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ラークの名のもとに  作者: 由比ケ浜 在人
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突然だが、俺は転生者である。


とある有力な商人の息子に精神のみが転生した形となり、その商人が残した財産ともいえるこの屋敷で現在は過ごしている。転生したとき、この商人の息子もなかなか不遇な状態にあって、17歳の夏、商人親子とともに商談の帰り道、馬車が山道から転げ落ち、生きたのびたのはこの息子のみという状態。しかも、意識は戻らず。そこに俺が精神転生というわけだ。


この世界の知識と違う世界の知識が混同したり、現実の実感がわかなくて意識が朦朧としたりとあったが、今では問題なく転生したことを認識できている。



そして、散々べらべらと話してきたが転生したという事実は本題ではないのだ。


転生した理由。転生する際、おれは”ある契約”を結んだ。得体の知れないものとだ。その契約の証が右目にあるのだがそれはさておき、契約をしたのだ。あちら側の要求は、


1.指定した50人を現状から救うこと。

2.50人を冒険者として育てること。

3.最低限自立出来るまで面倒をみること。


要約すれば、こんな感じだったかと思う。指定された50人を探すための右目もこの契約のあとに埋め込まれた。


なぜ、このような要求をされたかはわからない。だが、俺はこの要求を叶えなければいけない。自分の要求を満たしてもらうためには。


あと5人。あと5人探し出さなければならない。ここまで来るのに8年かかっている。早いこと見つけ出さなければ、



「朝ですよ、父さん。そんな朝からブサイクな顔して起きてるだなんて、珍しいですね」

「アーネット。俺が難しいこと考えてる時や、何か決意に秘めた瞳をしている時は、たとえ表情がブサイクであってもそっとしておいてくれないか?」

「表情がブサイクの時は声をかけなくていいんですね。助かります、私としても声をかけたくないので」

「反抗期かな!?反抗期だよねアーネットちゃん!?」


娘を持つ父親はこの苦行を乗り越えねばならぬというのか...まぁ、俺とアーネットは親子関係ではないけど。アーネットが16歳で、俺一応25歳なんだけど。まだまだ若いんだけど。


「それではブサイクな父さん、朝食できてるので一緒にたべましょう」

「ブサイクって本当!?常時ブサイクなの俺って!?」


いや、確かに俺が今まで引き取った奴らは全員美男美女だった。その、アーネットにとって兄妹にあたる人たちが基準になっていたとすれば。おそらく、アーネットの中では俺はブサイクなのである。なんてこった。


「エミィとケントも一緒に連れてきてください」


そういってアーネットは、おれのベッドの上で寝ている10歳の双子に視線を送る。まだまだ、甘え足りない年頃なのだろう。くわえて、頼れる大人がいなかった二人にとっては。


「すぐ行くよ。二人を優しく起こしてからね」


そんな感じで俺こと、ラーク・ラッキーストライクの一日は始まりを告げる。



___________________________________________________________




この屋敷は広い。それはそうだ。なんてたって、47人が生活していても何不自由なく暮らせている。絵画などが飾ってある広い廊下もときには足腰に牙をむく。そんな広い屋敷を歩くというのは、なかなかに大変なことで、子供の場合はことさらであろう。


「「お父さんおんぶー」」

「もうちょい頑張ろうなー」


エミィとケントはそう言いながら、俺の両腕にぶら下がりはじめる。それでも俺が構わず進んでいると、次第に楽しくなってきたのか、きゃっきゃと遊俺の腕で遊びやがる。おまえらホントは元気だろう。



そんなコミュニケーションを取りながら、食堂につくと既に八人の男女が席についていた。そして、使用人であるアンナさんとエインスさんが脇にたっていた。


「おはようアンナさん、エインスさん。最近寒いっすね」

「あらあら、それならそろそろ暖炉の掃除と薪の用意をしなければいけませんね」

「この時期はお体も崩しやすくなります。若様も体調管理は万全になさってください」


うーん、やはり二人共よくできたお方だ。アンナさんは年老いてなお優しさが表情から溢れて止まらないし、エインスさんにいたっては俺の目標だ。あんな渋い感じのおじさまになりたい。


双子を両腕からひっぺがし、席につけさせる。そうして、おれも席に向かう。一番前の上座だ。食事は既に置かれているが、見る限り誰も手をつけてはいない。一応、俺が食べるまでは食事できないという作法になっているのだが、そんなことは構わず、先に食べていて欲しいものだ。食事を最初に食べるっていうのもなかなか勇気が必要なんだぞ。


まぁ、そんなことをいっていてはいつまでも食事が進まない。

俺は手を目の前で叩き、視線を集めると、食事の前のお祈りを口にした。


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