駆逐、簿記検定3級
月には流れ6月。
新緑の候なる5月も終わり、絶賛梅雨の季節。特に中学生の頃は四季とか気にはしていなかったし、「なんか雨が多いなー」くらいであった。
しかし、そこは高校生。高校生は大人である。僕もそろそろ「四季」の分かる男になってきた気がしていた。梅雨。ああ、雨がうざいよねと近くのクラスメイトに話しかけるものの、「何言ってるの」と言われてしまった。6月は確かに梅雨の季節ではあるものの、まだ梅雨入り宣言はまだであったからだ。梅雨入り宣言は気象庁の独断と偏見で行われる。梅雨明けも同じくである。なんとも大雑把な仕組みだ。
会計系の話でいけば、6月はわりとビックイベントがある。
そう。簿記検定である。このお話では「御多分に洩れず」という言葉を多用しているが、今回もまた使用するのである。御多分に洩れず我ら簿記部はこの検定試験に全員がエントリーしている。
簿記検定は、4級はマイナー試験であるが、一般的には3級から1級までがある。合格率的には、3級が35%くらい、2級が20%、1級が10%越えないくらいである。また、3級から2級は意外とするっといくものの、2級から1級の難易度が飛躍的にあがることで有名であり、一発一発で合格してきても1級は受からなかったりすることも多い。
そのため、2級と1級の間に準1級という区分があったらいいんじゃないかとよく言われるが、実際のところ創設するには至っていない。まぁ、検定級が増えればいいという話じゃないしね。
商業高校生の大半は、3級取れれば御の字。2級を取れると「おお、頭いいね」と言われ、大学入試や就職活動において他の追随を許さない武器となる(少し言い過ぎかもしれないが)。1級なんてものを取ると、地域新聞や全国紙の地域面にデカデカと名前が載ってしまうほど天才扱いを受ける。(筆者の友人は、高校時代に取得し、話題となっている。筆者が1級を取得するのは大学時代まで後になり、新聞に載るスターになれなかったのは言うまでもない。悲しいかな悲しいかな。しかし、大学時代に取ってもいいことはあるので、その点は後ほど記載する予定)1級取得者はその後、大学や専門学校を授業料免除で行ったりできるエリートくんとして扱われるのである。
と、このような感じで簿記検定は意外と武器になる。普通科目とか無理!と嘆いているそこの中学生。簿記検定にチャレンジしてみないか。生活がもしかしたら変わるかもしれないぜ。
それでは話を彼らの生活に戻そう。
僕は、簿記検定の勉強をしていた。基本的には家ではやらなかった。放課後部室で先生が作ってくれた問題プリントを黙々と潰していった。
先生曰く簿記検定合格にはコツがあると言っていた。
「仕訳は覚える。意味を理解して覚えるのがポイントだ。日常仕訳、決算整理仕訳。なぜこの仕訳をやっているのか。3級の頃は、丸暗記でも通用するが、2級、1級となると丸暗記では通用しない。ただただ落ち続けるだけだ。意味を理解しろ。これは、1級まで有効な手段だ。そして、最終的には仕訳は体で感じるように」
先生の言葉に熱が入っているのがわかった。最後の一言は相変わらずよくわからなかったが。
「簿記検定の基本は、過去問を解きづつけること。基本的に、問題文は変われど、言っている意味は毎回同じだ。簿記検定は、文章理解という能力は問われると俺は考える。だから、日頃から注意して問題文は読もう。問題文を読んで、多分気がつくはずだ。あれ、これ前に見たことがあると」
「そして最後に勉強の仕方。仕訳問題は過去の仕訳問題を毎日10題解く。わら半紙でもなんでもいいから、表に問題文、裏に回答のプリントを作って、眺めるだけでも良い。通学時間を無駄にするな。これを繰り返して、過去問3〜5回分禿いけば仕訳はバッチリだ。」
僕の家は、学校の裏である。歩きながらは危険だなと僕は思ったのだった。
「試算表作成問題の肝は、要は仕訳をまとめる作業であるということ。つまり、仕訳を間違えなければ基本間違わないということ。間違うとしたら、集約作業に間違いがあるということだ。ここで、仕訳の集約をいきなりT勘定をかいて集約することが良いと僕は言いたいところだが、最初の頃は仕訳を殴り書きで一回描いてからT勘定に集約することをお勧めする。そっちの方が、ミスは減るはずだ」
3級で一番重要なのは仕訳。先生はそう口すっぱく言っているのであった。
僕は、仕訳をひたすら解き続けた。先生が用意した計算用紙は基本的にはミスコピーの裏紙だった。たまに裏紙を眺めてみると、縮約ずれとか、コピー機のガラスに載せた時のA4の縦横のミスとかで、よく見たら自分たちのクラスに配る紙であった。先生は、よくミスコピーをするということを計算用紙から知ったのだった。(社会人になって思うのが、コピー機は意外と複雑であるということだ)