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プロローグ・または冬の物語(上)
むかしむかし、フリューリングという街に、
ひとりの青年がおりました。
フリューリングには、氷の女王様が持っている水晶の洞窟がありました。
街では水晶を採掘するかわりに、毎年きれいな水晶細工にして、
女王様に献上していました。
彼も鉱夫として鉱山に足を運んでいました。
あるとき、とてもきれいな娘と出会いました。
二人はたちまち、お互いが気に入りました。
青年は赤い水晶を細工して、娘に贈りました。
娘はとても喜びました。
ですが、彼女は氷の女王様の娘でした。
女王は二人の仲を許さず、
青年を氷漬けにして閉じ込めてしまいました。
何日も何日も嘆き悲しんだ氷の娘は、
その嘆きで街中を凍らせ、
ついには自分を凍らせてしまいました。
愛しい娘を失った女王様は、
ひっそりといなくなりました。
そしてフリューリングの街には、呪いだけが残ったのです。