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合宿2

 江ノ島は、長い長い橋でつながっていて、その中に神社と展望台などがある島だ。島の中心に行くためには、急な階段を何段も登らねば着かない。島の中腹にはエスカーなる謎の屋内エスカレーター設備も設置されるほど、急な斜面が続く島である。

 僕らは、一週間分の荷物をキャリーケースに詰めて持ってきたが、階段の前では、効果は全くなかった。キャリーケースの重さが更に加わるという最悪の展開であった。先生はというと、随分と身軽な格好をしていた。麻でできたトートバックを一つ持っているだけだった。先生に話を聞けば「下着しか持ってきていない。それ以外の合宿の教材等々は、事前に送ってある」と冷静な顔で返事を返してきたが、だったら、僕らも……と言いたくなったのは言うまでもない。

 江ノ島の中心からちょっと過ぎた先に、お世話になる旅館があった。築年数が不明なほど古臭い建物ではあったが、江ノ島で宿泊できるという点があって、今でも老若男女問わず人気な旅館らしい。

 女将さんらしき女性が、旅館の前に水を撒いていた。

「おはようございます」

 先生は、その女将さんらしき人物に話しかけていた。

「おはよ……あら。光一くんじゃない」

「お久しぶりです」

 どうやら、先生とはお知り合いの方らしい。そういえば、先生の知り合いのご両親がやっているという話だったか。

「そうね……あれは、3年前くらいだっけ。たしか、お綺麗な女性と二人で泊まりに来てくれたわよね。ほんとベッピンさんで。その後どうなったの」

「あ、あの方は別れまして……というか、生徒の前なんでその話は、夜に晩酌でも飲みながら話しましょう」

 先生は、とても慌てていた。橋本が「先生も意外とウブなところがあるのね」とうなづいていた。いや、そういうことではないだろう。先生もプライベートの話はやはり恥ずかしいらしい。

「それもそうね。失礼失礼。あ、学生のみなさん。この旅館の静子でございます。みなさんにはちょっとお手伝いを頼めると聞いているので期待してるわね」

 女将さんは、両腕を曲げてガッツポーズをとって、期待していることを僕らにアピールしてきた。見た目は50代くらいだが、多分実年齢は60を超えているのだろう。若さの秘訣は、こんな気さくなガッツポーズなのかもしれない。


 僕らは、旅館の玄関で靴を脱いで、1階の奥の部屋に通された。赤茶の木の板で張り巡らされた床の上を歩くたびに、ギィギィと気持ちの良い音がなった。きっと、自撮りをしていた外国人たちもこの音を聞いたら、床に向かって自撮りをしたくなるに違いないと僕は思った。

「とりあえず、男女は別々の部屋にしてもらってある。丁度真反対な感じにな。変なことはしないだろう。そこは信じている。まぁ、男女の中に絶対はないけどな」

「綺麗な女性を落とす男性は、いうことは違いますね」

 橋本は、にこやかな顔で、先生に向かって言った。先生は大きな咳払いをして、さきほどの女将さんと話をうやむやにしようとしたのだった。

「それで、まぁ、今10時半過ぎで、時間が微妙なので、お昼食べてから合宿開始。それまでは、自由行動!くれぐれも遠くには行かないように。では!」

 そういって、先生は、どこかへと消えていったのだった。僕は、女子たちに何をするかを聞いた。

「桜ちゃんと猫でも探しに行こうかと」

「最近、江ノ島の猫は減少傾向にあるらしいですけど、私は見てみたいので」

「さっき、バスの中で話してたんだ。時間があったら見に行きたいねって。ということで行ってまいります」 

 そういうと、丁字に別れた廊下を橋本たちはで左進んでいった。僕らは右に進んでいった。


「僕らはどうしようか」

 部屋について、僕はみんなに聞いてみた。

「特にやることないよね」

 と進は言った。

「僕は、本でも読んでるよ。ほら、この部屋にある椅子と机。とても良い日当たりでゆっくり本を読むには適しているなって思ってさ」

 鮎川は嬉しそうに答えた。言われてみると、窓際の日当たりはとても良さそうだった。海風がとても気持ちよさそうな感じだ。

「じゃあ、俺は部屋で寝てるよ。なんか疲れた。江ノ島の階段はキツいよ」

「さんせー」

 結局、男性陣は誰一人として外に出ようとはせず、部屋でゆっくりすることに決めたのだった。

 

 そして、いよいよ僕らの合宿がお昼後から始まるのだった。


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