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3/5

火を使わない実験のをしたずなのに、何故か火事になった件



「今日の授業は実験を行う!」



 まずは生徒とのコミュニケーションを図ろうと思った俺は、学校から隔離された小屋で実験をしながら触れ合うことによって、親しくなろうという計画を企てた。



 生徒を実験室にまで連れて行き、用意してあった器具を前に揃え、お手本を見せる。



 もともと、学生時代の俺は科学については得意分野だった。ある程度の知識もあるし、扱い方だって十分、謝った教え方さえしなければ大した問題が起こるはずもない。



「それでな~、皆の手元にある器具は割れやすいから、十分注意して『パリーン』使うよう…っていってる傍から何割った?!」



 喋っている最中、響きのいいガラス音が聞こえたため、その音が聞こえた方に顔を向ける。



「シールドみたいなのをブレイクしてしまいました」

「シールドじゃない、ペトリ皿だ」



 どうやら生徒が手を滑らせて割ってしまったようだ。



 確かに滑りやすいが……言ってる傍から割るのはどうかと思うのだが…というか余所見して遊んで割ったのかこれ。コイツ人の話ちゃんと聞いてたのかね。



 と、割れて飛び散った破片を生徒が拾おうとするが、破片で手を怪我させてはいけないため、急いで塵取りを箒を取り出し片付ける。片付けを済ませた俺は元の場所に戻り、再び説明を始めることにした。



「…っとまあ今のように割れやすいから、使うときには落とさないよう『シュワワワワワ』気をつけ…って今度は何!?」



 何か割れる音ならまだしも、何故発火したような音が?!


 

 急いで音のした方に顔を向ける。そこには3人の生徒が、手には綺麗な光りを放つ、それはまるで閃光玉のようなものを持っていた。



柴木しばき私枝しえ香澄かすみ…お前ら何やってるの!?」

「何って、見てわからないんですか?花火ですけど」

「何故今この場で花火をしようと思った?!」

「実験ですよ実験」



 3人はじーっと閃光を見つめ、先に柴木の寿命の尽きた閃光が床に落ちる、それに柴木は「あ~」とガッカリした顔で残りの二人を見た。



「…柴木がビリッケツね」

「柴木は勝負に弱いな~」



 私枝と香澄は柴木に向かいそういうと、自分の閃光にへと視線を戻す。どうやら誰が一番長持ちするか競いあっているようだ。



 3人についての資料に目を通す。

 

 

 柴木菜名瀬しばきななせ

 

 ・テンションが高く、一度遊びだすと止まらない性格

 ・綺麗もの好き

 ・運動が得意だが、勉強は苦手

 ・勝負好き

 ・私枝、香澄と仲が良く、3人の中で一番活発



 私枝桜しえさくら


 ・内気な性格で、言葉数が少ない

 ・頭は良いが運動は苦手

 ・たまに理解不能な行動をする

 ・常に落ち着いており、取り乱だすことがない

 ・柴木、香澄と仲が良く、3人の中で一番大人しい



 香澄枯葉かすみかれは

 

 ・いつも笑っている

 ・運動、勉強共に平均値を上回っている

 ・面白いと思ったことは、何でも試す

 ・柴木、私枝と仲が良く、3人の中で一番明るい



 3人の資料を見る限り、3人は常に一緒に行動しているようだ



 活発な柴木が私枝と香澄を誘導し、香澄は面白がって遊び、私枝はその3人に付いている感じなのだろうか?



 ……ふむ。


 

 ザッと目を通し終え、資料から目を離し再び3人の方を見る。


 

