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お祈りが終わると同時に自分の目の前に置かれた料理に手をつける。
料理は朝なのに、これでもかというほど豪華で、それに上手い。こんな上手い料理を俺は稼がず(息子と娘の働きによってこの家は成り立ってしまっている)食べているのかと思うと、何だろう胃が痛い。
そんな気持ちを紛らわすために、食卓を見てみると、俺を除いて10人が着席している。
「他の奴らはどうしたんだ?」
いつもなら、もう少し人がいてもいいはずである。そもそも、47人が暮らす屋敷の毎日の朝食など軽い宴会みたいになるのだが。
「他の兄弟たちは全員遠くのほうで泊まりがけの仕事ですよ。この時期は忙しくて...」
そう答えたのは、ブラウンのショートヘアをしたピースである。ピースはこの家の年長者でもあり、古くから俺と共にこの屋敷に住んでいる。こいつを拾ってからある程度たったら、いきなり父さんとか呼び始めて、俺がその呼び名に対してなぁなぁな態度をとっていたら、いつの間にかみんなが父さん父さんと呼ぶようのなった。ある意味、結婚もしておらず、彼女さえいない俺をお父さんに仕立て上げてしまった犯人である。
「そっか、仕事か。あんまり働きすぎて体壊さないようにしてほしいもんだ。お前たちもあんまり無理はしないように。」
働いてない俺が言うのも何だが。
はい、と大きな声が食卓に響く。本当にこういうある種の命令には必ずすぐに返事を返す。それは、奴隷のときから習慣なのだろう。それはやはり俺としては胸が痛い。
「ところで父さん、一つ報告させて頂いてもいいですか?」
そう訪ねてきたピースは、改まって俺のほうを向いて姿勢を正す。もう俺はお前の主ではないから、そんな改まんなくてもいいのに。(ピースもすでに自身を"買い戻し"ている)
あ、もしかして、ようやく出て行く気になったか!? お前がこの屋敷を出て自由に生きて行こうとすれば、他の奴らもどんどん屋敷を出て行こうと気が変わるかもしれない! アーネットも昨日の意見を変えるかも...
「父さん、結婚したい人がいます。ぜひ、会って頂きたいです。」
あ、違うのか。
「そうか、ふーん、結婚かぁ...、結婚なぁ...」
するりと、俺の持っていたフォークが食卓の上に落ちてカランコロンと音を鳴らす。
「けっこんんんんんんんん!?」