側から見たらいい感じ、本人たちは特になし
僕は、朝の5時に目が覚めてしまった。
昨日は、予想以上に疲れていたらしく、9時頃にはすでに寝てしまった。本当は、みんなと一緒に枕投げをしたかったのだが、枕投げの体力は僕にはなかったのだった。
朝の6時半にまた、食堂集合(朝ごはんを並べる簡単なお仕事です)となっていた。僕は、顔を丁寧に洗って、洗いたてとは言い難い乾いたタオルで顔を拭いた。そして、浴衣のまま僕は、外を散歩することにした。
玄関を出ると、海の匂いがほんのり香りつつ、朝のにおいでいっぱいだった。やはり夏ど真ん中であるため、朝から暑く、セミの大合唱が僕を迎えた。
しばらく、ぷらぷらと歩いていると南京錠が無数についている場所に出た。僕は、目の前にあった南京錠に触れてみた。
「ともちんとたかの愛のカギっ」
黒い油性マジックで書かれていた。南京錠に黒いマジックで達筆な字でかかれているところを見ると、僕は違う何かを想像した。恋というよりも呪いの類かもしれない。カギのうしろに書いてある、小さな「つ」が、人が書いた文字じゃない感じに南京錠の下に伸びているように見えた。よく見ると南京錠の近くから小さい枝が出ているだけではあったが。
「あれ、なにやってんの」
朝焼けにかぶって最初誰が来ているのかよくわからなかったが、そこには橋本の姿があった。
「なになに、南京錠?」
どうやら、橋本もここへは初めて来たようだ。
「なんか趣味悪いね。君」
「って、僕かい」
「いや、簿記部に半年在籍しました。イチローさんは環境に慣れましたでしょうか」
アナウンサーきどりで、橋本は聞いてきた。
「そうですねぇ。だいぶ慣れてきてぇ、簿記1級なんて余裕ですわ」
意味不明な関西弁で答えてみると、橋本は笑っていた。
「それでは、今後の抱負をお聞かせください」
橋本は僕にマイクを向けるようなジャスチャーをしていた。
「そうですねぇ、簿記1級を取って、それなりの大学に行って、それなりのところに就職するのが目標ですわ」
「なにそれー。もっといい目標あるでしょうイチローくん」
「いやぁ、無いな。本当。だって、高校だって別に商業高校に入りたかったじゃなくて、食堂のある高校に行きたかっただけだし」
「え、そんな理由なの!?それは面白いね。変わってる子だとは思ってたけど」
「バカにしてるだろ?」
「半分半分」
僕は、口を膨らましてむぅっとした表情をすると、「冗談冗談」と言いながら僕の肩を叩いて橋本は笑っていた。
「でもさ、イチローくん。多分会計系の職業向いてるよ。なんか、変人だし。勉強ができるわけではないけど、なんか面白いから。案外、会計士とか税理士とかに結局なってそ」
「あら。お世辞も言えるようになったのね。良い教育を受けさせた甲斐があったでございます」
「ごきげんよぉ〜」
僕は、浴衣の袖にいれたスマホで時間を確認した。6時15分くらいであった。スマホを指差して「時間」と僕は言った。橋本は、頷き、帰らねばとつぶやいた。
朝は、納豆がいいなと思う僕であった。