「で、これの何処が実験…?」



 するとそれに柴木が指を振り、「チッチッチ」といった。



「だから、私達3人の中で、誰が一番閃光玉を長持ちさせられるかという実験ですよ」

「…あ」

「あはは、また私の勝ちだね~!」



 私枝の閃光の寿命が先につき地面にポトリと落ちた、それを見た香澄が勝ち誇った顔で3本の指を立てる。



 3連勝ということなのだろうか。



「あははは~」



 いや分かったから。そんなに指を強調してこなくても分かったから。



「…それで…言いたいことは山々あるが…花火をするくらいならせめてバケツくらいは用意しとけ!」

「バケツが見当たらなかったので」

「じゃあやるな!…て、ちょっと待てお前等、その手に束で持っている花火を一体どうするつもりだ?」

「花火といったらやっぱりパーッとやりたいじゃないですか!」



 柴木がそういうと、柴木、私枝、香澄はそれぞれ花火を持ち始める。3人は手に持てるだけ持つと、私枝がライターで一気に花火を点火させる。



「…点火」

「いやその気持ちはわからないでもないがここではやるなああああああああ!」



 しかしその叫びは空しく、取り上げる前に火がつけられ、花火は勢いよく光りだした。



 _ッシュババババババババババババババ!!



「あははははははははははははは!どうだい先生、真昼間だけど以外に綺麗に光るもんだろ!」



 3人の手元に持つ大量の花火が、勢いよく火柱を上げ綺麗な光りを放つ。



 確かに綺麗ではあるが、今の俺にはその綺麗な光りが悪夢に見えてしょうがない。



「綺麗なのは分かったから今すぐその火を消せぇ!!」

「水道がないのにどーやってさあ?」



 ごもっともな意見。確かにそうだ。この小屋には蛇口がない。  



「じゃあ今すぐ外に放り投げて…ああ?!火が小屋に燃え移っちまった!」



 急いで燃え移った火を消そうと服を脱ぎばさばさと仰ぐ、が、その間にも3人の手に持つ花火があちこちに火を燃え上がらせ、どんどんと火は勢いを増し、もう取り返しの付かないことになっている。



「…だ、駄目だ、皆!急いで小屋から出るんだ!」



 火を消すことを諦め、即座に危険が及ばないよう生徒を外に避難させる。一旦小屋に戻り、まだ取り残されている生徒がいないか確認しに戻る。



「…はあ…はあ…これで全員か…?」



 小屋の中をぐるりと見回す


 

 すると中にはまだ3人の生徒が取り残されていた。取り残された生徒は楽しそうに花火ではしゃいで遊んでいる。 



「おー、すげーすげー!」

「…面白い」

「あははははははは!!」



 一人は燃え上がる火を見て驚き、一人はクスリと笑みを浮かべ一人は高笑いをする取り残された生徒の姿が。 



 というか、小屋を放火した張本人達である。


 

「お前らも早く出ろやあああああああああ!!!」


 





 全ての生徒を無事小屋から外に帰還させた俺は、燃え上がる小屋を遠い目でじっと見つめていた。すると、一人の男子生徒が俺に近寄る姿があった。



「…なあ先生」

「……なんだ?」



 一人の男子生徒が俺の傍に近寄よると、燃え上がる小屋を見つめて聞いてくる。それに俺は同じく、燃え上がっている小屋を見つめたまま生返事をした。



「今日の実験って…顕微鏡で植物の細胞を観察するだけの実験だったよな…」

「ああ…」

「火なんて使う実験じゃなかったよな…?」

「ああ…」

「……教師って…大変なんだな…」

「………ああ」



 この日、全ての生徒とコミュニケーションを取れなかったものの、一人の男子生徒、高田悟こうださとしと仲良くなることが出来た。





 ~問題児資料~


 柴木、私枝、香澄

 

 ・問題児

 ・放火魔

 

 上記を追加

 


 高田悟こうださとし


 ・明るくて気前が良い

 ・正義感が強い

 ・後先を考えずに突っ走る


 

 ~柴木へのコメント~



 活発で元気がいいのは大変良いことですが、常識というものをまずは考えましょう。

 あと、花火をするなら火を消せるよう、バケツに水を入れた状態を用意してから行うようにしましょう。



 ~私枝へのコメント~

 

 

 友達は良く見てから選びましょう。



 ~香澄へのコメント~

 

 

 笑ってばかりで先生には何を考えているのかさっぱりです。




 ~高田へのコメント~

 

 これからよろしくお願いします。



 

 ~木下の返答~

 

 他人から頼まれたら断るということを知りましょう。

 また、明確な目的が無いからと自分の趣味で突っ走らないでください。

 誰かにどうすればいいか聞くことは大切です。


『わかりました、では先生、どうすればいいですか?』


 少しは考えてください。



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