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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
五章 闇夜の蓮と弓使い
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五章 [21]

飛露(とびつゆ)水蓮(すいれん)ちゃんの捜索は任せたからね。ちゃんと見つけられるみたいでよかった」


「だが、すぐに見つかりそうな感じじゃないな」


「そっか……。でも見つかるならいいや」


 嬉しそうにほほえむ志閃(しせん)妖舜(ようしゅん)は再度彼に目を戻した。


「志閃の未来は――」


 そう目を細める。


「なかなか波乱万丈だ」


「死なない?」


「死なない保証はない」


 妖舜も仙術使いだ。志閃ほど素直ではないが、占い結果に関しては、決して嘘をつくことがない。


「マジか……」


 志閃の顔から少し血の気が引いた。


「お前の未来は複雑だ。今の戦におけるいろいろな重要人物と関わってくる。その一つ一つでお前がどういう選択をするか。それで未来が全てかわっていく……。しかも、お前の周りは、お前はじめ大きな気が取り巻き過ぎて、かなり見にくい」


「じゃあ、俺はどうすればいいのよ?」


 志閃の問いに、妖舜は身を乗り出してさらに真剣に志閃を見はじめる。志閃も答えを求めるように彼の顔を見返した。


「本当に信頼できる人とそうでない人の見極めをする必要があるようだ」


「本当に信頼できる人……。飛露、泉蝶(せんちょう)ちゃん、赤覇(せきは)王紀(おうき)宗剛(そうごう)、妖舜、秋夕(しゅうゆう)ちゃん――」


「そのあたりで止めておくべきだな」


 禁軍将軍と前線に派遣している自分の副官、目の前の占い師、仙術治療師の名前を挙げたところで妖舜が止めた。


「……少なくね?」


(こう)に情報を漏らしていた周賢(しゅうけん)は自分の部下だろう? たぶん、意外と身近に間者がいるぞ。本当に信頼できる人、背中から刺されても許せる人しか信頼しないべきだ」


「水蓮ちゃんは、『長期間のあやつり』って言ってたっけ?」


 志閃は顎に手を当てて記憶をたどった。


「俺はそこまでは把握してない。気の流れから、人の動きはつかめるが、会話までは聞こえない」


「だが――」と、妖舜は再び首をめぐらせた。彼が向いたのは、禁軍の本部棟の方向だ。


「あやつりと言うことなら、ここ一年くらい感じていた嫌な気はその『あやつり』に関係するものだったのかもな……」


 きっと本部棟の医務室で寝かされている周賢を見ているのだろう。


「なにそれ?」


 志閃は首を傾げた。


「ここ一年、嫌な気を感じることが多い。かなり薄いもので、初めは勘違いかと思っていたが、あまりに感じる頻度が多いから、実際にごく薄い嫌な気があちこちにあるらしい。その存在の仕方も、人にこもっていたり、物にこもっていたり、そのあたりを漂っていたり――。薄すぎて出所はわからないけどな。俺のほかにその嫌な気を感じてる人もいないみたいだし」


 気の様子から未来を知ることができる妖舜の気の感度は禁軍一だ。


「その嫌な気って、俺が術で気の感度を上げたらわかる?」


「わかるかもしれないが、気の出所を探るのは難しいと思うぞ。それに、きっと志閃にはそんなことをしている余裕はない」


「なにそれ? 俺のどんな未来が見えてるわけ?」


「未来を知らない方が、状況が良くなることもある」


 志閃の問いに妖舜は首を横に振ってみせた。

 知っている未来を回避しようとして、想定外の事故やさらに悪い未来を呼び寄せてしまうことがある。妖舜は志閃に彼に起こりうる未来を伝えることで、逆に悪いことが起こる可能性が高まると判断したらしい。

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