教師になった俺に任された生徒等は、問題児の集まるクラスだったんですが
それは仕事の行き場を失った俺がこの学校の面接を受けた当日の事だった。
シワの無いスーツを着こなし、顔を引き締めて入室した瞬間から俺の物語は始まった。
スーハースーハー。
今度こそ…受かって見せる…ッ!
気合を込めていざ面接。
「…失礼します!」
「いいね君、品があって元気も良い!」
え、扉を開けた瞬間に聞こえた気がするんだけど。
「あの…まだ何も言ってないんですが…」
「僕には分かる…途轍もないオーラを感じるよ!」
え、オーラ? 何言ってるんだろうこの人。
「オ、オーラ…ですか」
「そうだ、君程の逸材…一目を見れば分かる…ッ!」
「は、はあ…」
肩を掴んで迫って来る、凄い気迫だ。
え、ナニコレ新手の圧迫試験?
「合格…合格だ!」
「っはぃ!?」
入っただけで合格するなんて…。な、何にしてもツイてるぞ…ッ!
「それじゃあ校長先生にも挨拶をしないとね」
「あ、は、はい」
ものの数分で挨拶をしにいく羽目になるとは。ううぬ、ここで印象を悪くしてやっぱり無しなんて事にならないようにしないと。
頑張れ俺、最初が肝心だぞ…。
「失礼します!」
「えーと…君は?」
「きょ、今日からこの学校の教師を務めさせて頂く壱夜御和葉といいます!」
「…君のような素晴らしい人材がいたとは…世界は広いようだ」
ま、た、か。
さっきから凄い褒められようだけど何だこれ。
「…その、恐縮ですがそこまで褒められるような事は何も」
「君のような素晴しい教師を初めて見て、私は感動した」
教師って、今さっき合格したばっかなんだけど。
「…本当に素晴らしい。君になら全ての責任を全面的に任せたいと思う!」
え、ちょ、いきなりハードル高すぎませんかね。
「…え、えっと…色々と急であれ何ですが…取りあえず一つお尋ねしても宜しいでしょうか?」
「…ふむ、何だね?」
「なんで入ってばかりの、それも新人の俺なんかにそこまで?」
「…ッフ…君ならやれる…そう信じているからだよ」
まさか初対面の相手にここまで物凄いくらい信頼されるなんて思いもしていなかった。
「ところで…この後、君は何か予定はあるかね?」
「え、い、いえ…」
「なら丁度いい。早速だが君の担当となる教室に向かってくれたまえ」
「え、い、今からですか?」
「ああ、これから何をするのか速めにしっておいても損はないだろう?」
「は、はあ…」
などなど、なんやかんやで今日から担当となる教室の前についた。
少し納得はいかないが、折角手に付いた職だ、ミスミス手放すつもりもない。
最初が肝心だ。生徒達に舐められないようにしないと。
教室のドアを勢いよく開け放ち、元気のいい笑顔を振りまいて大きな声を教室に響き渡らせる。
「皆! おはよーう!」
そして、初めに目にしたその光景に目を疑った。
・新入早々欠席している者
・煙草を吹かしている者
・集団で壁に落書きをしている者
・机に突っ伏して寝ている者
・一人でぶつぶつと何かを呟いている者
・走り回っている者
などなど。
その教室は、それはもう見事なまでに荒みきっていた。
「…あ……あれ?」
その場に居る生徒が俺を一目見据えると、何事もなかったかのように個々の作業に戻りだしす。
「は、嵌められた…ッ!!」
つまりは、俺に厄介ごとを押し付けたと、そういう事らしい。