南商業公式簿記問題集」

 僕は、ボソッと言ってみた。

「え、それ本気で言ってんの?」

 進は、真面目に反応した。

「いや、全然。さすがに簿記をやりすぎて。簿記部ジョークです」

「だよね」

 僕らは、大きな声で笑っていた。

 教室で耳を澄ましてみるといろいろな箇所からいろいろなアイデアが聞こえてきた。僕らがデザインをしたスタイリッシュなTシャツを売ってみればいいんじゃないか。ロゴの入ったカバンを売ってみればいいんじゃないか。トランプとか面白いんじゃないか。写真集とか。ヤバイヤバイヤバイ。

 相変わらず、井上は「ヤバイヤバイ」と奇声を発していたが、やはりみんなグッズの方向で行きたいようだった。仮に公式グッズを作ったとして、他のクラスとかぶった場合、きっとじゃんけん又はくじ引きで決定するのであろう。そして、その敗者は野菜売りの憂き目にあうのだ(決して、野菜を売ることが嫌なのではなく、やりたいことができないという大人の事情の現実である)。リスクは承知だが、きっと公式グッズの作成から販売を行うプロセスは楽しいに違いないと皆思っていたのだ。

 

 そして、一週間が過ぎ、ホームルームを迎えた。

 実のところ、この一週間の間の簿記の授業でだいたいの物販物は決まっていた。クラスリーダーのガリ勉田中によってうまい具合に皆をまとまった。

「先生、僕らのクラスは、野菜を売ることに決定しました」

「よし、わかった。たぶん野菜を売るクラスは僕らのクラスだけだから、変更はない。みんな、野菜を売ることに尽力してくれ」

 僕らのクラスの物販物は野菜となった。どうして野菜になったのか。

 結局のところやはり話し合いの論点は他クラスとかぶった場合の話だった。そして、クラス全員が圧倒的に野菜反対派だった。しかし、その形成を反転させる言葉を発したのが橋本だった。

「公式グッズの作成から販売はたぶんとっても楽しいと思う。でも、被って野菜になるリスクがあるなら、最初から野菜を売ってしまえばいいんじゃない。たぶん、去年の野菜の販売はみんなイヤイヤやっていて楽しめなかったんじゃないかな。だったら、わたしたちは、前のめりに野菜を売ろうよ。それに、野菜だって売るのは楽しいよ。普通に、野菜を渡してお金を受け取る、そんな流れだけじゃないと思うんだ。最近は野菜にブランド価値とかついてたりするでしょ?きっと、この野菜を売ることによって、そういうブランドの感覚とか学べるんじゃないかな」

 橋本の表情は真剣そのものだった。僕もそうとうひねくれた性格ではあるが、橋本もまた結構ひねくれた性格であった。たぶん、みんなが「じゃんけんで負けたら……」「くじ引きでハズレを引いたら……」とネガティブなことをつぶやいていたことに嫌気がさしたのだろう。

「橋本のいうとおりかもしれないな。世の中にはブランディングという分野の仕事がある。炭酸飲料とかまさにブランディングによって売れていると言っても過言ではない。君たちのブランディング能力によって南商業ブランドの野菜を売れるんじゃないか。挑戦するのも楽しいと思うぞ」

 先生は、なんだかニヤニヤしながら話していた。簿記の教師のくせになんだか楽しそうだった。

 この時、クラスの雰囲気は完全に逆転していた。内容もさることながらみんな「ブランディング」という横文字にひかれたのだろう。マーケティング系の話は、2年や3年でがっつり学ぶ分野であった。先生は、簿記の教え方といい、年齢は関係ないかのごとく、どんどん先のことを教えようとする。それは、なんだか「君らには限界などない」と言いたそうであった。



 

 

 

 

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